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不思議な露天商  作者: 樋口 涼
ピンクの象

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12/91

美しい街

色とりどりの宝石が散りばめられ、キラキラと黄金に近い色をしたアーチの下に、彼は気が付けば立って居た。

目が眩むようなそのアーチの先には、青と紫の空が美しく広がっており、その空を露店のランプや蝋燭が照らしていた。


「お伽噺に出て来た砂漠の街みたいだ…」


彼は懐かしむ様に周りを見渡す。

明るい色のランプに照らされて、店主も客人も皆楽しそうに見える。


「僕もその内の1人に、他からしたら見えるのだろうか…」


しかし、皆、彼に見向きはしない。

自分達のやり取りだけが大切で、店主は売りモノを売り、客人は望むモノを買う。

他人がどう見えるか、他人からどう見えるかなどは無意味だった。


露天商の並ぶ街中は、賑わっている様だが、煩くはない。

顔も照らされているが、皆ハッキリと見えず、外見の美醜も何もが意味のない事の様に思えた。


「ここなら…僕も苦しくないんだろうか…」


彼はスニーカーの足元でランプに照らされて光るタイルが、磨かれていて美しいと思った。

模様が…昔、幼稚園か何かで行った動物園のタイルみたいだと感じたが、ここまで綺麗では無かったなと思い直す。

あの時から動物園は嫌いだった。


アーチの下から一歩出ると、そこかしこから良い匂いがした。

動物園を思い出し、あの匂いを思い出していた彼にとって、脳裏の匂いを打ち消してくれる香ばしく美味そうな匂いは救いだった。

「昔のトラウマをかき消してくれる…」そう感じた後、自分がワクワクしている事に気が付いた。

いつもの…新しい所に行く時の不安…ではなくワクワクとした気持ち。


「楽しい…」


彼は並ぶ露店を眺めて歩いた。

花に詳しい訳では無い彼でも、見た事が無いと言い切れる花達に囲まれた店や、所狭しと吊られたアクセサリーが揺れ、チカチカと光を反射させている。


「あぁ。こんなに気分が良いのはいつぶりだろう」


顔を上げて、空を見る。

雲一つない空が、青と紫のグラデーションのまま、時が止まっているかの様。


「空を見たのも…」


川に映るランプの光も、浮かぶ船も、美しい…。

ふと、足を止めた露店の前。

心がざわついた。

目の前に…キリンやウサギ、ライオンの模型や人形が置かれた店。

その真ん中に…ピンクの象が置かれていた。


「…いらっしゃいませ」


ぶっきらぼうな声がした。


「お待ちしておりました。圭太様」


彼は後退りたかったが、足が動かなかった。


「…愛良様からのお品物をお渡しいたします」

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