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剣姫エルフの異世界放浪記  作者: へいほー
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第9話 油断、ダメ、絶対





オルガ武具を後にして私は冒険者ギルドで依頼を受注。その足でそのままいつもの魔草採取でお世話になっている街道沿いの平原にやってきた。

いつもならばここで索敵魔術の訓練をしながら採取と意気込むのだが……


「全くないや」


ここ1週間、魔草採取に精を出しすぎたのか……付近には全く魔草の反応がない。

練習にはならないが、仕方なしに魔力探知を使用して辺りを見渡すが残念ながら反応はゼロ。

魔草採取は私だけがしているわけじゃないので無くなってしまうのは仕方がない。

魔草も1日や1週間程度では発生しない代物だし、今日は場所を変えて森の近くまで足を伸ばしてみることに。


スペルの街から一番近い森はさほど広くはない。半日も歩けば抜けれるような場所で、初級冒険者が低級魔物を狩るための狩場としてよく使っているらしい。

一番よく見かける魔物であるレッドボアはここから草原に出てきたりする。


ちなみにこの世界にはゲームでよく見かけるモンスター……スライムやゴブリンといった魔物も存在はする。

動物が魔物化する世界でスライムやゴブリンはどの動物から派生しているのだろうか。一度調べてみるのも良いかもしれない。

意外と私は知らない事ばかりだ。


森の近くまでくるとそこそこ魔草が散らばって生息しており、索敵魔術を使用しながら採取をしていく。


「……でかい」


魔草採取をしていると、索敵魔術に反応を感じる。

見たことのない魔力反応な上、かなりでかい。森の方から私に向かって一直線に向かってきている。


「ミノタウロスかな?」


索敵魔術を解除して魔力纏にシフトチェンジ。

接近してくる方向を凝視していると、大きな岩を削り出したであろう棍棒と巨大な盾を持った二足歩行の3メートルはあろう牛の姿が見えてくる。


「……よし」


予想は的中。

昨日シバが忠告してくれた通り、ミノタウロスが目撃されたのは嘘ではなかったようだ。


激しい鼻息を立てながら私を視界に入れた途端、ゆっくりと歩き出すミノタウロス。

無闇矢鱈に突っ込まずに牽制をしながら近づいてくるところを見ると知能が高いというのも案外間違いではなさそうだ。

身につけている巨大な盾は明らかに人族の技術が使われている。襲った冒険者から奪ったのだろう。

はち切れそうな筋肉には所々傷のようなものも見える。一番厄介な戦闘経験がある魔物だ。


「たしか……ミノタウロスのタン……ミノタンは美味しいってルーアが言ってたな」


ルーアが言っていたことを思い出しながら柄に手を添える。

ここまで体格差がある相手と戦ったことはない。まずは様子見をして相手の間合いや攻撃パターンを理解しよう。


「ブモォォォォ!!」


逃がさない距離まで詰めた、と判断したのか大きな雄叫びを放ちながらミノタウロスは私に向かって猛スピードで突進をしてくる。

単調な動きだが、当たれば魔力纏があるとはいえ体格差で吹き飛ぶのは間違いない。

大きく歩幅をとって回避する。


「ひえー」


私の横を風切り音を鳴らしながらミノタウロスは通り過ぎていく。

当たらなかったことを確信したミノタウロスは大きな石の棍棒を私に向かって振り下ろす。


「うわっ」


大きめに距離を取るが衝撃が私の身体をビリビリと押し返すのを感じる。

地面は抉れ、激しい息遣いがこちらにも届いてくる。


「こりゃ、受け止めるのは不可能だね」


膂力も体格も違う。受け止めようものなら身体中が粉砕されてしまうだろう。

だが、目は良くなさそうだ。動きも単調で反応も遅く感じる。

相手の弱点も得意な間合いも理解できた。そこを詰める。


柄を握りしめて、大地を蹴り出す。

反応が遅いミノタウロスなら懐に入ってしまえば対処はできないはず。

一気に鞘から刀身を抜き出し、腹に向けて振り抜く。


