初恋
恋をした
こんな気持ちを抱いたのは初めてだ
でも付き合うやら、アタックするやら
そんな気持ちはさらさらない
僕は君の姿をこの目に写すだけで幸せなのだからそもそも君と僕とは性格やなんやらが根っこの部分から真反対だ
君は優しいが
僕はひねくれている
君の声は素敵で水のように透き通っているが
僕の声は汚くとてもひどく淀んでいる
君が欲しい。と思うことはときたまある
自分のものにしたいだとかそういう感情だ
だが君はとても美しく明るいまるで太陽のような人だ。
僕みたいな小規模な人間が太陽を独り占めしようなんておこがましいにもほどがある
だから僕は君の事を見ているだけでいい
そう思っていた。
今日もいつものように君とすれ違う
花屋の家で生まれた彼女は今日も椿のいい香りがする
軽く会釈をする
君はすぐに友達の方へ行き
明るく笑っていた
僕はその笑顔が見れただけで嬉しく思える
数時間後また彼女のことを見てみると
二人きりで男と話している
とても複雑な気持ちだ
君があの男を好きにならないようにと祈る自分の弱さをとても憎く思う
ただあの男は魅力的だ
男の僕が見てもそう思う
劣等感で胸が押しつぶされそうだ
人生というものは残酷だ
なんでこんな現場を見せられなければいけないんだ
できることならば見たくなかった
いつものように君だけを瞳の中に写して幸せでありたかった
ただそんなことは無理だった
何かを頼み恥ずかしがるような素振りを見せる男と頬を赤らめながらも笑顔になる君の二人を見ていた
僕は気付いた
なんであいつが、と
ただ僕は根暗で君のことを見つめることしかできないのだから何も言う資格はない
やはり僕は君には似合わない男だ
最後にアネモネの花の香りを嗅いで
1日を終えた。