14話
横に一閃し目の前の3匹を斬り殺し、回り込んできたおにを蹴り飛ばす。
足元に散らばる無数の魔石、もう何体倒したのか判らない。向かって来る鬼を斬り殺し続ける。
ふっと敵の圧が弱まり、奥から通常の鬼より一回り大きく黒い鬼が出て来る。
上位種だ口角が上がり斬りかかる、ガンッと棍棒で受け止められる。
この程度なら止めれるか、そのまま身体を寄せ左手を相手の腹に当てゼロ距離で魔法を放つ。黒鬼の腹が弾け飛び、上半身と下半身に別れ消えて行く。
そこまで強くは無いな、そう思いながら大太刀を振い続ける。
数十分は経ったのだろうか、後ろから近づく気配に気がついた。
「冬夜君お待たせ、私も手伝うよ」
「雫ありがとう、後ろの方はどうなってる?」
「防衛線は構築完了で、今は左右で戦ってる。シオ姉はもう直ぐくるよ〜」
それを聞き俺は安堵した、倉本さんなら安心して任せられる。雫と紫苑が揃えばローテーションで休める。
「疲れてると思うけど、少し待ってね」
雫は左肩の魔核を起動させる、上腕から胸にかけて魔紋が浮かび上がる。頭上に大きな魔法陣が現れ、中から月光を思わせる銀髪と、見る者を惹きつける美貌、纏うトーガの上からも分かる肉欲的な体を持った女性が召喚される。
「あら、私の可愛い雫じゃない、どんな用で喚んだのかしら」
「冬夜君が疲れているから休ませてあげたいの、だから手伝って」
「あらあら、それはとても良い心掛けだわ。愛する夫のために力を振るう、とても素晴らしいわ。このアナト、チカラを貸しましょう」
喚ばれたアナトは、こちらを見てニッコリと微笑み鬼の群れに突撃して剣を振るう。一振りする度に10匹は斬り殺されていた。
雫も魔導鎧が緋く染まり高笑いをしながら大鎌を振るい敵を倒す。
「「あはははははっ」」
俺は肩をすくめ後ろ下がりヘルムを消し水を飲んだ後、頭に水を被る。5分程休みを取っていると紫苑が現れた。
「どうなっているの?」
紫苑に雫がアナトを喚んで交代したと話す、紫苑は片手で顔を覆い「あちゃー」と呟く。紫苑は雫に近づき交代を告げ戦いを始めた。そてを見てこの後の事を思うとため息が出た。
雫がこちらに近づきそのまま抱きついてくる、その目にはハートマークが浮かんでおり口づけをし舌を絡めてくる。
それを見たアナトは親指を立て消えて行く、しばらく口づけを続け雫から離れる。雫は「ふぅ」と息を整えてニッコリ笑い再び戦い始める。
俺もヘルムを被り戦いに混じる。
3時間後、敵もまばらになってきた頃に後方から誰かがやって来た。
「お疲れ様、敵が減って来たので反撃に出て5層まで一気に攻略するとの事です。合流までここをお願いします」
鬼達がいなくなった頃、倉本さん達中央部隊がやって来た。
「すまない、中央を任せてしまって」
「いえ、足止めのつもりが、思いの外やれてしまったので、あとは任せます」
倉本さんは苦笑いをし肩を叩いて先へと進んでいった。他のメンバーともグータッチをし後方に着き進んだ。
そこからは大きなトラブルも無く5層まで攻略し氾濫は終結した。
外へ出ると待機していた人達から歓声が上がる、俺たち3人はそっと離れ、人気の少ないところに座り込む。
「疲れたなぁ」
「そうね、シャワーも浴びたいけど眠りたいわ」
「私はお腹減ったよぉ〜」
コーヒーを取り出して3人で飲む、朝焼けが綺麗だなぁと思っていると竜也と朱音が駆け寄って来た。
朱音は雫に抱きつき泣き出し、竜也も俺の肩を叩きながら涙ぐんでいた。