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異世怪奇譚  作者: ツチノコ太郎
ep.3 魔女
16/29

16 その男、規格外につき

新章スタートです。

「えッ……」


白、白、白、白。


上下左右見渡す限り白が無限に広がる世界、通称"白キ領域"。


あらゆる世界の繋ぎ目となるこの場所で、とある人物の困惑の声が響いた。


「ン?んン?ワタシの聞き間違いでしょうカ。まさかそんな訳ガ……」


シワ一つない上下真っ白なスーツ姿。顔にモヤがかかった性別年齢が一切不明な人物は、改めて湯気の立つカップを口に運び、


「いや、だから祝福?んなもんいらねぇよ」


「ゴガッ、ブーーーーッ!」


全て吹き出した。


「汚ねぇな」


「ゴホッ、ゴホ……ッいや、ワタシとした事が失礼しましタ」


いつの間にか手に持っていた雑巾で机を拭きながら、案内人は目の前の青年に視線を向けた。


雪のように白い髪と銀色の目をした長身細身の人物は、机に置かれた来客用のカップを手に取ると一気に飲み干していた。


「おっ、上手いなこれ」


「でしょウ!それはアナタ様の世界にはない素材が用いられておりまして、なかなか調達するのが難しいーーーって、そんなことはどうでもいいのでス!」


思わずカップを乱暴に置いて立ち上がる案内人。その衝撃で僅かに中身が溢れるも、当の本人はそれどころではない。


「アナタ様を見つけるのにどれだけ苦労したと思ってるのですカ!?ワタシのこの目にも一切反応しなかったのですヨ!おかげで予定よりも100年遅れる羽目になったのですかラ!」


「だからそれは悪かったって。つい寝心地が良くてな、目覚ましに設定したアラームが聞こえなかったんだ」


全身を動かし荒ぶる案内人に対して、白い椅子にもたれかかるように深く座るその男は、長い足を組み替え目を瞑った。その様子からは、謝罪の言葉に反して一切の反省が見られない。


「それで、ようやく見つけたと思ったら今度は契約しないですっテ!?ふざけるのもいい加減にしてくださいヨ……」


とうとう我慢の限界が来たのか、わなわなと震える案内人から圧が放たれる。机や椅子が震え始め、カップが倒れた。


圧だけで人を殺してしまうのではないかと思われるほどの膨大さ。通常の人間であればこの時点で泡を吹いて倒れていただろう。しかしそんな力を一身に受けた白髪の男の様子はーーー。


「ーーー」


「ーーーッ」


一切動じる事なく、閉じていた目をうっすらと開いただけであった。2つの隙間から僅かに覗く銀の瞳が強烈な輝きを放つ。


そして、2人の圧がぶつかり合うこと数秒。ソレは机の上のカップが耐えきれず粉々に砕けた瞬間静まった。先に折れたのは言うまでもなく案内人である。


「ーーーはァ。はいはい分かりましたヨ。もう良いでス。本っっ当に残念ですが、アナタ様を選定者にするのは諦めまス」


「おう悪りぃな、他を当たってくれ」


互いに圧を引っ込め、元の雰囲気に戻る。自身の苦労を意に介さずヒラヒラと片手を振る男を恨めしい目で見ながら、案内人は倒れた椅子を起こして再び席についた。


「やはり最初から嫌な予感はしてたんですヨ......まあ、アナタ様が昔と変わらぬ実力をお持ちであることが確認できたので良しとしましょウ。それで、実際のところは何割くらい戻りましタ?」