だが、持っていた大盾にいなされてしまう。


「ッチ」


再び距離をとり、構えながらミノタウロスの出方を観察する。


戦闘経験がある魔物はこれだから厄介なのだ。

反応はできていなかった。だが、このミノタウロスは自身の弱点を理解し、予測ができるほどの知能を持っている。

棍棒を振り回すだけで、技もへったくれもないがそれを気にしないで済む体格と力を持ち合わせている。


「ブモォォォォ!!」


私との距離を一気に縮め、棍棒で薙ぎ払う。

縦振りだと攻撃範囲が狭く、素早い私に当たらないと判断したのだ。

無駄に知恵が働く分、これまた面倒。

後方に下がりつつ、ミノタウロスの範囲攻撃を避け続ける。


だが、魔物とはいえ動物。無尽蔵なスタミナはあるわけがない。

このまま消耗戦に移行しても良いのだが……それは私のポリシーに反する。


「行くぞ牛野郎」


振り払った直後の隙を狙って懐に入り込む。まずは邪魔な棍棒を落としてもらおう。


瞬時にミノタウロスの右手に向かって剣を振り上げる。


「―――まっ!?」


ミノタウロスの右手首の腱を狙って斬り裂こうとしたが尋常ではない硬さだった。

皮膚は斬り裂けたものの、分厚い筋肉には押し返されてしまった。

魔力纏での中和は成功している。それでも私の剣を押し返すほどの強靭さ。鉄剣程度の切れ味では到底斬れない。


「だったら――――」


傷をつけられたことに苛立ちを感じたのか、少し雑な振り下ろし攻撃をしてくるミノタウロス。

私は最小限の動きで避け、棍棒が私の目の前にくる瞬間に手首に切先を突き刺す。


「グモォォォォ!?」


全体重を乗せて手首ごと地面に突き刺し、それにつられてミノタウロスの巨体は倒れ込む。

追撃のチャンスと判断して私は剣を捻り、ミノタウロスの手首をへし折る。

咆哮を上げながら叫び出したので、すぐに剣を抜いて距離を取る。


「――ふぅ」


ミノタウロスはひとしきり叫んだ後に右腕を震わせながら手放してしまった棍棒を手に取ろうとするが右手はもう使い物にならないようで棍棒を手に取ることはできずにその場に落としてしまう。


「さーて、第二ラウンド」


強烈な怒りを露わにしながら壊れた右手を私に向かって振り下ろしながら突進してくる。

後ろに下がりつつ、回避。当たらないようにしっかりと距離も取る。

地面に振り下ろされた右手は地面を抉り取りながらボロボロになっていく。


……しかし壊れた右手をそのまま使って攻撃とは予想外。

知能が高いのか低いのかどっちかにしてほしい。

だが、ただでさえ単調だった動きはさらに単調になり……目を瞑っていても避けれそうな勢いだ。


「――――よっと」


大きな振りかぶりに合わせて横っ腹を斬り裂く。かなり硬かったが、力技で内臓まで届かせる。

赤黒い鮮血が辺りに散らばったところで力が抜けたのか、膝をついて脇腹を押さえている。

それを見逃さず私は剣を鞘に収めて、下がってきたミノタウロスの首を狙いに定める。


「じゃあね」


何万、幾億回と繰り返してきた『神鳴流(しんめいりゅう)』の型。


「――――雷鳴(ライメイ)


神鳴流の奥義の一つであり基礎。一刀でその者の命を刈り取る居合斬り『雷鳴(ライメイ)』だ。

振り抜いて数秒、ミノタウロスは動きを止めていると首筋からツーッと血が垂れてくる。

徐々にバランスを崩した首はゴロンと鮮血を撒き散らしながら地面に落ちた。


「すぅ……はぁ」


心を落ち着かせるために深呼吸。


レッドボアや盗賊と比べると圧倒的に強かった。だが、ミノタウロスの肉体構造が人に近づいていたからこそ間合いも取りやすかったし、攻撃の予測も容易くできた。

この世界にきて1番楽しめたといえるだろう。


「さてと、解体して換金素材を持って帰るか……――――っ!?」


解体用のナイフに手を伸ばそうとした瞬間、気配(殺気)を感じる。

咄嗟に腕で防御姿勢を取るが、強烈な衝撃が私を襲う。


「がっ」


その衝撃に耐えきれず、10メートルほど吹き飛び、一瞬意識を飛ばしかける。


「――――ごほっ!がっ」


痛い、苦しい、息ができない、何がどうなった?


