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剣姫エルフの異世界放浪記  作者: へいほー
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プロローグ 剣に生きた女子高生はエルフに転生する

初めまして、へいほーです。


なんとなく書き始めた作品が溜まってきたので投稿してみます。


亀更新なのは昔からなのでご了承ください。



強き者は人を守れ。


強き者は前に立て。


強き者は優しくあれ。


そして、強き者は強くあれ。


これはお師匠(おじいちゃん)が口癖のように毎日私に言い聞かせた四箇条。


私たちの、お師匠と私の剣術『神鳴流(しんめいりゅう)』の基本理念だ。

私はこの理念を体現できている気はしない。

だって、私は私のことを強いと思えないからだ。


私より強い人はたくさんいて、色んな強さがある。

そんな中で自分が一番強いだなんて思えなかった。


ただ、剣を振るのは楽しい。


将来の不安や過去の後悔を考えなくても良い。

自分が追い求める理想の形に近づくために、一心不乱に剣を振るう。


いつか見た、お師匠の雷鳴のような剣筋を目指して。











まだ肌寒い3月上旬。

朝日が登る数分前から私の朝は始まる。

ランニングで軽く身体を慣らしたあとは、家の離れにある道場に行く。

使い慣れた重石が付けてある訓練用の竹刀を取り出して、鋭く息を吐くように刀を振る。

刀は空気を切り裂き、鋭い風切り音と共に鋒が地面に当たる数センチ手前で止まる。

10回、100回、1000回、と何度も何度も竹刀を一心不乱に振り、自身のフォームや筋肉のつき方を確認するように意識する。


「……ふぅ」


途中から数えることすら忘れ、自身の感覚が満足いくまで竹刀を振り、満足いったところで腰につけていたタオルで額に滲む汗を拭う。


「よし」


道場の一角に飾ってある一つの刀を私は竹刀の代わりに取り出す。

鞘から刀を抜き取り、刃こぼれや錆がないかと一通り目視で確認し、もう一度鞘に戻して腰に身につける。


「……ふぅー」


少し乱れた呼吸を整えるように深呼吸。

外から聞こえてくる小鳥の囀りや車やバイクの音が徐々に消えていくような感覚に浸る。

外の世界からの音や情報が全て消え去り、自分の間合い以外の景色は暗闇に消えていく。

目を閉じ、間合いの世界に意識の中に落とし込む。

完全に集中しきった瞬間、音を置き去りにするような速度で抜刀し、空気を切り裂いた。


「……もっかい」


同じ所作を何度も何度も繰り返し、技の形が崩れてないか、間違ってないか、自身の感覚を頼りに反復動作のように繰り返す。

気がつけば額から流れた汗は頬を伝ってポタポタと床に垂れていた。

集中力が良い感じに極まっていたところに携帯で設定したアラームが道場内に響き渡った。


「……よし。今日の朝練しゅーりょー」


満足はできていない。しかし、時間は有限。道場には備え付けの時計などはありはしないので、携帯のアラームが私の朝練が終わる合図となっている。


刀を再度確認。どこにもぶつけてないので刃こぼれはない。初めて刀を握った時と比べれば大した成長とも思える。

刀を所定の位置に戻して、汗で濡れてしまった道場の床を念入りに雑巾で拭いて掃除する。

一通り拭き終わったら道場の一角に飾ってある神棚にお辞儀をし、挨拶をする。


「行ってきます」


道場を離れ、母屋の方にあるお風呂に直行。

かいた汗を洗い流し、さっぱりしたところでキッチンの方に向かう。


「……うーん、お米が無くなりそう」


祖父であるお師匠が亡くなって、6年。両親は幼い頃に交通事故で亡くなっている。


天涯孤独となって早くも6年だ。


6年も広い平家に住んでいたら流石に生活も慣れてしまう。

無駄に広い古民家だから、家事が行き届いているとは言い切れない。

家事に時間を注げばそれだけ剣を振るう時間も減ってしまう。それは私にとって耐え難いことだ。


朝食を食べ終わり、放課後に買いに行くべき食料や消耗品などを軽くメモ書きして財布の中にしまう。制服に着替えてしまえばもうあとは学校に向けて家を出るだけ。


「さてと……」


毎日の習慣、数多くある部屋の一室に私は足を運ぶ。

そこには一つの仏壇がポツンと設置しており、昨日あげた線香の香りがまだ部屋に残っていた。

仏壇の前に座り、手を合わせて目を閉じる。


「行ってきます」


返事はない。もちろん、返事なんてされても困るだけだが、日課となっているこの習慣を変えるつもりもない。


家を出ると朝方と比べてだいぶ暖かい空気がふんわりと身体を包み込む。


今日は終業式。明日からは春休み。


少し面倒な学校が休みに入れば剣を振れる天国のような毎日が待っている。

すこし頬を緩ませつつ、この一年で慣れてしまった通学路へと足を運んだ。


