8話
side 雫
「冬夜君と竜也君が魔核発現をやっているので、朱音ちゃんに探索者レクチャー実践編をします」
「よろしくお願いします」
「はい、まずね加護タイプの人はスキルに慣れて、理解しなくちゃダメなの。
ファイアアローなら発動させると、直ぐに飛んで行くんだけど。慣れると多少の間、溜めておいて発射のタイミングがずらせたり。2本とかに増やせるの」
朱音ちゃんは真剣に聞いていて頷いていた。
「あとは魔法やスキルの使用量の把握、これが出来ないと長時間の探索ができません」
「どうやって調べるの?」
「倒れるまで使用するの、倒れるまで使うとしんどいよ、本当に」
しばらく歩いているとスライムが5匹いた、動きは鈍いので魔法で倒せば大変楽なのです。
朱音ちゃんに目で合図し倒させる。天井や壁からの奇襲が無ければタダの的ですね。
「そうそう、加護タイプって戦闘回数よりも、強敵を倒す方が上がりやすいそうです。ただレベルアップ直後って感覚と身体能力に差が出て困るそうです」
2人で歩きながらスライムを焼いては魔石を拾いを繰り返していると、朱音ちゃんは頭を抑えてしゃがむこむ。
「大丈夫?」
「頭が痛くて気分が悪い」
「それがね、魔力が減った状態。私の体感だと3割位まで減るとなるの、しばらく休憩しようか」
少し休んだ後、冬夜君の所に戻ることにした。
side 冬夜
疲労で蹲っている竜也へ魔石を放り投げる。
「竜也、お祝いだ」
「魔石?」
「魔核は魔力で育つ、裏技だが属性魔石から魔力を吸収出来る。Cランク魔石だからキクぞ〜」
「マジか、どうやるんだ?」
「魔石を砕いて、魔核に魔力を集めるイメージだ、掃除機で吸うイメージでもいいぞ」
そう言いながらハンマーを渡す。竜也は魔石を右手で持ちハンマーで砕き吸収を始める。
「ぐっ、ガァァ、、、」
魔核が青白く輝き、2本線が腕の半ばまで伸びる。一気に魔紋が伸びると、熱い何かが差し込まれる感覚があり結構辛い。それが1度に2本、強烈な痛みだと思われる。
「キクだろ」
「キキ過ぎだぜ、腕が燃えたかと思ったぜ」
「まあ、これで次のステップに行ける。最初は身体強化魔法だ。魔核に魔力を集め魔紋の1本へ流し、そこから体内全体に循環させる、それを維持する事で完成だ」
「むっ、難しいぞこれ」
「練習あるのみだ、慣れてきたら歩いたり飛んだりしながら練習だ」
練習の様子を見ていると、雫達が戻ってきた。
「冬夜君、戻ったよ」
「ああ、おかえり。こっちは順調だよ、そっちはどうだった?」
「こっちも順調だけど、朱音ちゃんの魔力が限界そうだから戻ってきちゃた」
「魔力ポーションは持ってなかった?」
「下位は持ってなかったよ、使う事ないから」
「朱音、これ渡すから飲んどきなよ」
下位の魔力ポーションを3本渡す。
「ありがとう、でも貰っていいの?」
「気にせず貰ってくれ、あまり物だから」
「それで竜也は何をしてるの?」
「身体強化の練習中だけど、竜也、スライム狩りに行こうぜっと、その前に握力測ろう」
「なんで握力なの?」
朱音が不思議そうに聞いてきた。答えようとすると雫が先に答える。
「あのね、魔核タイプは少しずつ強化されて行くから体感しずらいの、だから測り易い握力なんかで成長を確認するの。
逆に加護タイプはレベルアップで体感出来るほど変わるから、しなくていいの」
竜也に握力計を渡し測定する49キロ、結構あるな体格もいいし。俺は筋肉があまり太くならずマッチョになれなかった。
それからスライム狩りに行く。
スライムを見つけ駆け出す、核を目掛けて槍を繰り出すが僅かに逸れる。素早く引き戻し、もう一度刺して倒す。
竜也は槍術スキルを失いアシストのない状態だが、懸命に槍を使い倒して行く。
「倒した後にじんわり温かくなるのは?」
「あぁ〜、それはね魔力が体に入ってきてるの」
「これが魔核タイプの成長か、魔核に魔力を吸わせるのと大分違うな」
雫がびっくりした顔でこちらを見てきた。
「冬夜君、アレやったの?…… どのランクでやったの?」
「水属性のCランク」
「…… うわぁ〜、信じられない。竜也は大丈夫?凄く痛かったでしょ」
「腕が燃えたかと思ったぜ、だけど2本入った」
そう言って竜也は魔核に魔力を込めて、魔核と魔紋を浮かび上がらせる。
「わぁ、綺麗」
いいだろと朱音に見せていた。確かに浮かび上がる魔紋は綺麗だよな。
しばらく、2人が狩るのを見ていた。時折、雫のアドバイスが入り修正して行く。まだまだ甘いが初心者なのでこんな物だろう。
19時を過ぎたので、そろそろ帰ろかと告げた時、朱音が蹲る。
「どうした、魔力不足か?」
火照った顔でこちらを見つめ。
「体が熱いの、何かが湧き上がる感じ、、、あぁん」
妙に艶っぽくて目を逸らすと、雫がこちらを見ていて頬を膨らませていた。
雫に弁解をし早口でレベルアップだと朱音に告げる。
朱音は落ち着いてきたのか、軽く跳ねたり腕を振っていた。
「これがレベルアップ、体が軽い」
少しの間、短剣の素振りやジャンプなどをさせ身体能力と感覚のすり合わせを行ってからダンジョンを後にした。
ちなみに竜也は帰りに握力測定をし50キロになっていた。