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6.『銃声と決着』

アクセスありがとうございます。


 つかさずユウリは魔道具二つを取り出し、【死を運ぶ狙撃者】というスリングショットに特殊な火薬玉を引っかけて飛ばした。


 ヒュゥゥ、っと口笛のような音を鳴らしながら火薬玉が着弾。被弾した直後、爆発した。


「ギィィィィィ!」


 ダイナマイトを上回る威力の爆発が襲い、キメラは堪らず苦痛の声を上げる。


「魔法が効かなければ物理を使えばいいのよ。ハハッ」


 ユウリは不敵に笑いながら裏声で言う。そして、一発、二発とスリングショットで火薬玉を飛ばして何度も爆撃する。相手が弱まるまで何度も。


 その甲斐あってか異能の力が弱まり、動けるようになったセシリアは振り子のように身体を動かし、キメラの関節を斬り捨て脱出する。


 だが、キメラは諦めずもう片方の手で空中に投げ出されたセシリアを掴もうとする。それを確認したユウリは即座に魔法を行使する。


「束ねる光糸の手。〈アストラルハンド〉――〈グラップ(つかめ)〉ッ!」


 かざした手に巻きつくようにして現れる無数の光の糸。その光糸は束となって手の形を作り、セシリアに向かって飛び出す。弾丸の如く伸びた光糸の手は一瞬で彼女に届き、糸は解けて体に撒きつく。ユウリは光糸を握り、一気に引き寄せた。


 飛んでくるセシリアをユウリは体を張って優しく受け止める。


「おかえり」

「えっ、あ、ただいま?」


 難を逃れたセシリアはユウリの元へ無事に帰還した。


「今のは?」

「特殊な火薬玉だ。そのままだと爆発しないが、赤く変色するまで魔力を流し込んでから手から離したり、衝撃を与えたりすると爆発する魔道具だ」


 じゃなくて……、となにか言いかけたセシリアを下ろし、こちらに振り向いたキメラの顔面にもう一発、特殊な火薬玉で爆撃する。


 さすがのキメラも見向きもしなかった術師のユウリに敵意を向けた。


「セシリアは少しだけ休んでてくれ。俺がなんとかするから」

「え、でも――」

「おーい葉っぱぁぁぁぁ! こっちだ!」 


 セシリアがなにか言う前にユウリは手を鳴らしながら移動を始める。さすがの害悪行為にヘイトが溜まったことでキメラもセシリアを無視して彼を追う。


「来た来た」


 ユウリは狭い道を選びながらスリングショットで火薬玉を飛ばす。だが、さすがのキメラも学習したようで飛翔する火薬玉を避ける。


 あわよくばと思っていたが、キメラにそんな甘い考えが通用することはなかった。

 今度は入り組んだ道へと入り込み、キメラの死角へと身を置く。そして、準備をする。


「――〈グラップ〉ッ!」


 ユウリの視界にキメラが入った瞬間、脚に光糸を巻きつけて転倒させる。すぐさまスリングショットで火薬玉で三発ほど爆撃する。


「ギィ、ギィ、ィィィ」


 黒煙から姿を現したキメラはあまり効果がないように見えた。


「あら? さっきより効いてなくね?」


 もしかして同じ攻撃は徐々に効かなくなっていくのか? とユウリは思いながら役目を果たした魔道具のスリングショットを懐にしまう。


「なら、《鉄甲銃》は耐えられるのかな?」


 ユウリは独り言を呟きながら懐から《鉄甲銃》を取り出す。


 M&WR8。357マグナムリボルバーを近代化した銃をベースに作られた銃。装弾数八発の357マグナム弾を使用。ダブルアクション採用。黒色のモデルでアンダーレールとマウントレールを備えている。ユウリ専用にカスタムしてある。


