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「とても楽しそうな歓談が聞こえて来たのだけれど、まさか弟とシャーロット嬢とは驚いたなぁ」


当たり前のように同席するエイデンに(いぶか)しげな視線を送る。


「テオ……今の今まで、楽しそうにしていたのに僕がきた途端、その態度はないんじゃない?ね、シャーロット嬢?」

「エ、エイデン様、お久しぶりにございます」


驚いた様子のグランディナ嬢と慣れた様子で挨拶を交わすエイデンに疑問をもつ。


「……お2人は、初めてお会いしたのではないのですか?」


首を傾げていると、エイデンは盛大なため息をついた。


「テオ、シャーロット嬢は、カイルの従妹だ。お前も何度か会ったことがあるよ」


エイデンからの予想していない返答に、1人この状況から置いていかれた気分になる。


「……シャーロット嬢、すまない」


エイデンのよく分からない謝罪に、グランディナ嬢は気まずそうな顔をする。

隣で何か言いたそうなエイデンにイラつく。


「……なんですか?兄さん」

「我が弟ながら情けないと思っただけだ」

「はぁー…?それよりもグランディナ嬢がカイルの従妹とは、事実ですか?」


兄の嫌味に付き合っている暇はないが、確認すべきことがある。

グランディナ嬢は、一呼吸して真っ直ぐに俺を見据えて、口を開いた。

目がそらせなくなる。


「……そうです。エイデン様の友人であるクロフォード伯爵家のカイルは、私の従兄になります」


「違う」と言ってほしかったのに、上手くいかないものだ。

マーガレットの婚約者がカイルで、グランディナ嬢がカイルの従妹……俺は、初恋の人を奪ったアイツの従妹と婚約?

そんな馬鹿げた話あってたまるか。


「……何故、よりによって君なんだ!?この婚約はなかったことにしてくれ!!!」

「おい!テオ!!」


エイデンに呼び止められるが、俺はそれを無視して寮へ戻ることにした。






今思えば、俺は、この時もっと冷静であるべきだった。


それこそ、父の言う通り、一時の感情に任せて君の大切なデビュタントをぶち壊していい理由にはならないし、婚約に乗り気ではないといえ、君を傷つけていいはずがないのだから。

『公爵家の王子様』なんて所詮(しょせん)ハリボテだ。


だから、どんなに思い出そうとしてもこの時の君の表情は分からない。

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