意識が一瞬飛びかけるのを無理矢理押し留め、横腹を抑えながら先ほどまで立っていた方向に意識を向ける。


そこには倒したはずのミノタウロス……いや、ミノタウロスがもう1匹居たのだ。

私を吹き飛ばしたからなのか、興奮をして咆哮を上げている。


「ミスった……」


完全に油断をした。完全に私のミスだ。

誰がミノタウロスが1匹だけだと言ったのだ。シバもミノタウロスが目撃されたって言っていただけで1匹と思い込んでいた私の落ち度だ。


「クッソ」


こんな醜態、お師匠が見たら怒号の嵐だ。


ゆっくりと立ち上がり、折れているであろう腕に治癒魔術をかけて治療をする。

咄嗟に受け身と防御姿勢を取れたおかげか、粉砕骨折まではしていない。魔力纏がなければ全身砕け、即死していてもおかしくない威力だった。

だがこの程度ならすぐに治せる。治癒魔術を村の男子どもで練習した経験がここで役に立つとは思わなかった。


「……もう油断はしないぞ」


さっきまでは小手調べと相手の強さを測るために神鳴流を最後まで使わなかった。

だが、もうその必要はない。最初から全力だ。


私を仕留めきれていないと気づいたミノタウロスはその巨体を活かし、猛スピードで突進してくる。


柄をゆっくり握りしめて、意識を集中させる。


「――――雷鳴」


ミノタウロスは私を通り過ぎ、鮮血を散らしながら失速して地面に倒れ込む。

それと同時に私の足元あたりにミノタウロスの頭部がストンっと落ちてくる。


「索敵っと」


反省もした、失敗もした。ならば次は同じ過ちを犯さない。

すぐに索敵魔術を展開して他の魔物や脅威になりうる存在がいないか確認をする。

反応はない。あるのは2匹のミノタウロスの死骸。


「あー……疲れた」


反省点が多すぎる。だが、反省会は後回し。

早く解体をしなければ日が暮れてしまうので、早速解体しよう















「あー……」


解体は死ぬほど時間がかかった。

ミノタウロスで使える部位はツノ、タン、魔石の3種類。

魔石は一定の魔物が体内で生成する石のこと。魔力が凝縮され結晶化されることでできるのだが、この世界での利用価値はかなり高い。

魔力の電池のようなもので、魔力の蓄積、放出、性質変化の性能を持っている。

性質変化は魔物が使う特性によって変わる。ワイバーンなら風の性質変化、クラーケンなら水の性質変化といった感じだ。

残念ながらミノタウロスが生成する魔石には性質変化はない。とはいえ、魔力の蓄積、放出は複雑な魔道具には必須なので重要だ。

性質変化があると魔道具に余計な魔術式を書き込まなくて良いのでコスパも別の機能もつけやすいと意外と便利。


とにかく、3メートルを超える巨体を、2体も解体をして不必要な部位を燃やして埋めるなどの作業をしていたらかなりの時間がかかった。

焼いていると憎たらしいほど香ばしい匂いをさせていたのが地味に腹立つ。タン以外の部位は硬くて食えないくせに。


魔草を入れる予定だった麻袋もミノタンとツノ、魔石で随分と重い。

だが可食部位が少ないミノタウロスだからこそこの程度で済んでいるともいえる。

魔物の中には全身余すことなく価値がある奴らだっているのだ。

他の冒険者はどうしてるのだろうか?今度ルーアに聞いてみよ。


