11話
side 竜也
向かって来るグレーウルフに槍を繰り出す。胸部に刺さり絶命し黒い塵になり消える。魔力が流れ込んできて、ほんのり温かくなる。
ダンジョンに入る前に測った握力は60キロまで上がっていた。ゆっくりだが確かに身体能力は上昇していたし、3画目も途中まで伸びていた。
半年前に涼子は交通事故で左脚が使えなくなった。陸上部で体力をつけて将来は探索者になりたい、その夢が砕け落ち込む姿は見ていられなかった。
縋るように神社を巡り加護を求めたが、加護は与えられず更に落ち込んだ。
そんな時、冬夜に出会いポーションを譲り受け涼子の脚を治せた。その日は家族で泣いた。対価については家族には話していない。恩を返す為にアイツの力になるとだけ話した。
確実に強くなっている、その事実に口角が上がる。もっと強くなりたい、アイツが必要とし頼れる存在に。胸の奥に火が灯るのを感じた。
10匹のグレーウルフを見つけ、群れに突っ込み初撃で1匹を倒し、横凪でもう1匹を倒した。
後ろからファイアアローと弓で朱音が援護してくれた、矢は外れたがファイアアローはグレーウルフの眉間を捉え撃ち抜く。
覚えたての強化魔法で、さらに突撃し槍で刺すが深く刺さり過ぎて動きが止まる。そこに向かってきたグレーウルフを慌てて下から蹴り飛ばした。
次の瞬間、グレーウルフの首がもげて飛んで行く。グレーウルフ達とオレ達の動きが一瞬止まる。強化魔法ヤベー、こんなに強化さてるのか…… 。
side 冬夜
涼子ちゃんと休憩を挟みながらネズミ狩りをしていた。徐々に硬さも取れ、動きも良くなって来た。
「涼子ちゃんは、どんな探索者になりたいの?」
「前に動画で見たんですけど、雷神の加護を持った吾妻さんて方がやってた殴り魔導師になりたいです。
格闘技と魔法の融合で、格ゲーのキャラみたいカッコよく決めたいです」
分かります、地面殴ってエネルギーが噴き出したり、手から炎を出して決め台詞、カッコいいですよね。
「いいねっ、探索者は夢がないと」
「なれませんか?」
「大丈夫、お兄さんに任せなさい。竜也もそのタイプで育成中だからお揃いだね、しばらくは無理だけど変身も覚えさせる予定」
涼子ちゃんの瞳がキラキラとし興奮していた。変身系も好きだったとは。涼子ちゃんとは話が合いそうだ。
現在の主流になっている探索者は、甲冑を着込み剣や槍で斬り込み、後ろからローブを着た魔法使いが魔法で援護するRPGスタイル。これは加護により前衛型と後衛型に分かれてしまう為である。ハイブリッド型もあるがレアな為少数だ。
2人で話ながら狩りを続けていると、4人が戻って来た。朱音と竜也は汗と泥に塗れ、歩くのも辛そうだった。
「冬夜君、ただいま〜」
「おかえり、そっちはどうだった?」
「2人だけで3層入り口まで行けたよ〜」
「なかなかのモノでしたわ、竜也君は強化魔法を物に出来た様ですし」
竜也を見ると拳を突き出し、ニッと笑顔で答える。朱音も控えめに拳を突き出して笑っていた。
皆んなでダンジョンを出て、ばあちゃんの家に戻ると幸子さんが風呂へ案内してくれた。
ばあちゃんの家は旅館の様な風呂で、男女に分かれている。普段は小さめの内風呂を使用しているが来客あると、大浴場を使用する。
隣の女風呂から胸がどうとか、肌がどうとか色々聞こえて来て竜也が気まずそうにしていた。