2話
side 雫
私は職員室まで冬夜君を送り、教室へ向かう。
教室に入ると親友の新見朱音が声をかけて来た。
「おはよう、朝から見せつけてくれるねぇ。話には聞いてたけど、想像してたよりイケメンだった」
「ダメだよ朱音、好きになっちゃ」
「ならないわよ、雫と取り合いしても勝てる気しないから。それより周りの子達が気になってしょうがないみたいだけど?」
私は自分の容姿が良く男性を惹きつける事を理解しているが、朱音だって私に負けていない。艶やかな赤髪にパッチリとした愛らしい瞳、柔らかく大きな胸、しなやかなボディラインは思わず抱き締めたくなる。
んっ、思わず思考が外れてしまったわ。
「いいわよ、周りが「誰だよアイツは!」・・・」
剣城雅也が憤慨しながら会話に割り込んできた。
「雫は俺の彼女だろ!なのに他の男と腕を組んで登校して来るなんて、どうゆう事だよ!?」
私には言っている事が理解できなかった。
「こちらが聞きたいわ、いつ私がアナタの彼女になったの?」
「いつも小夜に言っているじゃないか『私は貴女のお義姉さんになるの、いつでも頼ってね』って、だからオレと結ばれるんだろ?」
私はようやく理解した、何故この男が馴れ馴れしく私に接して来たのかを。吐き気がしてくる。冬夜君の全てが私の物である様に、私の全てが冬夜君の物なのに。
気持ち悪い、気持ち悪い、キモチ悪い、キモチワルイ、何かに大切な物を穢され様で殺意が湧き上がる。
「いいわ、この際だからハッキリさせてあげます。
小夜ちゃんの兄は今朝一緒だった彼、霧崎冬夜君よ。そして私の婚約者。
それを…… もういいわ消してしまいましょう。」
私は右手にある魔核へ魔力を流す。男が何か喚いているが知ったことか、このゴミを早く消さないと。
「雫ダメ、ダメだよ!」
朱音が抱きついて来た。柔らかくて心地よいけど、ちょっと待ってね。すぐに終わらせるから。
side 冬夜
真希先生の後について教室へ向かう、タイトスカートに包まれたヒップラインがとても良い。
教室へ近づくにつれ、言い争う声が聞こえる。次の瞬間よく知っている魔力が高まる。
「先生、様子がおかしいです。急ぎましょう」
急いで教室に入ると、魔力を高めた雫が朝の男を睨んでおり赤髪の女の子が必死に雫を抑えていた。
「何事だ!!」
真希先生が怒鳴るが雫は無視、あれは相当お怒りの模様。
あの状態は他人ではどうしようも無いなぁ。
俺は雫に近づき抱き締めようとしたが、赤髪の子がしがみついていて邪魔だった。しょうがないので二人まとめて抱き締め、雫の耳元で囁く。
「雫何があったの?俺にも教えてくれない?」
普段の雫ならば、ここまで怒ることは無い。だが婚約に関することだけはダメなのだ。
俺の声が届いた様で、ゆっくりと顔をこちら向けると口づけをして来た。軽く舌を絡ませてから口を離す。腕の中にいる赤髪の子は顔を赤くし固まっていたが気にしない。
「で、何があったの?」
「私は冬夜君の婚約者なのに、アイツが自分の彼女だと言ってくるの」
「わかった、それは後で俺が話をつけるよ。だから今は席に着こう、先生が困っている」
周りを見ると女子は顔を赤くしヒソヒソと話し、男子からは妬みの視線を向けられ。雅也からは殺意を向けられていた。
雫は頷くと席へ向かう、それを機にみんな席に着いた。
「先生、俺は廊下に出た方がいいですか?」
先生は、頭を掻き呆れた顔で答えた。
「もういい前に立ってろ、HRを始める」
挨拶と出席確認を終え、先生に自己紹介を求められる。
「この度、学院へ編入してきました霧崎冬夜です。海外での生活が長かったので戸惑う事もあると思いますが、よろしくお願いします」
「霧崎の席は後ろの九条の隣だ。授業中はイチャつくなよ!HRは終了だ解散」
そう言って真希先生は教室から出て行った。雫と話そうとしたがクラスメートに囲まれ質問攻めにあう。
「ねぇ、九条さんと婚約って本当?」
「ああ、本当だよ」
「海外って何処に住んでたの?」
「南米に3年、その後はヨーロッパに2年かな」
などと答えていると、雅也と数人の男女が不快そうに此方を見ながら話していた。