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ふたりでてくてく、徒歩の旅。
道中は大変に順調ですが、慎重に進むがゆえの問題も少々。
魔族領内は外界と比べて強めの魔物が多めなのだそうですが、
複合機能型魔導具"Gふなずし"による広範囲探査のおかげで、
無駄な戦闘を避けながらの旅が出来ております。
そのため、魔物のナワバリを迂回して遠回りになったり、
やり過ごすための待ち時間が多かったりするわけですが。
もちろん、荒くれ野盗の類いは見逃さず積極的に討伐。
リルシェさん、本当に悪党には一切の容赦無し。
不殺での無力化のためなら、抵抗する悪党は問答無用の腱切り一択。
その姿、まさに『金髪の腱切り魔』
ただ、不殺であるがゆえ、
討伐した悪党たちは必ず引き取りに来てもらわねばならんわけで。
"Gふなずし"の通信機能による最寄りの冒険者ギルドへの連絡の必要と、
駆けつけてくれた衛兵さんや引き取り依頼を受けた冒険者への引き渡し。
つまり、しらみつぶしでの野盗討伐は、
旅の日程を大幅に遅らせる要因ともなっているのです。
一週間の予定だった旅の日程が、
八日経っても道半ば……
「……ご不満ですか」
いえいえ、そんなことはないですよ。
ただ、今のリルシェさんは少々頑張りすぎではないかと。
正直なところ、見ていて心配になるほどです。
俺はご存知の通り、荒事も旅のあれこれも全くお役に立てませんし。
「実は……以前から悩んでいたのです」
「それで今回の旅では、少々頑張り過ぎているのかも……」