人と人間と獣
男は幼い頃から1人だった。
いや、両親も兄弟も居たし、幼少期は普通の家庭に普通の教育を受け、普通に生活をしてきた。
しかし、いつからか、一緒に居た友達もいなくなり、新しい学年になっても…新しい学校になっても、二か月後には独りになっていた。
半年になる頃には、声をかける事も出来ず、かけられる事も無い。
むしろ、関わらない様に避けられた。
「どうして…なんで」
当の本人は何故だが分からない。
分からないが自分は嫌われている。
小学校の時は、トイレに入ると叫んで逃げられた。
皆笑顔だった。
ノートや教科書が隠されたり、破られたりはしなかった。
それはそれできつかった。
いじめだと主張したくても、証拠が無い。
やられた事が証明できない事は、逆に大人に「虚言」と受けられる。
テレビで流れた「特別な子は虐められ易い」と言う言葉が、救いだった。
自分は特別だから、虐められて避けられる。
指を差して笑われ…るのだ。
中学校に上がり、知っている顔と知らない顔が半々になる。
知っている顔には畏縮し、知らない顔には横暴になって行った。
自分より小さい背の男子や、弱そうな女子を見つけては、体当たりや暴力を振るうフリをしては、不甲斐ない日頃の溜飲を下げていた。
ある日、いつも通り女子に体当たりをした。
当たり所が悪かったのか、女生徒は倒れたまま動かなくなった。
「大げさな」
そう言い、男は女生徒の腕を掴んだ。
が、男の前に女生徒と同じくらいの背の男子生徒が立ちはだかった。
「いい加減にしろ!」
見た事のない顔で、そいつは怒鳴った。
いつもは大人しく、自分より小さいのに…男はその男子生徒に怯んだ。
誰かが教師を呼びに行く足音が聞こえた。
人も集まってくる…小学校の時の自分を知る顔も…。
「アイツ虐められてた奴じゃん」
誰かがぼそっと言った。
「え、中学デビュー?」
くすくすと女子が笑う。
男は殴りたかった。
小さい男子や女子を殴るように、そいつも。
「やって見ろや」
1人が前に出て来た。
中学生にしては体の発達した、背の高い男子生徒だった。
男は自分の足が後退っているのに気付く…が、前に出られない。
「理性ってもんが無いんか?」
「やばくね?」
「バケモンじゃん」
口々に野次馬が男に向かって言い放つ。
「バケモン?そんなカッコよくもねーよ」
嘲笑が起こった。
「獣だ。獣」
誰かの声が響いた。
「けーもの!獣!」
「くせえんだよ!」
「側にくんな」
「学校に来るな」
口々に上がる…。
「ちっくしょう…俺を虐めやがって…」
男は学校を飛び出した。




