1.幸せはカイリ
他の話が途中のままなのですが、どうしても書き始めたくなってしまいました。
可愛い子供が堪能できるようにしたいです。
「カイリ、ルー!」
少し目を離すと、視界から消えてしまうカイリを探すため、先ほど座り込んでいた方角へと呼びかける。小高くなった丘の向こうに微かな煌きが見えたところで、同じところから、「わん!」とルーの声がした。
ターニャは慌ててルーの声のした方角へと走った。
(今の煌きは・・・)
不安、焦りが押し寄せるが、とにかく今は、カイリを見つけることが先決だ。小高い丘まで辿りつくと、そこから下った花が咲き乱れる一角にカイリがちょこんと座り込んでいた。そして、カイリに寄り添うようにルーが寝そべっていた。一先ず、カイリが無事であったことにほっと息を吐いたターニャは、カイリの手元にある花に目を向け、目を見開いた。ただの白い花であったものが、黄金色の魔力に包まれていたのだ。
人の気配に気がついたカイリは振り返ると、そこにターニャを見つけ、菫色の美しい瞳を細め、にこりと微笑んだ。
「かーさま。しろいおはなきれーね。きらきらしてるのよ。」
愛らしい息子の微笑みに、一瞬、ほわりとした気持ちになったが、手元の花がターニャを現実に戻す。
(ここまで、薬草を摘みに来る人はいない。誰にも見られていないはず・・・・)
不安にドキドキする胸をおさえながら、辺りを見回し、カイリの元に走り寄る。自身とルーしかいないことにほっと安堵の息を漏らし、カイリをぎゅっと抱きしめる。
「かーさまぁ?」
「心配したのよ、カイリ。気がついたら丘の向こうまで行っているのだもの。お約束忘れてはだめでしょう?」
カイリは、ターニャに抱きしめられたまましょんぼりと肩を落とした。
「ごめんなさい、かーさま。とってもきれいなちょうちょがね、ひらひらってとんでたの。そしたらね、そのちょうちょがこのお花にとまって。つかまえようとしたら、お花がきらきらってしたのよ。ちょうちょさんすごいね。お花をきらきらにするちょうちょだったんだよ。」
しょんぼりしながら話し出したにもかかわらず、ちょうちょを思い出して興奮しだしたカイリは瞳をキラキラとさせて、ターニャを見つめた。誰にも見られていないことにほっとしたターニャは、カイリの頬に優しくキスをする。
「そうね、すごいちょうちょさんね。でも、どんなにきれいでも、これからは、お約束を忘れて遠くに行ってはだめよ。とっても心配したのよ。分かるわね、カイリ?」
「はい、かーさま。これからは、ちゃんとおやくそくまもります。・・・ルーもだよ?」
突然のとばっちりを受けたルーが不満そうに、「くぅーん。」と答え、ターニャとカイリはくすくすと笑った。
(この幸せは私の手で守り抜かなければ。)
ターニャは、カイリの菫色の瞳を見つめた。そして、その心の中には、カイリに似た面差しの美しい菫色の瞳の男が浮かび上がった。