照らされる街
色とりどりの宝石が散りばめられ、キラキラと黄金に近い色をしたアーチの下に、気が付けば立って居た。
目が眩むようなそのアーチの先には、青と紫の空が美しく広がっており、その空を露店のランプや蝋燭が照らしていた。
「ここは…まるで…」
源蔵は頭に浮かぶ場所の名を、急いでかき消した。
「そんなはずはない」
頭を振る。
が、周りの美しく輝く街並みに、見覚えも無い。
源蔵は自分の居た場所には似ても似つかぬこの場所を、言い表すには「それ」しかないと思う。
「お父さん」
隣から妻の声がした。
「敏江…」
源蔵は隣に誰かが居ると思ってはいなかった。
「敏江…どうしてここに?」
「気が付いたら居ましたよ…」
白髪がランプの光で所々金色に輝く妻を、まじまじと見る。
「若返るだのなんだの聞いていたのになぁ…」
目の前の敏江は老婆で、妻より5つ年上の自分は爺のままだな…と、ぼそっと呟いた。
「何かおっしゃりましたか?」
「いや。…しかしここはどこだろうな」
「あの世、かも知れません」
自己が避けた言葉を、妻に軽く言われ源蔵は頭を掻いた。
「そうかもしれん」
「ここまで綺麗な所は知りませんものね…」
敏江が感慨深く街を見渡し、凄く眩しそうに目を細めた。
「あぁ…でも…あの日の…」
「誰も居らんのか」
源蔵の言葉に、敏江は言いかけた言葉を飲んだ。
「そうですねぇ…」
「綺麗だが、誰も居ないとなると…困るじゃないか」
源蔵の言葉の端々に、怒気が生じ始める。
アーチの下から一歩、また一歩と妻を置いて進む源蔵に、彼女は慌てる様子もなくその三歩後ろを進んだ。
タイルの床が、自分達を映すくらいに磨かれているのを見ながら、付かず離れずそっと歩く。
黄金の飾りに、モザイク柄のランプ。
見た事のない花に、大きな鳥の置物。
鮮やかに煌めく物達が並ぶのに…誰も居ない。
露天商の店主や客すらも。
「不用心だな。誰かが盗ってしまったらどうする」
苛ついた口調で源蔵がぼやく。
「大丈夫ですよ。代価が無ければそれらは持てません」
2人は声のする方を向いた。
たった一つ、店主が居る露店。
そして、見た。
立派な大根が置かれたその台を。
「お待ちしておりました。源蔵様」




