戯れ言 妹、また手術する 心疾患兄妹編
「兄貴いるか!」
「誰がおっさんだ一コ下の愚妹。せめてノックしてから部屋入れ。ってか、お前入院中だろ」
パソコンの前に座る私は、椅子を回して妹と相対した。
「腹立って帰って来た」
「またかよ。今度は何があったんだ?」
「ペースメーカーまともに動いてないって」
「マジかよ。死ぬじゃん」
「うん。ヤバい」
「どうすんだよ。やり直しか?」
「ううん。もう心臓の作業は終わってるからそっちは良いって。でも、電池から電気が行ってないとかふざけるなって感じだよ。ああ、腹立つ!」
「あんだけ騒いで、それやった意味あんの?」
数ヶ月前、手術直前で大騒ぎしたあげく、婦長の策略でアイドルのコンサートとCDアルバムに釣られて手術した妹だったが、さすがに今回は生命の危機よりも怒りのボルテージのほうが高いようだ。
「無いから頭きてんの! 愚痴ぐらい聴いてよ」
「んなこと言ってもなぁ。結局どうすんだ? 電池代えるのか?」
「左も全然電気行ってない訳じゃ無いから、右にも電池入れて二つで心臓動かすって」
「ああ、そりゃ・・・怒るわな」
「もう、やりたくないよ兄貴」
うんざりと言った顔で妹は溜息を吐いた。
「前にも言ったけど、やんなきゃ死ぬぞ」
「んなん分かってるよ。うるさいなぁ。でもまた騙されるの嫌なんだけど。運動できるようになるとか、普通に生活できるとか言われてたのに」
「オヤジ(副医院長)や婦長も必死だったんだろ。娘みたいなもんだし、噓も方便だよ」
「もう、ふて腐れて寝る。手術なんてやってられるか!」
「人のベッドで寝るな馬鹿」
「っと、そう言えば兄貴何見てたの? エロサイト?」
「アホ、ゲームの新作チェック。テイ〇ズの新作出るって。まあ、出るの来年だしお前はたぶん・・・」
「ちょっと手術してくる!」
「ホント、重くて軽いなお前の命。前のめり過ぎて、生き急いでるようにしか見えないぞ」
「なんか、メチャ失礼なこと言われてる気がするけど、取りあえず、テイ〇ズ予約しといて」
「金はお前持ちだぞ」
「おk。あ、貸しておいたアビスやってみてね、名作だから。メガネ嫌いだけど」
そう言うと、妹は投げ出した荷物を纏め、まだ車の中にいる母と共に病院へ戻って行った。
本当に、切迫した命のやり取りに対し軽い兄妹だったと今でも思う。そして・・・・・・
(妹よ・・・すまない。アビスまだクリアしてない。ついでにメガネが何やらかしたかまだ知らない)