追憶 1
私は小学校に上がる頃に加護を授かった、父様と母様は喜んでくれました。
薬神の加護、薬の神さまから授かったスキルは2つ、薬の調合と神酒作製。前者はそれなりに持っている人がいるのですが、後者はユニークスキルで聞いたこともありませんでした。
神酒作成と聞いた父様は、母様と私に絶対に口にしてはいけないと言い、どこかに連絡をしていました。
幼い私には理解できていませんでしたが、今なら理解できます。
薬神が作る神酒、伝説の飲み物ソーマやアンブロシア、効果も伝説の通りなら戦争が起きることでしょう。
父様は母様と私を連れ、逃げる様に引っ越しをしました。引っ越した先は父様の先輩であり遠縁の霧崎おじ様の隣でした。
おじ様は探索者をしておられ、加護とは別の力である魔核を持っておられました。
おじ様はおっしゃいました。
「君の加護は凄すぎて争いの元になる、だから加護を消そうと君のお父さんはここに来た。君はどうしたい?」
「加護が消えたら、父様たちと一緒に入れますか?」
「ああ、一緒にいれるよ」
「では、お願いします」
私は加護を消すことをおじ様にお願いをしました。それからおじ様は準備に数日をかけました。
加護を消す日に私は運命の出会いが待っていました。
おじ様に連れられ一人の男の子が現れました。
「初めまして、僕は冬夜よろしく」
男の子は冬夜君といい、静かに挨拶をしました。
冬夜君は私の知っている男の子とは違い、とても大人しく物静かで人を寄せ付けない雰囲気を持っていました。
おじ様は冬夜君に幾つか指示をしていました。冬夜君は私の側に来て左手をそっと取り、私に話しかけます。
「手に触れてごめんね、心配しなくても大丈夫、不思議な感覚があるかも知れないけど」
私は手を触れられ、胸が高鳴り頬が赤くなるのを感じました。
冬夜君は両手で私の左手を挟み、静かに瞑想を始めました。おじ様が指示を出して冬夜君が実行する様です。
「冬夜、1、2核で循環、3核で固定、固定場所は雫ちゃんの手に」
冬夜君に挟まれた左手が次第に熱くなっていき、私は声をあげてしまいました。そんな私を宥めるように冬夜君は優しく声をかけてくれました。
「痛くしてごめんね、もう少しで終わるから頑張って」
左手から熱い何かが流れ込み体中を駆け巡る、冬夜君は汗を流しながら必死に集中しており、その姿に勇気付けられ私も必死に耐えました。
どの位時間が経ったのか分かりませんでしたが、ふと気付くと加護を感じられなくなり、代わりに左手に暖かい何かを感じました。
「終わったよ、どこか痛くない?」
汗をかきながらも、私を労るようにふんわりとした笑顔を浮かべる冬夜君に見つめられ、トクントクンと胸が高鳴りました。
「は、はいぃ、だいじょうです」
「雫ちゃん、明日から冬夜に魔核の扱いを教わってね。おじさんを時間がある時は教えるから」
こうして冬夜君との時間が始まりました。