18. 爆速昇級RTAデスマーチ③
炎上で程よく焼き目がついて落ち着いた頃の配信。
ユウリたちは依頼で〝特地〟指定の岩山にて〝ベニアシュラ〟という一部が硬い甲殻に覆われた鮮やかな赤毛の体毛が特徴的な巨大な熊の討伐に来ていた。
食欲旺盛で獰猛。二本足で器用に立ち、堅い殻に覆われた両腕と鋭い爪を利用して戦う。クマの魔物の中で唯一対人戦を思わせるような戦いを体験できる珍しい熊だ。
ユウリたちが戦うベニアシュラは冒険者を何度も返り討ちにしてきた歴戦個体だ。戦闘経験が豊富なほどベニアシュラは脅威になる。
そんな熊の魔物と、セシリアは真正面から戦っていた。
ベニアシュラの大振りの攻撃をセシリアは真正面から受け止める。
ガチン、と金属音を思わせる音が響く。セシリアは自分よりも何倍もある体重に押し潰されてもおかしくない一撃を受けながらも、彼女は踏みこみ、押し切った。
「せあっ!」
そこからセシリアの猛攻が続く。どれだけ恐れられている熊でもセシリアの猛攻には苦戦している様子だった。次々と繰り出される剣技にベニアシュラは防戦一方。得意とする大振りの攻撃を出す隙さえ与えない。
火花が散り、「もういっちょ!」とセシリアの一声とともに振るわれた一撃がベニアシュラの堅い両腕を砕いた。硬い鎧から露になった本来の肉質。ベニアシュラはもう引けない状況に置かれて怒りの咆哮を上げ、片腕をセシリアに振り上げた。
「――〈アストラルハンド〉ッ! 〈グラップ〉ッ!」
振り上げられた大熊の腕を、ユウリは何本も束ねた魔法の光糸で巻き取り、思いきり引っぱって体勢を崩した。地面に倒れたベニアシュラは起き上がろうとした瞬間、ラリアが〈フォトンソード〉という光の魔法を行使し、左手に顕現した光剣を胴体に突き刺した。
苦悶の方向を上げるベニアシュラ。振り払わんと大熊の腕がラリアに振るわれ、彼女は咄嗟に〈バリア〉という防御魔法で、攻撃ごとベニアシュラを展開する勢いを利用して殴打した。転がっていくベニアシュラ。その先には剣を構えたセシリアが待機していた。
「これで終わり!」
セシリアが放った一閃の一撃がベニアシュラの命を絶った。
「ふぅ、討伐完了!」
一息ついたセシリアは魔導具のレンズに清々しい笑顔を向けてそう言った。
【現在の等級】
ユウリ・ランディア B級 → B級。
ラリア・アートンポット C級 → Ⅽ級。
セシリア・エルフィルロス D級 → C級。
――
またあるとき。
廃墟に現れた〝異名持ち〟の死霊系の魔物、リッチィの討伐依頼。本来はC級の依頼で受けたのだが、そのリッチィの脅威度は測定ミス。完全にA級案件だった。
リッチィの強力な魔法による猛攻を受けるユウリたち。
その前線に立つのは〈魔法術師〉のラリア。防御魔法の〈バリア〉を展開して、澄ました顔でその猛攻を防いだ。リッチィが次の魔法を行使するよりも先に、ラリアの土魔法の〈ストーンキャノン〉がリッチィの胴体を貫通した。
「終わりです」
リッチィの頭部に〈ストーンキャノン〉が突き刺さり、消滅した。
パーティメンバーいるのにも関わらず、ラリア単独で難なく撃破。その間にも、ラリアはユウリの支援魔法を受けていない。完全に自分の実力のみでA級相当を撃破したのだ。
「すごいよ、ラリア! あんな強敵を一人で倒すなんて!」
セシリアに抱き着かれ、配信中ということもあってラリアは照れた顔を浮かべた。そんな彼女にユウリも「おつかれさん」と労いの言葉をかけた。
ラリアは大活躍して配信は盛り上がったが、同時にユウリの存在意義に疑問視するコメントがついたのは言うまでもない。
【現在の等級】
ユウリ・ランディア B級 → B級。
ラリア・アートンポット C級 → B級。
セシリア・エルフィルロス Ⅽ級 → Ⅽ級。
またあるときは。
薬草採取なのだが、コシコシロネの採取は困難と珍しくC級の依頼だった。
「うぅ……、写真を見てもこれがそうなのかわかんない……」
「こ、これは長丁場になりそうですね」
薬草採取に苦戦するセシリアとラリアだが、
「コシコシロネの採取終わり。次」
ユウリによって一瞬で依頼が達成された。そして、ユウリはそのまま次の依頼に向かった。そのユウリの後姿を二人は啞然とした表情で見送った。
――
またあるときは。
「あれ? ユウリどこ?」
「まったく。目を離すとすぐどこかにいってしまいますね」
ラリアは呆れて溜息をついた。危険地帯にいるのにも関わらず、ユウリは自由に行動しており、連携という文字がないときはない。
コメント欄も、女性二人を残してどっかいくとかありえねぇ、という言葉が飛び交う始末だ。だが、数分もしないうちにユウリが魔物の死骸を担いで草むらから出てきた。
「もう心配したよ。ユウリ」
「そうです。どこにいっていたんですか?」
ラリアとセシリアの二人はユウリに詰め寄る。
「ああ。今日の魔物は俊敏で獰猛だから俺だけで討伐してきた。だから帰ろ」
「「……、」」
ぽかん、とするセシリアとラリア。そんな二人を気にも留めず、あたかも作業を終えた職人かのように、ユウリは鼻歌まじりに歩いていった。
配信中のコメント欄も、謎の存在としてユウリを見ていた。
――
またあるときは。
ゴブリン退治で巣であろう洞窟にやってきたはいいものの、その正体がなんと山賊ことがあった。今回は人間が相手ということもあってラリアとセシリアは気を引き締めるが。
「おりゃ!」
ユウリが一人で突っ込んで山賊を全滅させてしまった。
「思ったより手応えなかったな」
ユウリは呑気のそう言いながら、倒した山賊の山に座って溜息をついた。
ここでラリアたちは、『そういえば元賞金稼ぎだった』ということを思い出した。
――
またあるときは。
鉱石採取の依頼を受けて再び〝アグラナ鉱山迷宮〟に訪れたとき、キメラと運悪く遭遇してしまい、戦うことになってしまった。
相手は人型の二対の腕と二つの頭部をもつ存在だ。
セシリアが前衛に立ち、人型が持つ四つの剣を一人で裁いていた。ユウリも支援魔法を行使して全面的に補助をかけて支えた。
しかし、単調な動きのキメラとはいえ、俊敏さに圧倒的な手数。セシリアは防戦一方。隙を一切見せないキメラに彼女は手を出せないでいた。
「セシリア、下がってください!」
ラリアの言葉にセシリアは後方に飛ぶ。それと同時にラリアが前衛に立った。そして、キメラの一撃が振るわれたと同時に防御魔法の〈バリア〉を展開して弾き飛ばした。
防御魔法で〈パリィ〉のようなことをするラリアのおかげでキメラは体勢を崩した。
「今です!」
ラリアの合図とともにセシリアはキメラへと飛び込み、両断し、討伐した。
「ナイス連携! 二人とも」
「ユウリもね!」
ユウリたちはおたがいに親指を立てて称賛したのだった。




