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14.追われる薬師様(1)

 毎晩のように宿でルーにほえられながらも、ターニャたちは、目指すエルドラへと辿り着いた。辿りついた場所は、いつもの通りの街の外れの山間の場所、一面草原である開けた場所だ。念のため、辺りをきょろりと確認した後、ターニャはふわりと見えない何かへと手を差し伸べた。その手の先から魔力が流れた瞬間、その場所には薬師の家が現れ出たのであった。


 「おうちってにょきにょきってはえるのねぇ。ここ、ぼくたちの、おうち?」


 カイリがぴょんこぴょんことターニャの周りを跳ねていた。ターニャは微笑ましい思いでカイリを見つめたところ、その横で、眉根を寄せて難しい顔のルーに気が付いた。そして何やらぶつぶつと呟いていた。


 「いや、普通、家が突然出てきた反応ってあーじゃねーよな?『何が起きたのだ?』とかなるよな?この脳天・・・いや、大らかなところはまるっとターニャだよな。うーん、緊迫感ねーんだよな。ここはオレ様がしっかりしねーと・・・」


 ターニャはカバンの中にあった飴玉をルーの視線から外れたところで、ひょいっと投げた。そして、それは見事にルーの頭にゴンっと当たった。



 「いってーな。なんだ、これ・・・?飴玉じゃねーかよ。おい、ターニャ。オレ様になんてことしてくれてんだ!」


 「え!?なんのこと?」


 「とぼけんじゃねーよ。飴玉なんてな、自然に降ってこねーんだよ。それに、これ!思いっきり、喉風邪用の薬じゃねーかよ。」


 ターニャはふぃっと視線を逸らすと、何事もなかったかのように、薬師の家へと歩き出した。ターニャが歩き出したことで、カイリもぴょんこぴょんこと跳ねたまま、楽し気に後をついていった。あとに残されたルーの悲痛な叫びは、二人の耳には届かず、風とともに消えていったのであった。


 「山脈避けるために、光の国に入ったのは、間違いだったんじゃねーかな。華の国側の治安が良くないとはいえ、後々のことを考えると、あっちのほうがよかった気がすんだよな。はぁ、オレ様一人だけが慎重派じゃねぇかよ・・・・ぬおぉぉ!腹の横の毛が薄くなってるじゃねーかー!!!!」




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 「・・・・ここと、ここ。・・・こちらもか。こちらは隠蔽しようとしているが、同じ用途だな。」


 手元の書類を指でも追いながら、都度その場所を指し、最後はピンと指ではじいた。

 リーディアへの早駆けを思いとどまらされた主君の男は、いつもと同じ執務室で調査結果を確認していた。


 「その通りです。5年以上前には一度たりとも寄進をされていなかったにもかかわらず、あの騒動の前から繋がりはじめ、現在ではかなり深いものだと。」


 報告するのは、背の低い、華奢な男だ。ただ、この主君の男や周りで護衛をしている騎士の体躯が抜きんでているため、そのように見えるだけであり、この国の一般で考えれば、普通と言える。また、特に目立った特徴もないため、他に紛れ、情報を得ることを得意としている。


 「聖教団か。」


 「はい。ただ、聖教団は表向き、白の魔力をもつ者達が貴賤問わず治癒などの治療を行うという、慈善団体です。裏向きは、まだ調べつくしてはおりませんが、前教主が就任して以後、きな臭い噂がいくつかあるようです。また、現教主に代替わりしてから、更にそれが強くなっています。」


 「前教主ということは、20年くらい前か?現教主が、5年前。なるほど、現教主の就任後から、寄進が増えたということは、やはり後ろ暗いところがありそうだ。徹底的に調べてくれ。」


 「かしこまりました。ああ、そういえば、つい近頃、辺境伯様が体調を崩されたのはご存じでしょうか?」


 「聞いてはおる。第一報はかなり危険な状態だということであったから、肝が冷えた。あの御仁のご助力が必要不可欠だからな。ただ、かなり順調に回復していると聞いて居るが、それがいかがした?」


 「聖教団が治療したと聞いております。」


 主君の男が眉根を寄せる。そしてしばらくの後、軽く右手を上げると、護衛の騎士が執務机の前へと動く。


 「見舞いを兼ねて辺境伯領へと向かう。明朝出発するので出立の準備を整えよ。」


 主君の男の指示に騎士は『はっ。』と短く答えると、すぐさま他の騎士へと指示を出す。にわかに執務室の中が慌ただしくなる。その様子をちらりと見遣り、主君の男は手元の書類へと目を戻す。明日の出立までに見ておくべき書類はまだ多い。人探しの方は4年近くかけて、それらしい女性がいたが消息不明と進捗があってないようなものだ。そして、処理しなければならない問題も山積みだ。この男には珍しく、軽い嘆息が漏れた。


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