軽い足取りで学校へ向かう。

ふと空を見上げればそこにはゆったりと漂う雲。

自由にまったりと進んでいる雲を見ていると羨ましくも思った時期はあったが今思えばそれほど羨ましくない。

優雅で自由はいいと思うが、私はそんなことより剣が振りたい。


あぁ、振りたい。法律と世間が許してくれるなら剣を振りながら登校したい。


そんなアホなことを考えたせいか、朝ご飯の糖分が十分に脳に行き届いたからか、私はかなりぼーっとしていた。


そう、かなり、ぼーっとしてしまったのだ。


「危ない!!」


「え?」


咄嗟に前を向けばそこには視界いっぱいに広がる茶色い棒状の物体。


え?鉄骨?なにこれまって


私の人生で最後に聞いた音はグシャッという何かが潰れた音。

いや、ほんと、前は見て歩こう。

私は心にしっかりと刻み込んで意識を失った。













剣が振りたい。

ずっと剣を振り続ける人生を歩みたい。


そんなことを初めて願ったのはお師匠(おじいちゃん)が亡くなってからちょっとしてからだったと思う。

辛いことも嫌なことも剣を振れば全部忘れる。

全てを剣に注げてる感覚が私を満たしてくれていた。


でも、現状はそれを許してくれない。


なぜならば、私の手は……赤子だからだ。


「うーあー」


なんてこった。こんなことあり得るのだろうか。

転生?生まれ変わり?よく分からないがそういったものと理解するのに数ヶ月かかった気がする。

視界がはっきりとして、自分の手が自分の手だと認識できて初めて私は生まれ変わったのだと実感できた。


んまぁそんなことは些細なこと……ではないが気にする必要はない。

死んだ身だ。生まれ変わったのはそれはそれで良いじゃないか。時間はかかるが成長すれば剣は振れる。損はない。


「※※※※※※〜」


「うー」


まぁ問題は多い。

赤ん坊になってしまったことは時間はかかったが納得もしたし諦めもついた。

幸いと言ってもおかしいが、私には友人と呼べる存在も家族と呼べる存在もいない。

なんだか虚しく悲しくなってしまうが剣しか見てこなかった私には友人はできないし家族とは死別。お師匠の遺産は遠い親戚筋が引き取るだろう。知らんけど。


確認しようがない前世のことなんてとりあえず忘れて問題は現状だ。


「※※※〜?※※※?」


「あー」


言葉が分からない。

いや、マジで聞き取れない。

最初は英語?中国語?と知っている外国語か?と必死に聞き取ろうとしたが、残念ながら私の知る言語体系ではない。

いや、そもそも私は勉強できない。英語なんて常に赤点ギリギリ。日本語であるはずの現代文ですら平均点を越したことは一度たりともない。


そんな私が聞いたこともない言語を習得するってできるの?無理じゃない?いや不可能だって。

日本語はヤバいムリヤバいを言ってればなんとか解決するがそんな単純な言語でもなさそう……というのすらわからない。


もう一つ、悩める問題がある。


それは私を抱き上げて眩しい笑みを浮かべる女性に関してだ。

いや、普通……というかめっちゃ美人。鼻も高く目が大きくサラサラとした髪の毛……まさにハリウッド級の美人と言っても良いのだが……耳長い。

何を言ってるかわからないかもしれないがマジでほんとに耳が長いのだ。

先っちょがとんがってる。


母(仮定)の耳が長い、となれば必然的に……


「※※※〜!※※※※※?※※※※※※!」


隣に立って満面の笑みを浮かべる父(仮定)の耳も長い。

なんとなく父の耳に触れようと手を伸ばすと何故が自分の意思とは関係なしにぎゅっと掴んでしまった。


「※※※※※〜!!」


「※※※※」


おっと失礼。これは把握反射と呼ばれる赤ん坊の原始反射の一つだ。保健の授業で習った気がする。


私には制御できぬのだよ。すまぬ父(仮)


とにかくその、なんていうか、そう、うん。どーみてもエルフですね。


つまり、この世界は前世の世界とは違う世界……異世界ということ。


私は、何故か異世界でエルフとして転生してしまったようだ。





裏設定的な補足説明的なやつ



主人公の目の前でトラックが事故ってそのトラックに積んでいた鉄骨が顔面に直撃します。即死でした。


名前は小野穂乃果。帰宅部。剣を振るのが好きだが剣道部には入らなかった。ルールがある競技は苦手。

性格はかなり楽観的。エルフになり、長い寿命はその楽観主義を加速させた。

剣ばっかり振っていたので友達はいない悲しいぼっち。コミュ症ではない。ただ敬語は苦手。

主人公の前世の名前は多分今後も出てこないのでここで出すという暴挙。



後書きには書ききれなかった設定や情報を小出しにしていこうと思います。

設定に齟齬や矛盾が生まれたら修正する可能性があるのでその時は後書きで報告いたします。

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