「よぅ、嬢ちゃん。遅かったな」


冒険者ギルドに着く頃には陽はもう沈んでおり、仕事を終えて呑みに出かけている冒険者とよくすれ違った。


「……って、血まみれじゃねぇか。返り血か?」


「いやぁ、ちょっとあってね」


戦闘中はできる限り返り血を浴びないようにはしている。返り血を浴びると血で武器が滑るようになる上に錆びやすくなる。臭くもなるし見た目もヤバくなる。

良いことはないのだが、解体が不慣れな私はかなりの血を浴びてしまった。身体についた分は水魔術で洗い流したが服についた血までは落とせなかった。


「魔草は少ないけど、これ買い取ってくれる?」


「何を狩ってきたんだよ……って、これは」


ドサッと麻袋を受付の上に置いて、魔草依頼の割り印も置いておく。

中身を除いた受付のおっさんは目を見開いて固まってしまった。


「……ミノタウロスか?しかも2匹」


「うん。魔草集めてたら襲ってきたの」


「嬢ちゃんが2匹とも狩ったのか?」


「私はずっとソロ(独り)だよ」


「そうか……わかった。待っててくれ」


そういうとおっさんは受付の奥の方へ向かって行った。

服を匂って血生臭さと獣臭さを実感しつつため息をついているとおっさんが戻ってくる。


「実は初級冒険者が何人かミノタウロスにやられたって報告を受けててな。明日には依頼を出すところだったんだ。あの辺は初級冒険者しか行かないからな……助かったよ嬢ちゃん」


「たまたまだよ。油断して2匹目に殴られちゃったけどね」


「な、殴られた?それにしてはピンピンしてるな?」


「治癒魔術で治したからね。流石に腕が折れちゃってたよあっはっはっは」


「笑い事じゃねぇと思うんだが……てか、骨折治せる治癒魔術まで使えんのか……」


何かブツブツとおっさんは言った後に受付の下から魔術式が書かれた板を出してくる。


「ギルドカードをこれに乗せてくれ」


「はーい」


素直に従ってギルドカードを乗せる。おっさんが魔力を流してギルドカードを軽く確認した後に私に渡してくる。


「おめでとう。昇級だ。3級冒険者……初心者卒業だ」


「え?4級は?てかこんなんで良いの?」


「ミノタウロスを単独で2匹も狩ってくるやつをいつまでも初級冒険者にしてられっか。飛び級だよ。ミノタウロスの討伐難易度は2級冒険者レベルだぞ」


「へぇー、でも3級なんだね」


「護衛依頼か盗賊討伐を成功させないと2級にはさせてやれねぇんだ。すまねぇな」


「それなら仕方ないか」


大体私はまだ採取依頼しかしてないんだ。ミノタウロスを討伐しただけで飛び級したならそれはそれで問題はない。

そろそろ討伐系の依頼もしていこうと思ってたから都合もいい。


「ミノタウロスの素材はどうする?」


「タンを一個だけ残して他は売らせて。タンは今日の晩御飯にする」


「そうか。羨ましいぜ。ミノタンは……酒と良く合うんだ」


それは良い情報だ。早速いつもの食堂に持ち込んで調理してもらおう。たしか持ち込みオッケーって言ってたはず。


「ミノタウロスのツノが4本、ミノタンが1つ、魔石が2つ、魔草が……0.5キロだな。金貨11枚と銅貨2枚、鉄貨5枚だ……が、ミノタウロスの依頼達成も含めて金貨15枚と銀貨5枚だ」


