7話
竜也を家まで送り、クラン立ち上げの手続きの為に精霊洞の協会に来た。カウンターには20半ばの清楚そうな女性が座っており、こちらに気付いたのか会釈をしてきた。
「ようこそ探索者協会 精霊洞支部へ、今日はどの様な御用でしょうか」
その女性の対応に感心した、海外では良く子供扱いされ軽く見られる事もよくあった。実際に16のガキなので文句もいえないが、気分の良いものではなかった。
「クラン立ち上げの手続きをお願いします」
「では、こちらの書類に記入をお願いします。ご一緒に探索者証の確認をさせていただきます」
雫と一緒に記入を始める。
「冬夜君、大変だよ」
「どうした?」
「クラン名どうしよう、考えてないよ?」
2人でしばらく相談する。はっとした顔でこちらを見つめてくる。
「私達といえば、これじゃない?」
と言いながら左手の薬指を指す。
「そうだね、それで行こかクラン名『エンゲージ』と」
書類と探索者証を持ってカウンターに再び行き彼女に渡した、書類を確認し探索者証を確認して顔を強張らせた。
「国際Bランクの霧崎冬夜様で宜しいでしょうか?」
「はい、そうですが。何か不備がありましたか?」
「いえ問題はございません、この度はクラン『エンゲージ』設立おめでとう御座います。メンバーの募集などあれば紹介などのサービスもござます。ご利用なさいますか?」
「今は結構です」
「かしこまりました、こちらに規則やサービスをまとめた冊子になっております。本日は新見翠が対応させて頂きました」
最後に挨拶をしてカウンターを離れる。
たった2人のクランだが立ち上げた、明日には竜也を入れ何処かのダンジョンで訓練開始だ。
1歩目を踏み出すと思うと胸の奥に火が灯ったのを感じた。
自宅で食事をしながら雫と相談する。
「近くにFかGランクのダンジョンってある?」
「うーん、確か隣町にFのゴブリンとGのスライムがあったと思うよ」
「人型はまだ早いな、明日は竜也を連れてスライム狩りだ」
「はーい、朱音ちゃんはどうするの?」
「一緒でもいいよ、加護タイプでも狩らないといけないし。
学院のパーティとはいえ、パーティには違いないし」
朱音はどうなんだろう、高ランクに成りたそうではあるが熱意にかける様に感じた。
まあ、ダメならダメでも良いかな、無理強いするつもりも無いし。
生産系の高位加護持ちが欲しいな、などと妄想しながら夜は更けていった。
次の日の放課後、スライムダンジョンへと来ていた。
4人で入場し歩きながらレクチャーして行く。
「まずは朱音、持っているスキルは火魔法と回復魔法だっけ」
「そだよ」
「まずはスキルに意識を向けると、使用方法がわかると思う。次に使用してみて慣れることだ。使用していて体調が少しでもおかしい時は魔力不足だ」
「竜也なんだけど、戦闘スタイルはどんなのが良い?」
「槍メインで前衛が希望だな」
「身体能力アップと属性エンチャントが優先か、魔核位置は右手で良いかな」
特殊加工されたガントレットを渡し付けさせ、手の甲に水属性の魔石をはめる。
「竜也、これから魔核を発現させる。魔力の流れは感じられるか?」
「ああ、分かるこれでも水魔法のスキル持ちだぜ」
「そのガントレットは手から魔力弾が撃てるマジックアイテムで、手に魔力が集まるそれを発射せずに止めて、回転させ圧縮を続ける。そうすれば魔核が出来るから頑張れ」
始めは溜めれなくて発射してしまっていたが数回で溜めれる様になり、1時間後には回転圧縮まで出来る様になった。
「おーし、もう少しだ頑張れー」
竜也は真剣な表情で汗を流しながら集中していた。
20分後、甲に付けていた魔石が砕けて竜也が呻く。それ見て頬が弛む。近づきガントレットを外す、手の甲には青白く輝く魔核が見えた。
「もういい、魔力を止めるんだ」
床に大の字で寝転び、やり切った顔でこちらを見て来た。
「ようこそこちら側へ」