7.『いざ迷宮へ』
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「頭強く打ったみたいだけど大丈夫そう?」
「いっつ……、ああ……助かったよ。ありがとう」
セシリアの手を借りてユウリは立ち上がる。そのついでに頭を摩りながら元気な彼女の姿を見てキメラの能力の影響で体調を崩していないことを確認して安心する。
「こちらこそ。ユウリに助けてもらえなかったらどうなってたか。ほとんど任せる形になっちゃったし、貴重な弾丸を使わせちゃってゴメンね」
「いやいや、初戦にしては上出来だよ。普通死人が出るんだぜ、あれ」
初見殺しで有名なキメラを死人を出さずに倒した、という実績はかなり大きい。
「でも銃弾は大丈夫なの? 銃声からして大分使ったよね? 節約しないといけないのに」
「心配ご無用。セシリアのおかげで十分節約できたよ」
九割はただの合金弾。トドメに使用した一発が《鉄甲銃》に使われる本来の銃弾だ。さすがに連発となると費用が嵩むため、普段は合金弾という、弾頭をただの鉄塊で作られた銃弾を使用している。本物を使用するのはその場の状況を見極めてからだ。
ユウリはキメラに叩き落とされたリボルバーを拾い上げる。
「そうなの? ホントに大丈夫なの?」
「心配しすぎだって。むしろ、あんなクソギミッククソモンスをこれっぽっちで討伐できて儲けもんだと思ってるよ。それもこれもセシリアのおかげだ」
クソって二回も言った……とぼそりとセシリア口から洩れる。
「でも、そっか。それなら良かった」
セシリアは安堵の息をついて安心した笑みを浮かべた。
銃弾が減ったことは深刻なものではない。それが伝わってよかった、とユウリは想いながら安心してリボルバーの破損がないかの点検を終えて懐のホルスターに収める。
「さて……」
気を取り直して今は喜びを分かち合おうではないか、とユウリは思う。
「それより見てみろよこの魔石! これなら一月は食い扶持気にせず暮らしていけるぜ!」
キメラの残骸、もとい塵を掻き分けて緑色の魔石を拾い、セシリアに見せる。
「わぁ、すごい大きい……私たち、これを持ってる魔物と戦ってたんだ」
セシリアは初めて見る大きな魔石に目を見開きながら触れる。
キメラは死ぬと塵と化す。素材となるものは特定の条件を除いて落とさないという赤字まっしぐらな魔物だが、大きな魔石だけは残していく。それが高値で売れる。
キメラ戦で出た損失を抑えることができれば黒字だ。今回はユウリの銃弾が十数発と魔道具と、もろもろ合わせても黒字である。
「今日は思いもよらない大収穫だったな。帰ったら山分けしよう」
「えっ、いいよ。全部ユウリの懐に入れて。今回は依頼同然で来てもらってるから、山分けの分は報酬の足しにしてもらえると――ってなにその顔!?」
口を開けて呆れているユウリは溜息交じりに口を開く。
「いや、なんでも……ただ。それは良くないなと俺は思う。自分では良かれと思ってやってるんだろうけど、貰って当然の権利を破棄するということは、ほかの冒険者に悪用されるからやめたほうがいい。よって、今回の戦闘で得たものは山分けな」
ユウリは報酬の配分はしっかりしておきたい。報酬の配分は冒険者同士で自己責任だ。一様、根づいたマナーこそあるものの、金のやり取りでの線引きは必要だ。しっかりと権利を主張しないと良いように奪われてしまう。
「ご、ゴメン。そのほうがいいかなって思っちゃって……」
あはは、と半笑いをするセシリア。
「いいさ。たまにそういう奴いるし、今回を機にやめればいいってだけさ。ほら、友達を探しにいくんだろ? さっさといこうぜ」
「うん。そうだね」
気持ちを切り替え、迷宮の裏口へと足を進めた。
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