04
祝、回復!
ありがたいことに発症の翌日には副作用の禁断症状が消えてくれました。
その後、クロ先生のお言葉に従い、大事を取って二日ほど様子見の経過観察。
そして本日、めでたく退院。
うん、退院で良いよね、今回のケース。
こうしてようやく、一軒家テント暮らしから解放されました。
外の空気が美味しいですね。
いえ、一軒家テント内の魔導空調システムに不満はありませんでしたが、
やっぱシャバの空気はうめぇってことで。
---
「本当に申し訳ない、まさか副作用があれほどとは」
「計算上、副作用は天文学的な確率と、甘く考えてしまった私の不徳」
「しかもウェイトさんのような体質だとあそこまで重篤化するというのは完全に想定外」
「お詫びと言っては何だが、この完成したばかりの抗"欲望"試験薬、略して"抗欲薬"をぜひ服用してくれたまえ」
「これさえあればあの手の禁断症状のみならず、どんな根深い欲望でも根こそぎ根絶されて、まるで賢者モードなガンジーになったかのような生涯を過ごせること間違い無しだよ」
こんにちは、クロ先生。
すみません、わざわざ来ていただいて。
とりあえずその怪しげな色の薬液が入っている物騒な小瓶はしまってください。
えーと、今回の件は、あまり気に病まないでくださいね。
そもそもこの異世界って人族以外にも多種多様な存在が共存してますし、
魔法やら謎スキルやらで始終わけ分からん影響を受けたりもしてますし、
使用する側の状況によっては、どの薬がどう作用するかなんて、
100%完璧に把握するのは難しいですよね。
ましてや出来立てほやほやの新薬ですもん。
「まさにそこなんだよ、問題は」
「エリクサー・マイルドについては、我ながら少々勇み足だったことは否定出来ない」
「それでも私としては生み出した全ての薬に責任を持ちたいし、利用者には可能な限り正しい使用法を伝えたいとも考えている」
「今後は新薬製造に関しては倫理的に許される範囲での生体実験、もとい可能な限り安全な臨床試験による慎重な検証を重ねたいと考えているよ」
ご立派な覚悟だとは思いますが、
そんなまなざしで俺を見ないでくださいな。
いくら俺でもやりませんからね、新薬試験のモルモットなんて。
「いや、就職活動の一環として積極的に売血行為を選択するようなウェイトさんなら、喜んで私の研究に協力してくれるかと」
やりませんってば。
結構気に入ってるんですよ、今の冒険者暮らし。
「むう、残念至極」
「ノルシェくんとの日々の冒険者生活は、それほどまでに楽しいのかな」
我ながら厄介な性格をこじらせていると自負している俺ですが、
今の冒険者暮らしは思っていた以上に頑張れてますし、
鍛錬の方をもう少々ユルめに調整してもらえさえすれば、
天職と言っても過言では無いくらい楽しい毎日なんですよ。
「なるほど、ウェイトさんにとって、もはやノルシェくんは人生に欠かすことの出来ない存在だ、と」
もしもし、クロ先生。
何やら話しが脱線してません?
「そうだね、ノルシェくんを可愛らしく赤面させてしまったようだし、これ以上は野暮ってもんだよね」