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不思議な露天商  作者: 樋口 涼
ピンクの象

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16/91

語られ出した多様性

『誰が何を好きでも良いんです』


ある日テレビを見ていると、コメンテーターの1人が言った。

画面には多様性の在処と大きく字幕がかかり、幾人もの男女が映っている。


『男でも女でも。カッコいい物が好きでも可愛い物が好きでも…』


「何を…」今更…と圭太は思う。

普通から逸脱した事をする者を嘲り笑って来た癖に、何を思ったか最近よく耳にする…「多様性」と。

人と違っても認めよう。事実と違ってもアートだと。

コメンテーターの手には幼児が描いた様な「ピンクの象」の絵があった。


ピンクの象を笑い、おかしいと糾弾してきた筈の世間に、それを認めようという動きが起こり活発化した事で、親もその流れを汲んで、弟のランドセルは透き通る様なエメラルドブルーだった。

使われた年数分以上に、汚れが一際目立つ。

嫌になった弟は今、新しいリュック型のランドセルを強請っている。


中学の制服は黒い。

もしかしたら弟が入る時には、女子もズボンになっているかも知れない。

そして、女子のブラウスが隠れ黒い集団が更に黒くなる。

夏は白と黒の列がキッチリと並ぶ事だろう。


「馬鹿々々しい」


テレビを消す。

どうせ見た目の色や何かを変えた所で、決められた列から外れる者は認めない。

圭太はそんな世の中だと思う。


「いずれは女子が男で、男子が女になるのかもな」


そう、毒づく。

入学当時、小学校の頃の絵が表彰された事を持ち出され、美術部に勧誘もされたが、授業以外で描くつもりは更々なかった。

絵は女が描くものだ。


なので圭太はバスケ部に入り、運動をするにつれて背も伸びた。

他人の目に恐怖を感じる様になってしまった圭太は、人が居ない体育館での練習では普通に出来る。

が、体育館が使えない日の練習が悉く失敗すると、試合には出られなかった。


「お前は室内練習は良いんだが…」


顧問に言われたが、たかが中学校の部活だと圭太は思い、試合に出られない云々はどうでも良かった。

数は少ないが友人が出来、馬鹿な事を言ってるのだけが楽しい。


勉強もそこそこして置けば逸れる事は無い。

馬鹿は下に見られ、成績が良すぎてもハブられる。


女子にモテても恨まれるから、ただ背が高いだけでモテてもリスクがデカすぎて、メリットは少ない。

いつの間にか圭太は背を丸めた、姿勢の悪い普通の男子になっていた。

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