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自分の分の書類整理が終わり、ずっと疑問に思っていたことを聞こうと思った。
「ルカ。ひとつ聞いてもいいか?」
クラウスは、妹繋がりで気にかけているとして……
何故、ルカがシャーロット嬢を気にかけるのか考えてもその答えが見つけられずにいる。
「生徒会長として」の理由は浮かんだが、俺と同じで当たり障りない人間関係を築いているルカが1人の生徒を気にかけているのは珍しい。
俺の婚約者になったことで興味をもっているのだろうか?
それはそれで、なんだか複雑な思い……になりかけるが、「関係ない」と気持ちを切り替えた。
書類に目を向けたままだったルカがピタリと手を止める。
俺のことを真剣な顔で見つめながら「どうしようか」考えているようだ。
正直、こういう時はあまり答える気のないのを知っている。
諦めて「やっぱりなんでもない」と返せば、ルカはわざとらしく「気になるなー」と口元に手を持っていき、再び何かを考え始める。
「うーん、僕の分の書類も手伝ってくれるなら答えてあげる」
ルカの仕事量は会長ということもあり、俺達よりも多く、生徒会の役割は多岐に渡る。
生徒達の管理はもちろん、教師陣の補助、部活動の統制、寮の管理、イベントの企画・実行……と、まぁいわゆる雑用が多い。
あまりの忙しさゆえに避ける者もいるが、卒業後の進路に大きく関わってくるため、多くの生徒が応募してくる。
人が多ければ助かるので、成績が良く、学業との両立が可能な者なら簡単に入れる。
だが、生徒会長は別格だ。
前生徒会長はもちろん、教師や全生徒約3分の2の推薦状があって初めてなれる。
ルカは、高等部に進級して数ヶ月で生徒会長になった。
……と、まぁすごい奴ではあるんだが、外面に騙されてはいけない。
「……それは、生徒会長であるお前の仕事だろ。必要な文献を揃えるのは手伝ったし、どうせ手際がいいお前がやった方が早く終わる」
ルカの交換条件を即座に断れば拗ねたように「じゃぁ、質問には答えなーい」とそっぽを向かれた。
この、柔らかい雰囲気とTHE王子様の外見に何度惑わされたことか。
ルカの言う「手伝って」は「全部やっといて」が正解である。
もちろん、ルカの本性を知る者は少なく、学院内では所用でこの場にいない副会長と俺、クラウスが1番被害を被っている。
そして、ルカは解決が1番難しいところだけ渡してきて悩む相手を見るのを楽しむという何とも難儀な性格をしている。
「まったく、おい!ルカ!友達の質問くらい素直に答えてやれよ!」
見かねたクラウスが間に入れば、無邪気に笑うルカと目が合う。
いつになく楽しそうだ。
「ねぇ、テオ?その質問でこれから面白くなると思うんだ。手伝ってくれれば、その質問に答えてあげるよ?」
向かい側で「俺……お前のそうゆうところ直した方がいいと思う」とルカに引いているクラウスを無視して、俺は「分かった」とルカから書類を受け取るのだった。




