1. プロローグ
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「なぜ冒険者になりたいんだ?」
祖父が唐突にそう訊いてきた。
「えっ、なんでって、いつかおじいちゃんみたいにすごい冒険者になりたいから!」
「アバウトだな」
純粋な回答に祖父は素っ気なくそう言った。
町外れの長閑な平地に建てられた二階建ての大きな家。あと二件ほど平屋が立ちそうなほどの面積のある庭。端には趣味程度の小さな畑に数々の植物が栽培されている。その大きな家の横に建てられた小屋で祖父と一緒に、誕生日と称してよくわからない金属の部品を作り、組み立てる作業をしていた。正直、なにを作っているのか不明だが、この金属の集まりは祖父からの、冒険者になりたい、という願いを叶えるためのプレゼントだ。
祖父は無愛想な人だった。幼少期の頃の祖父は絶対に笑顔を見せなかった。いつもどこか気の抜けないような、気の休まることのない戦士のような気迫を漂わせていた。いつもなにかを警戒して、それが顔に出るくらいに。
そのせいで物好き以外、祖父に近寄ろうとはしなかった。
鋭い目つきでなにを考えているかわからない人だった。躾も教育も厳しい人だった。
だが、怖い人ではない。何事にも真剣で、不器用で威厳のある風貌があるだけの優しい祖父。夢に必要な、突き進むための術を教えてくれた、たった一人の家族。
質問も祖父なりになにか考えてのことだろう、と独りでに思う。
心地よい風が吹くその日、無愛想だった祖父が、
「でも、そうか。なら頑張んないとな」
そう言って初めて笑ったのを覚えている。
――
十数年後。
陽の光の残滓が空の端に残る夜景。吹きつける砂埃の風。物寂し気な空気が漂う閑散とした大地に魔物の咆哮が響き渡る。
ある地にて、五人の冒険者パーティが巨大な魔物と対峙していた。
B級相当の馬と人の中間的な姿をしている大型の魔物と戦い、劣勢を強いられていた。
「あの程度の魔物になにやってんだか」
時が経ち、成長した青年は前衛で散り散りになって戦う仲間を見て溜息を吐いていた。
すると、前衛にいたリーダーが後退し、青年の隣に膝を着いた。
「クソッ! ……おい、ユウリ! 魔法の効果がまったくねぇぞ! ちゃんと俺に対して強化魔法をかけたんだろうな!?」
「失敬な。ちゃんとかけたぞ。つうか、前衛のお前が後方に来るなよ」
怒号を浴びせるリーダーに、後衛のユウリと呼ばれた青年は言い返した。
「黙れ! お前がちゃんとしないからこうなっているんだ! それでも――」
「はいはい、わかりました。お説教はまた後でなぁ」
「貴様ふざ――おわっ!」
視線は魔物に向けたまま、怒声とともに立ち上がろうとするリーダーの肩を軽く突き飛ばし、前衛で体を張る男を地面に尻餅を着かせた。
手に残る前衛の力量とは思えない抵抗感を感じながら、前衛で膝を着くほかの仲間を見据える。前衛に戦士が一人。なぜか前衛にいる魔術師と神官の二人。
「潮時かな」
ユウリはぼそりと呟き、魔物へ向かって地面を蹴った。
「おい! 後衛職のお前が前にいくんじゃねぇ!」
背後から聞こえる声を無視して走る。後衛職とは思えないほどの身軽な動きで魔物との距離を詰めていく。躊躇なく、真っ直ぐ、魔物の元へ。
「またユウリか! 使えねぇ魔術師のくせに出しゃばってくんじゃねぇ!」
「あいよー」
「おわっ!?」
戦士をハゲ頭を手をつき、乗り越えて魔物の元へいく。
大型の魔物もユウリに気づき、土魔法を行使して岩石を撃ち込んでくる。
雨のように注ぐ岩石の弾を、時には伸身を翻し、時に地を滑り、華麗に避けていく。完全に標的がユウリに移動したことを確認し、射程距離まで一気に肉薄した。
「ユウリのくせに! こうなったら私の魔法であの魔物を!」
一人の神官が魔法を行使し、杖に光が灯った。
その神々しい光に惹かれて、大型の魔物の視線が神官に移る。
「ばッ! よせ! その魔法は使っちゃダメだ!」
ユウリの警告が届くわけもなく、光に誘われて標的が神官に変わる。
「こっちだこっち! こっちを見ろ! デカ物ッ!」
ユウリは大声で挑発するが、大型の魔物は見向きもしなかった。
「グルルルルッ……」
「ああ……あ、ああ…………」
魔法の行使を一向に中断しない神官は魔物を前に固まってしまっていた。
大型の魔物は神官に向けて土魔法を行使し、空中に岩石を作り始めていた。
絶体絶命。そんな言葉どおりの光景が広がっていた。
「くそっ! 使うしかないよな!」
一刻の猶予もない。
ユウリは肩にかけている布で包装した奥の手の武器に手をかける。
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