じゃらじゃらと硬貨を机の上に並べていくおっさん。


「おー」


今までの数倍の稼ぎになった。

ミノタウロス、意外とコスパがいいぞ。

硬貨を軽く数えて麻袋に入れて腰のポーチに入れる。


「それにしても……早い昇級だったな。1週間とちょっとで昇級は歴代3位だ」


「そんなに早かったの?……それでも歴代3位?2位と1位ってどんだけ早かったの?」


「2位は200年くらい前だったな。嬢ちゃんと同じエルフだって聞いたことある。……たしか、ロアって男エルフだったかな?弓でワイバーンを仕留めた強者だぜ」


……聞いたことがある名前だ。うん、実に聞いたことのある名前だ。

同名ってだけの全く違う人かもしれない。そうだと思いたい。


「たしか、嬢ちゃんと同じアルス村のエルフだったと思うぞ。名前も似てるし、会ったことあるんじゃないか?」


「ウーン、シラナイカナー」


父ですね。

あの狭い村で同じ名前の人なんてありえないし、私の知る限りロアという名前は私の父以外知らない。

こんなところでわざわざ言うと面倒臭そうなので敢えて黙っておく。


「歴代1位の人は?」


「最近だったな。たしか5年前くらいで人族だ」


「ほぇー、人族なんだ。ちなみにどれくらい早かったの?」


「……1日、未満だな」


「えぇ……」


まさかの1日未満。人生生き急いでそうだな。


「逸れドラゴンがスペル付近を陣取っててな。それを単独撃破した後に冒険者登録したんだ。……ま、一言で言えばバケモンだな」


「そりゃ恐ろしい」


ドラゴンはこの世界にいる最強種の魔物だ。

魔物の中で珍しく、繁殖をして群れで行動する魔物。基本的に人里離れた山の上や樹海の奥に生息しているらしいがたまに群れからはぐれることがあるらしい。

街の近くに1匹現れればその街の総戦力を持ってして討伐に向かうほどの災害レベルにヤバい魔物。


ちなみに龍族とは全くの別物。龍族はドラゴンではなく、神龍(しんりゅう)と呼ばれる神の末裔とかなんとか言われている。神龍(シェンロン)ではなく、神龍(しんりゅう)なので間違えてはならない。よく分からない球を7つ集めても願いは叶えてくれない。


