迷い込んだ街
色とりどりの宝石が散りばめられ、キラキラと黄金に近い色をしたアーチの下に、彼女は気が付けば立って居た。
目が眩むようなそのアーチの先には、青と紫の空が美しく広がっており、その空を露店のランプや蝋燭が照らしていた。
「ここは…どこなんだろ」
彼女は自分がどうしてここに居るのか分からなかった。
自分は部屋に居て、愛猫のベッドを抱きしめていたはずだった。
川の両側に露店が並んでいるのをみて、昔親に連れて行ってもらった縁日を思い出した。
「夢でも見てるのかな」
いつの間にか靴も履いているし、服もお気に入りだった紺のワンピースを着ている。
彼女はアーチの下から一歩踏み出した。
そこは色とりどりにランプが光る眩い程の街で、タイル張りの道に靴がこつんと小気味良い音を奏でた。
目に映る店中が、見た事のない物で溢れかえり、店主と客が物と物、会話を交わしていた。
賑やかなのに煩くない、不思議な感覚を彼女は憶えた。
人見知りで大人数の人間の集まりが苦手な彼女は、スーパーに買い物に行くのも嫌いで、出来るなら何もかもをネットで済ませたいくらいの性格だった。
そんな彼女がストレスを微塵も感じない。
むしろワクワクし始めていた。
「こんな所があったなんて…」
久しぶりに目に映す街や空で、クルクルと踊っている様な気持ちになる。
軽やかな足取りで、街を歩く。
ぶつかる人や大きな声を出している人もいない…驚く事も一切ない。
美しい街だった。
ふと、彼女は一軒の露店に目が行った。
良い匂いの店も、綺麗な色のランプも、おかしな形のオブジェや人形よりもその店に釘付けになる。
クルクル、ふわふわ。
何かに操られる様にその店の前に立った。
「…いらっしゃい」
ぶっきらぼうな店主に声を掛けられる。
店主は目深くフードをかぶっており、顔は良く見えなかった。
店先に並んだピアスやイヤリング。
ブレスレットにネックレス。
オレンジ色のランプに煌々と照らされ、何もかもが欲しくなる。
「手に取っても良いですか?」
彼女は店主に許可を得て、商品達を見ようとしたが、ふと一番真ん中にある、青い雫の形をした石が付いたネックレスが、一際美しく光っているのを見つけた。
「これ…」
雫型の石に触れると、ポロポロと涙が零れてきた。
気管がきゅっとなる様な、悲しく苦しい。
息が出来ない感覚が、彼女を襲う。
「…お待ちしていました。真奈美様」
店主が彼女の腕を取り、手の平にネックレスを置いた。
「クロ様からの…お品物をお渡しいたします」




