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突然ですが、旅に出ることになりました。
魔族領に来てからサイバルミスタの街を拠点として活動してきましたが、
いよいよニルシェ王都へと移動することに。
どうやら、ぶらり旅大好きっ娘なリルシェさん、
ひとつ所での定住冒険者活動では満足出来なかったご様子。
「違いますよっ、今回の移動は魔族領出身の知り合いからの正式な依頼なのですっ」
「故郷を離れて異国で暮らす健気な娘さんからの、地元の友人の近況を知りたいという大変に重要なミッションですから、ウェイトさんも気を引き締めてのぶらり旅をお願いしますねっ」
えーと、気を引き締めてのぶらり旅、ですか。
そもそも、それほどまでに重要な依頼なら、何ゆえ徒歩の旅なのです?
馬車ならともかく、徒歩だと一週間以上かかる長旅に。
「そうっ、それこそがチームモノカ流ぶらり旅の極意!」
「何故なら、道中の移動速度と要救助者遭遇率とは反比例するのが経験則」
「旅を慎重に進めばこそ、困っている人たちの手助けを取りこぼしなく出来るのですよっ」
はて?
ちまたの噂ではチームモノカと言えば、
幌の黒ネコ印がトレードマークな幌馬車での世直し旅で有名だったはず。
「えーと、そういう時代もありました」
「もちろん緊急事態には幌馬車や転送魔法で急ぎ駆け付けるというスピード勝負な救援スタイルも必要でしょうが、今は、その……ふたりでぶらりな徒歩の旅を頑張りたいのです……」
はい、了解。
急がず慌てずの徒歩の旅。
よろしくお願いしますね。
「お任せあれ!」