「最近じゃ闘神王国の武闘会で剣聖の称号を得たとか聞いたな。とにかくヤベェ奴さ」


新しい単語を一気に出さないでほしい。混乱するし理解できないではないか。

闘神?剣聖?どういうこっちゃ。


「……とにかく、世界最強の人族の1人だな。嬢ちゃんと同じ……剣士だぜ?」


「ほぅ……それは気になる」


世界最強で、ドラゴンすら倒すことができる強者。しかも剣士もきた……是非とも戦ってみたい。


「嬢ちゃんなら闘神王国にはいずれ行くだろうな。その時にでも調べな」


「わかった。良いこと聞いた気がする……ちなみにその人の名前は?」


「たしか……セドリック、セドリック・リーゼンだ」














マギア王国より北にあるタルアト評議国。

この国の元となったのは12の小国家である。領土を奪い合い、戦争を繰り返してきた小国家は力をつけていくマギア王国や帝国に対する対抗手段を持たなかった。

1人の若い小国の国王が融和を持ちかけ、成立させることができたのがタルアト評議国だ。

小国家の国王であった12の国王は評議員として国をまとめるようになり商業と魔術産業によって中央大陸において確固たる地位を獲得して行った。


その評議国が治めるとある土地に1人の青年が訪れていた。

彼の目的はその土地に現れ、侵略の限りを尽くす特級魔物……ゴブリンの軍勢の討伐。


「ゴブリンって雑魚キャラじゃないってのがこの世界のおかしなところだよなぁ」


「セドリック……ゴブリンは危険だ。舐めてかかるな」


「わかってるって」


ローブを身につけた魔術師は1人の剣士に気を引き締めるように伝える。


この世界のゴブリンは小国ならば攻め落とすことも可能な危険な魔物として民に恐れられている。

ゴブリンは一体だけなら普通の冒険者でも倒すことができる程度の力しかない。だが、ゴブリンの強みは繁殖力と人間には劣るがそれなりの知恵があること。

1週間も放置すればその数は有に1000を超える軍勢となる。そして増えすぎたゴブリンたちは食糧を求め、この世界の住人たちに襲いかかる。

そしてゴブリンの知恵が彼らを特級魔物として評価している点。

罠を張り、拠点を作り、連携が取れる。獲物の観察をし、行動パターンや相手のスペック(強さ)すらも把握してしまう。

ゴブリンの軍勢と相手をすると言うことは、戦争といえるほどの激戦になることが確定しているのだ。


「さて、見えてきたぞ、マーロン」


「砦まで作っているか。厄介だな」


セドリックは柄に手を当てて意識を集中させる。


「ま……関係ないさ。『神鳴流』は完全無欠、最強無敵だ」


そして数時間後、この土地に現れたゴブリンの軍勢は全て息途絶えた。


1人の剣士と1人の魔術師によって。


魔術師の名はマーロン・パドラクス。魔術の深淵を望む、この世界で五指に入る実力を持つ魔術師。


そして、剣士の名はセドリック・リーゼン。


剣聖の称号を手にした最強の剣士。


ゴブリンの死体の山の上に立った彼は剣についた血を払い、剣を鞘にしまう。


「さて、マーロン。次はマギア王国に行こうと思うんだ。なんと依頼人はイーワン皇帝からだ」


「そうか」


「本当……実の娘を暗殺してくれだなんて理解できないね。悍ましく身勝手で傲慢だ。……マーロンは興味ないのかい?」


「無い。私は魔術の深淵を知りたいだけだ」


「ははは、そう言うと思った……それにしても、俺を楽しませてくれる奴はいないものかね」














「ということで相談なんですよルーア先輩(パイセン)


「どういうことなのかさっぱりわからないわ」


ミノタウロスと戦った次の日。

討伐系の依頼をやってみようと掲示板を物色していたところに依頼から帰ってきたルーアを見つけ、強引にご飯へと誘った。

疲れていたのか少しだけ面倒な顔をされたが、昨日の臨時収入があった私はご飯を奢るとにし、それを伝えると簡単にホイホイ付いてきた。


出されたレッドボアの肉を堪能しながら相談を持ちかけた。


「魔物の解体だよー。昨日、ミノタウロスを狩ったんだけど……独りで解体に時間はかかるし、ミノタウロスだから必要素材少なかったけど、全身素材のやつだっているじゃん?その時は他の冒険者はどうしてるのかなぁーって」


「……はぁ?ミノタウロス?独りで?リアが?」


なんだか信じていないようだ。


「待って待って。はっきり言うわよ?ミノタウロスって2級冒険者が討伐担当するのだけど、基本的にはパーティを組んで対処する魔物よ?貴女はそれを独りで狩った……ってこと?」


「うん。2匹も出たから大変だったよ」


「……2匹も?ちょっと待って、頭痛くなってきた」


「大丈夫?また飲みすぎた?」


「違うわよ……貴女の非常識な強さに呆れてるのよ……」


よく分からないがルーアはこめかみを抑えながら唸っている。


「そんなことより、他の冒険者はどうしてるのか教えてほしいな」


「はぁ……まぁいいわ。リアが非常識なのはよく知ってるし、気にするだけ無駄ね。えーっと魔物の解体とかよね?」


「うぬ」


非常識呼ばわりはとても心外だが、何を言っても無駄そうなので諦める。

そんなことよりも、大変な作業を独りでするのはもう勘弁願いたいのだ。


「そうね、まず一つ。リア、貴女はパーティメンバーを募集したりする?」


「しないかな。誰かと連携取れるほど強くないし」


正直に言えば邪魔になりそう、というのと独りで戦って強くなりたい、限界を知りたいってのが本音だ。

ただ、連携をとった戦いなんてしたことがないのも事実。とにかく今はパーティメンバーはいらない。必要としていないから。


「冒険者は4級になれば自然とパーティメンバーを集めるようになるの。そうでもしないと魔物に太刀打ちできなくなるからね。そのメンバーと狩った魔物を解体、一緒に運ぶのが普通よ」


