本当の願いを叶える時
目が覚めると真奈美はいつもの自分の家に居た。
横には誠が一緒になって床で寝ている。
クロのベッドを抱きしめる真奈美の手に、重なった誠の掌が暖かかった。
彼の手を握り返し、誠の頬に残る涙の跡に触れた。
「そうか…この人も…クロを愛してくれていたのね」
涙が零れて床を濡らした。
繋がれた手に気が付いたのか、誠が目を開ける。
「おはよう…誠さん」
真奈美は初めて誠の名を呼んだ気がした。
「大丈夫?」
起き上がりながら誠がそう真奈美を気遣う。
「この人の…誠さんを信じよう」と、真奈美は思えた。
「あのね…やりたい事があるの」
「ん?何?僕にも協力できるかな?」
その後、真奈美は本当に叶えたい願いを叶える為、誠に協力を願った。
誠は笑顔でそれを受け入れ、まずは二人の親から独立する事にした。
絶縁をしても今の法律では義務は放棄できない。
いずれは働けなくなる親に将来の話をし、交渉した末の口出しをしないと言う「自立した権利」をようやく獲得し、誠は会社を経営しながら、真奈美の保護活動に協力した。
真奈美の本当の願いは自立だったが、それに伴いクロとの経験を活かし、少しでも野良猫を減らす事、猫エイズが蔓延しない事を目指し日々走り回っている。
誠も真奈美も、いずれは川を渡るだろう。
クロは渡った先の、虹の袂で2人を待って居る。
自分の首輪にもう一度、雫型のネックレスが掛けられる時を、丸くなりながら。
そして、露天商の店主、カロンは無事渡せた事で胸を撫でおろした。
彼女はまだ渡る時では無い。
船頭がまた店の前に船を着けて、調子はどうだと声をかけてきた。
「まだまだだね」
と答え、斜め前の店主が代価をガラス管に保管するのを眺める。
一つでも売れりゃ、このガラス管の意味もあるのになぁ…なんて愚痴を零しながら。
「せいぜい頑張れ」
船頭はアーチの下へ向かって船を漕ぎだした。
誰かを乗せてまた川を渡る為に。
だらけた姿勢のまま手を振り、見送る。
「…売りてぇ…なぁ…」