 ユウリは不敵に笑って地を蹴り、キメラの顔面を踏み台に跳び越えて開けた場所に出る。

 キメラも建物を破壊しながらそれに続く。


「――〈パラライズ〉ッ!」


 振り向き様にユウリは相手を麻痺させる状態異常魔法を行使する。ピリッと空気をひりつかせて指定したキメラを麻痺させる。


「多少は効くのか」


 完全に身動きを止めることはできなかったが、魔法耐性のあるほうのキメラには十分だ。

 ユウリは銃を構え、体中を痙攣させながら近づくキメラに発砲する。


 バン、バン、バン、バンと四発撃ち込み、距離を取りつつまた四発と撃ち込む。


 キメラの装甲は思ったより硬く、銃痕が残る程度。まるで射撃用の鉄板を打つような音とともに弾丸の反動でよろめくだけで執念深く近づいてくる。


「………………」


 ユウリは弾切れになった銃の銃身を上げ、シリンダーを開き、自重落下でカラ薬莢を排出し、銃身を下に下げ、三、三、二と弾を装填し、シリンダーを戻す。


「ギャァァァァァァァァ!」


 麻痺効果が切れたキメラは折り畳んでいた鎌を出し、天高く振り上げて飛び込んでくる。

 ユウリは臆することなく、真っ向から空中のキメラに向かって発砲し、鎌の攻撃を避ける。そして、地面に突き刺さった鎌を踏み台にキメラを飛び越え、がら空きになった背中に一点集中で全弾を撃ち込んだ。


 ピキッと、装甲が割れる音がした。


「ギャァァァァァァァァァァッ!?」


 悲痛の叫びを上げて、舞い上がった砂煙の中へと消えるキメラ。その姿をガン見しながらユウリはシリンダーを開放し、カラ薬莢を排出する。


「ギィ、ギィィィィィィィィィィッ!」


 弾丸の装填中、羽音が土煙とともに強風が吹き荒れ、反射的に顔を腕で隠す。

 それがいけなかった。視界が遮られた瞬間、タイミングを見計らったかのように土煙から出てきたキメラは鎌を振る。

 ユウリは身を引くが、装填中の銃を叩き落とされてしまう。


「お――」


 銃に意識が集中していた、その油断が仇となった。

 キメラは鎌を折り畳み、関節部分から出した無数の糸でユウリの足を絡めとられる。


 宙吊りにされたユウリは身動きが取れなくなった。そして、目の前のキメラの固有能力で全身の力が吸い取られ、手も足も出なくなるという絶体絶命の状況だ。


 だが、ユウリは腕を組んで、勝ち誇ったかのような表情のキメラを見据える。そして、ふっと「勝ったな」と言いながら笑う。


「触れられたらおしまい、と思ったけど、事前に付与された魔法に関しては無効なんだな。事前に準備しといてよかった」


 防御補助魔法〈バリアコーティング〉。魔力の薄い膜で全身の表面を覆い、対象に与える影響を弾く魔法だ。似たような魔法だが、セシリアに使った魔法と違うのは内か外、処方か予防という一点だけだ。


 ユウリは(くう)から一丁の銃を取り出す。なにもないところから手品のように。

 S&WM500という大型リボルバーがベースの銃。五〇経口マグナム弾使用。シングルアクション採用。装弾数五発。ショートバレル。ユウリ専用に改良した銃だ。

 ざっくりと、銀色に輝く大型のゴツイリボルバーと覚えとくといい。


「チェックメイト」


 撃鉄を引き起こし、引き金を引く。

 ズガァン、と轟音とともにキメラの頭部は吹っ飛び、赤い鮮血が飛び散る。

 死んだ、とユウリは思ったが、キメラが虫型ということもあって微かに動く。


「ええ、しぶと」


 ユウリは悪態をついて、撃鉄を引き起こそうとした瞬間、


「やああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」


 キメラの背後を取ったセシリアが胴体を斬り捨て、トドメを刺した。

 瞬く間にキメラは塵と化し、その場には血痕と、大きな魔石だけが残った。

 そして、宙吊りにされていたユウリは頭から落ちた。


読んでくださりありがとうございます。

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