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不思議な露天商  作者: 樋口 涼
ピンクの象

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小さな女の子

露天商の店主が、自分の店に腰を落ち着けようとした時、目の前に何かが居る事に気が付いた。

ピンク色の広がった傘。

さっきまで雨の中を歩いた様に、先から雫が滴っていた。


傘の下を覗き込むと、小さな女の子だった。

その後ろの、店の前を流れる川の上で、船頭が船を着けていた。

黒いフードの下で、口がにやけているのが感覚で分かった。

カロンはため息を付いた。


「…どうぞ」


やる気のない、いつもの声で女の子に声をかけ、台の前に来るように誘う。

女の子は一歩前に進み、手を前に突き出した。

そして、小さな手に握りしめられたモノがコトリと音を立てて、台の上に置かれた。

女の子の傘と同じピンク色をしている、象の人形…。

布製ではないから『フィギュア』と言う奴か?と手に取り眺める。

「渡す相手」が見えた。


「これを渡せば良いのだな?」


カロンの言葉に女の子が頷いた。


「分かった。必ず渡そう」


女の子は小走りに船頭の元へ行くと、その船に乗った。

勢いよく乗ったおかげで、船体が揺れ水が跳ねた。

慌てる船頭に露天商の店主達が手を振る。

カロンも一緒に手を振ると、船頭はゆっくりと船を漕ぎだした。

ぽちょんぽちょんと水が跳ねる様に水面に波紋を広げ、露店に並ぶランプが揺れる水面を照らし、キラキラと反射する。


船の端が見えなくなる頃、また露店は賑わいを取り戻し、そこかしこで取引が始まる。

遠くの店のガラス管に代価が落ちるのを眺めながら、カロンは白い布でピンクの象のフィギュアを磨く。

女の子が置いた時よりも、ますます美しく輝く様な眩しいピンクになった象のフィギュアを、台の真ん中に置いた。


「さて、もうそろそろ来るだろう」


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