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「そう、薬剤の安全性について、だったね」

「副作用うんぬんはもちろん私たち製薬側の問題だが、実はもうひとつ、とても重大な問題がある」



 この異世界ならではのアバウトさ、ですよね。


 市販の冒険者用ポーションを見てびっくりしたのは、


 注意書きどころか薬液名すら表記されていないってことでした。


 使用者側が薬液の色と小瓶の形状で判別しろだなんて、


 いくらなんでも乱暴すぎやしませんか。



「あれについてはこちらの世界の流儀、というか、私たち召喚者が変えてはいけない慣例、としか言えないね」

「冒険者にとってポーション類が必要とされるのは荒事絡みの緊急時である場合が圧倒的に多く、大抵の場合、のんびりラベルを確認出来るような状況ではないのだろう」



 ふむ。



「そのような緊急時、ポーション類として何より求められているのは、一瞬で判別出来る高い視認性」

「つまり、誰しもがチラ見でも分かるような、種別ごとに決められた色分けが成されている薬液」

「それと場合によっては手探りでも判別可能な、定められたルールによって形状が定型化された薬瓶」



 ふむふむ。



「私はまだまだ新米な薬師なのだが、この世界で一般的に使用されているヒール系やキュア系のポーションは系統ごとに着色する色が定められていて、薬師なら法で縛られていなくてもその手の決まりごとは厳守しているということに、凄く感心させられたよ」

「まさにこの異世界ならではの、先人の知恵、だよね」



 なるほど、あのアバウト感にもちゃんとした意味があったのですね。


 とても勉強になります。



「とはいうものの、星の数ほど種類がある薬液全てに意味のある色を割り当てるのはまず不可能」

「結局、薬瓶にはラベルなどによる表記が必要ってことさ」

「ただ、小さな薬瓶に必要な注意書きを全て表記するなんて実質不可能だし、極論を言えば、真に正しく扱うには作り手と同等以上の知識が求められるわけで」

「まあ、塗り薬を舐めるのが何よりも大好きっていう困った連中が多いのも、この異世界なんだけどね」



 結局のところ、全部が全部なんて責任持てないってことですよね、


 いかに天才薬師さんといえども。



 それでも、せっかく丹精込めて生み出された良薬だからこそ、


 本当に必要としている人たちに正しい使用法で使ってもらいたいわけで。



 ふむ、老若男女も種族も問わずの、ある意味何でもアリな利用者たちに、


 分かりやすく使用法を伝えるには……




 やっぱり、薬のラベルに工夫が必要ってことなんでしょうね。


 例えば、その薬をどう使うかを、文字での注意書き以外にも、


 グラフィカルなアイコンとかで分かりやすく表記するとか。



 人族マークにマル印、獣人さんマークにはバツ印みたいな、


 誰もがひと目で分かる工夫を。



 飲み薬・塗り薬・嗅ぎ薬、


 結構紛らわしいこれらも、分かりやすいアイコンがあれば……




「もしもし、ノルシェくん」

「この隠れた逸材、うちのラボにお持ち帰りしても良いだろうか」

「何だったら私はウェディングな永久就職でお迎えしても構わないのだが」



「ごめんなさい、クロ先生」

「我が相棒な冒険者としてとっくに予約済みっ、なのです」

「こんな鍛え甲斐のある殿方は、騎士として見過ごせませんよっ」



 本当、勘弁してくださいよぅ……



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