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不思議な露天商  作者: 樋口 涼
人の形

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32/91

人と人間と獣

男は幼い頃から1人だった。

いや、両親も兄弟も居たし、幼少期は普通の家庭に普通の教育を受け、普通に生活をしてきた。


しかし、いつからか、一緒に居た友達もいなくなり、新しい学年になっても…新しい学校になっても、二か月後には独りになっていた。

半年になる頃には、声をかける事も出来ず、かけられる事も無い。

むしろ、関わらない様に避けられた。


「どうして…なんで」


当の本人は何故だが分からない。

分からないが自分は嫌われている。

小学校の時は、トイレに入ると叫んで逃げられた。

皆笑顔だった。


ノートや教科書が隠されたり、破られたりはしなかった。

それはそれできつかった。

いじめだと主張したくても、証拠が無い。

やられた事が証明できない事は、逆に大人に「虚言」と受けられる。


テレビで流れた「特別な子は虐められ易い」と言う言葉が、救いだった。

自分は特別だから、虐められて避けられる。

指を差して笑われ…るのだ。


中学校に上がり、知っている顔と知らない顔が半々になる。

知っている顔には畏縮し、知らない顔には横暴になって行った。

自分より小さい背の男子や、弱そうな女子を見つけては、体当たりや暴力を振るうフリをしては、不甲斐ない日頃の溜飲を下げていた。


ある日、いつも通り女子に体当たりをした。

当たり所が悪かったのか、女生徒は倒れたまま動かなくなった。


「大げさな」


そう言い、男は女生徒の腕を掴んだ。

が、男の前に女生徒と同じくらいの背の男子生徒が立ちはだかった。


「いい加減にしろ!」


見た事のない顔で、そいつは怒鳴った。

いつもは大人しく、自分より小さいのに…男はその男子生徒に怯んだ。

誰かが教師を呼びに行く足音が聞こえた。

人も集まってくる…小学校の時の自分を知る顔も…。


「アイツ虐められてた奴じゃん」


誰かがぼそっと言った。


「え、中学デビュー?」


くすくすと女子が笑う。

男は殴りたかった。

小さい男子や女子を殴るように、そいつも。


「やって見ろや」


1人が前に出て来た。

中学生にしては体の発達した、背の高い男子生徒だった。


男は自分の足が後退っているのに気付く…が、前に出られない。


「理性ってもんが無いんか?」

「やばくね?」

「バケモンじゃん」


口々に野次馬が男に向かって言い放つ。


「バケモン?そんなカッコよくもねーよ」


嘲笑が起こった。


「獣だ。獣」


誰かの声が響いた。


「けーもの!獣!」

「くせえんだよ!」

「側にくんな」

「学校に来るな」


口々に上がる…。


「ちっくしょう…俺を虐めやがって…」


男は学校を飛び出した。

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