「うへぇ……解体と荷物運びだけしてくれる人いないかな?」


「無理ね。それだと自分の稼ぎが少ないじゃない。パーティメンバーの利益配分は基本的に貢献度と事前に決めた配当よ。それに、上級冒険者についていくのにも同ランク以上っていう制限がかかるわ」


なんとも面倒だ。

だが、ルーアは必要なことだと言う。


「経験を積むために無理して上級冒険者について行って無駄死にする冒険者が後を立たなかったのよ。だから、ギルドは冒険者が減るのを防ぐために依頼についていくには同ランク以上って制限をつけたの」


他にも下級冒険者を小間使いや囮のように扱う上級冒険者が一定数いるため、下級冒険者は上級制限のある依頼に着いていけないという制限をつけたとか。


「じゃあ暫くは独りかぁ……はぁ」


「んー……一応、手段はあるわよ?」


「そうなの?」


少し渋った顔でルーアは答える。


「……奴隷を雇うのよ。奴隷は冒険者の所有物になるから依頼にも連れて行けるの」


「な、なるほど」


たしかに奴隷なら……と思うが前世の私の価値観や倫理観が嫌悪感を示す。


「契約奴隷だと拒絶されたりするから……犯罪者奴隷一択ね。正直オススメはできないわ」


「なんてこった」


「あと、奴隷を買うには奴隷商に行かないと行けないんだけど……身分の証明がいるのよね」


「……冒険者のギルドカードじゃダメなの?」


「ダメじゃないけど、冒険者は一括払いになる上に2級冒険者じゃないとダメだわ。まぁあとは……貴族の客人認定されてるとかかしら」


「きゃくじん?」


ルーアは事細かく教えてくれた。

貴族の客人認定とはその人が平民でありながら貴族がその人の後ろ盾になっている、ということらしい。

普通は貰えるものでもないし、その貴族御用達の大商家に与えられることがほとんどらしい。


……ん?待てよ?それってハウルさんから貰ったやつで行けるのでは?


「ねぇ、ルーア。これだったら行ける?」


そう言いながら私はポーチの中に放り込んでいた1枚のメダルを取り出して見せる。


「……す、スペルドア家の証紋?え?本物?」


「うん。本物」


「……待って、もっと頭痛くなってきた」


ついに頭を抱える素振りを見せるルーア。

何気なく貰ったがそんなに凄いものなのだろうか?


「……つまり、リアは領主様の客人でミノタウロス2匹を単独撃破できて歴代3位の速度で飛び級3級冒険者……?あぁ、訳わからないわ……」


「これで行けるの?」


「行けるわよ……どころか、この国の身分証明が必要な施設ならそれを見せるだけで入り放題なぐらいよ?」


「ほぇー」


とにかく、方針は決まったかな。

あまり気は進まないが、魔物の素材回収や解体の手伝いなどは奴隷にやらせるのが今の私には1番良さそうだ。


明日は奴隷探しかな。……うーん、気が進まない。









裏設定的な補足説明的なやつ



ギルドのおっさんについて

名前はラインハルト。32歳。愛する妻と娘を持つギルド内で1番の幸せ者。名前と外見が合わないことにコンプレックスを抱いている。

元1級冒険者で数年前まで現役だったが、現在の妻(元パーティメンバー)の魔術師に攻め落とされ、冒険者を引退。意外と何でもできる器用なところや厳つい風貌を認められて冒険者ギルドにヘッドハンティングされた。

意外と奥手な人物で結婚するまで奥さんには手を出さなかった。スキンヘッドにしているのは妻の好みだから。最近娘が可愛くて仕方ない。

趣味は料理でいつか夫婦で食堂を開くのが夢。




ミノタンについて

この世に存在するタンの中でもっとも美味いとされている。

程よい食感に溢れ出る肉汁、しつこくなく喉越しすら感じる脂はまさに絶品。

リアはタン元を食堂で調理してもらい他の部分はお世話になっているので寄贈。大変喜ばれたし大変美味であった。







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