表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

オワリとハジマリ

「僕が欲しかったものは過去に置いてきちゃったから」


山の奥、木々に囲まれ鬱蒼とした校舎にオレンジ色の淡い夕焼けが儚げな彼女、戌井さんをぼんやりと照らしていた。

いつも元気なクラスのムードメーカー、戌井さんがどこか落ち込んだ様子で窓の外を眺めていたもんだから、クラスの隅っこ端の方にひっそりと息を殺す私でも気になって話しかけてしまった。


「なははっ、何言ってんだろ、わったしー」


戌井さんは時々どこか影がある。

クラスメートと話す戌井さんは笑顔が溢れ、皆を元気づけるかのようなまるで太陽みたいな存在なのだが、どこか一人でいる時は、つまらなさそうな顔をしている。なにかを諦めたかのようなそんな様子を醸し出していた。


「ところで、浅井さん!今日とかこのあと暇?良かったら少しだけ遊ぼっ!」


隅っこ目陰キャ科に属する私には戌井さんは眩しい存在。だけどあんな顔を見てしまった限り、なんかなんとなーく断りづらい、それに憧れな戌井さんと二度と遊ぶことなんて……。


「えっ、あっ……その、う、うん。私なんかで、いいの?」


「うーんうん!浅井さんじゃないとやだっ!えへへ」


いつもの太陽みたいに明るい戌井さんに気づけば戻っていた。冗談なんだろうが、私じゃないとなんて言われた日には眠れそうになさそうだ。


「ほらっ!いこいこー!あっ、知ってる?駅前のたこ焼き屋さん、今年いっぱいで閉店なんだって!」


「えぇっ、やっぱりみんな卒業したら出て行っちゃうからかなぁ?……残念だね」


この時気付くべきだった。

太陽のような明るい戌井さんが、

月のように暗く影のある儚げな理由を。

そうすれば戌井さんはもっと私といてくれたのだろうか?……考えてももう遅い。

自殺した戌井さんはもう帰って来ないのだから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