プロローグ
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「なぜ冒険者になりたいんだ?」
祖父が唐突にそう訊いてきた。
「えっ、なんでって、いつかおじいちゃんみたいにすごい冒険者になりたいから!」
「アバウトだな」
純粋な回答に祖父は素っ気なくそう言った。
町外れの長閑な平地に建てられた二階建ての大きな家。あと二件ほど平屋が立ちそうなほどの面積のある庭。端には趣味程度の小さな畑に数々の植物が栽培されている。その大きな家の横に建てられた小屋で祖父と一緒に、誕生日と称してよくわからない金属の部品を作り、組み立てる作業をしていた。正直、なにを作っているのか不明だが、この金属の集まりは祖父からの、冒険者になりたい、という願いを叶えるためのプレゼントだ。
祖父は無愛想な人だった。幼少期の頃の祖父は絶対に笑顔を見せなかった。いつもどこか気の抜けないような、気の休まることのない戦士のような気迫を漂わせていた。いつもなにかを警戒して、それが顔に出るくらいに。
そのせいで物好き以外、祖父に近寄ろうとはしなかった。
鋭い目つきでなにを考えているかわからない人だった。躾も教育も厳しい人だった。
だが、怖い人ではない。何事にも真剣で、不器用で威厳のある風貌があるだけの優しい祖父。夢に必要な、突き進むための術を教えてくれた、たった一人の家族。
質問も祖父なりになにか考えてのことだろう、と独りでに思う。
心地よい風が吹くその日、無愛想だった祖父が、
「でも、そうか。なら頑張んないとな」
そう言って初めて笑ったのを覚えている。
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