「お前ならこうなる事くらい分かりきってんだろ。……あー、4……いや、5割だな。まあ実際こんなもんさ」


そう言いながら無言で差し出された空のカップを、案内人はため息と共に見るとパチンと指を鳴らした。瞬時にカップから湯気が立つ。


「あれだけ休んで半分とハ……それとも、半分もよく戻ったというべきでしょうかネ」


「ちと物足りねぇがしゃあない。後は向こうでゆっくり戻していくよ」


その言葉と共に再び一息に飲み干すと、白髪の男は席を立った。そのまま案内人の反対方向を向く。


「じゃあそろそろ行くわ、ごちそーさん」


「そうですカ。アナタ様なら何も問題ないと思いますが、この時代も色々と厄介な輩がいるみたいですのでお気をつけテ」


白髪の男はその声に片手を挙げて返事をすると、くるりと手を返し、ドアをノックするように軽く手首を振る。


瞬間、何もない空間にガラスの割れるような音が鳴り響き、あっという間に丁度人が一人通れる大きさまで穴が広がった。


そして、そのままそこから覗く現世へとゆっくりと歩み始めた。


「それでは今世での活躍を心より楽しみにしておりまス。"覇王"アラン=ウォーカー様」


(まさか全て拒否するとはさすがアラン様というべきカ……それにしても流石にこれはワタシも予想外でしたヨ)


案内人の背後にそびえ立つ巨大な白い棚。普段ぎっしりと本が詰まっているはずのそれは現在スカスカになっていた。


原因は勿論先ほどまでこの場にいた男。全ての物語がアランという男を求めて棚から飛び出し、天を覆い尽くしていたのである。


一切興味を示さなかったアランに対して、本達はどこかしょんぼりしているようにも見える。


(さて、遅刻したもののなんとか無事に送り届けることもできましたし、ワタシもやるべきことをやるとしますカ)


案内人は、覇王と呼んだ白髪の男が姿を消してからもしばらくの間頭を下げたまま時間を過ごしたのであった。




・・・・・・・・

・・・・・

・・・




数百年前、所謂"旧時代"と呼ばれる時代ではあらゆる種族の争いが絶えず各地で行われていた。


鬼、龍、巨人、天使等、一部を除き現代には存在することのない上位種達が全力を出してぶつかり合い、地形を変え続ける日々。


そのため当時の世界には地図などというものは存在せず、すべての領域が未開拓エリアと化し、記録は一切残っていない。


もちろんそんな時代に非力な人間は表舞台に立つことは不可能であった。怪物同士の衝突による余波だけでも命取りになる。多くの人々は他の種族の奴隷として虐げられ、逃げ出した一部の人は追いやられるように地下へ避難し、周囲から怯えながら貧しい生活を過ごした。


しかし、とある人物の誕生によって、そんな彼らに転機が訪れた。


その男の名はアラン。黒髪黒目が主流であった人間にとっては珍しい、純白の髪と銀の瞳を持って生まれた。


アランは10にも満たぬ年で自ら地上に出ると、初めての戦闘で鬼を討伐し、世界を震撼させた。


上位種達の視界にも入らなかった矮小な種族であったはずのニンゲンが、突如として自分たちの争いに割り込んできた。


その行為に誇りを汚されたと腹を立てた様々な種族がアランに襲いかかるも、その全てを返り討ちにして彼は更に成長していった。


日に日にアランに逆らう者は減っていき、彼が成人を迎えた遂に頂点へと君臨したのであった。


そして争いは収束し、上位種であった者達はアランの底知れる強さに敬意を込めてこう呼んだ。


「覇王」と。


やがてその世界の多様な知識と力を身につけたアランは、人々を奴隷から解放した後、とある種族の力を借りてタイムカプセルのように自身に魔法をかけて眠りにつくのであった。




時代は現世へと進み、かつて上位種と呼ばれた者達は一部を残してその姿を消した。


あらゆる種族が異能や技能という能力を用いることにより、平等に戦う時代へと移り変わったのである。


だが、そんな時代でも明確な力を持つものが存在した。彼らは選定者と呼ばれ、理に反した力を自由に操る。


天に選ばれなかった者、あるいは天に選ばれた者。明確な2種類に分類される世界で、新たに第3の選択肢を選んだ人物が君臨する。




これは、天を()()()()()()者が世界を揺るがす物語ーーー。


















「さて、これからどうしよう」


意気揚々と白キ領域から出てきた俺は、その場で謎の集団によって取り押さえられ、牢獄にて拘束されるのであった。

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