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デビュタントがあるからと張り切る父と母とミアに押され気味に、あれこれ決められていく。
サイラス公爵邸のお茶会から戻って3ヶ月経つとデビュタント準備が始まった。
「そんなに張り切ったところで、家族ぐらいしか注目してないでしょう」と悪態をつけば「お嬢様は、フォトリーン王国一愛らしいので、最高の美しさで他を魅了せねばなりません!!」と、ミアが熱弁を振るった。
隣にいた父と母に助けを求めるも執事長を始めとした屋敷の者達がミアを後押しするものだから、一緒になって楽しく準備する側に回られてしまった。
16歳になった。
デビュタント1ヶ月前、最終調整に向けて、王都の屋敷で過ごしていた。
忙しい毎日を送っていると、母から「カイルがマーガレット嬢と婚約した」という話をされた。
カイルとマーガレット嬢が婚約した現実に理解が追いつかず、何度か確認してしまった。
サイラス様とマーガレット嬢の婚約ではなく……?
どうして……?
マーガレット嬢を見つめるサイラス様を思い出して、胸が締め付けられる。
「お嬢様、次はダンスのレッスンですよ!!」と、ミアの声が耳に響く。
考えている間もなく、次の予定が押し寄せてきた。
「シャーロットのエスコートは、ウィリアムの次男に頼んだから、安心しろ。」
それは、デビュタント2週間前の出来事だった。
驚きすぎて、持っていたカップを落としかける。
「え?お父様、今なんて?」
「あなた!お返事が来たのね!!あぁ、愛しいシャーロット、母は嬉しいです。」
動揺する私の横で、大層嬉しそうにはしゃぐ母にゆっくりと視線を移す。
「初恋の人にエスコートをしてもらいながら、デビュタントを迎える娘!!」
「お、お母様、お父様に言ったの!?」
目の前で、褒めてほしいとばかりの顔をした両親と目が合い、恥ずかしさでいっぱいになる。
まさか両親が裏でそんなことをしているなんて想像もしていなかった。
娘がその初恋の人に覚えられていない事実を知らない両親に、望みがないことを打ち明けておくべきだったかもしれないと頭を抱える。
それに、カイルとマーガレット嬢の婚約の件、サイラス様の想いを知っている私はどんな顔をして会えば良いのだろう。




