ドキドキの週末
コロナ禍で数少ないハッピーなことは、飲み会が無くなったことである。なぜ、ハッピーか、理由は以下である。
まず、上司からの悪口と自慢話を聞かなくて良くなった。私の職場は、完全年控序列だ。簡単にいうと、年上=上司である。飲み会になると、上司の隣に座らされ、相手をするのが私だった。終わらない悪口、愚痴、自慢話。愛想笑いで頷くことが、苦痛でしかなかった。正直、笑顔の裏では、「なんて中身がない話なんだ。」と冷めた目で上司を見ていた。
次に、嬉しいことは、自由な時間とお金が増えたことだ。コロナが流行る前は、夜のプライベートの時間を割いてまで、この飲み会に行く価値があるのかと、毎回疑問だった。参加しては、時間とお金を喪失して、心身も疲弊した。それが、丸ごと、自分に時間やお金を使えるようになった。超ハッピー。
同僚との交流に否定的なわけではない。中には、腹を割って、勇気が出るような励ましをくれる上司もいた。だが、そんなできた上司と飲めるのは稀であった。私は、厄介な人の隣に座って相槌を打つ係を押し付けられることがほとんどだった。
今は、無理に飲み会に参加しなくてよくなったので、とても気が楽だ。コロナ禍で、飲み会がなくなり、ほっとした人は多いのではないか。
ところで、私は、つい先日、同僚たちと外食をした。中盤、参加していた上司の頭を、ガッと掴んだ。そして、
「黙れ。私に触るな。」
と告げた。その瞬間、場は凍った。私は、右手に箸、左手に上司の頭というカオスな構図を生んだ。
理由はちゃんとある。その人がめちゃくちゃうるさかったのと、ベタベタしてきたからである。私は、うるさいのもベタベタしてくるのも、大嫌いだ。
私がしたことは、正当防衛だ。自分は、自分の身を守ったと思う。逆に、無理矢理にでも止めなかったら、エスカレートしただろう。というか、充分、エスカレートしていて、我慢の限度を超えた。何度も身体接触はやめてほしいと訴えた。聞き入れてもらえなかった。
それだけではない。飲みたくもないビールを勝手に注文されて、飲まされたことも大きい。ビールに罪はないので飲み干した。幸か不幸か、私は酒に酔わない性質だ。飲んだ後、数分、上司やその場の様子をじっくり見れた。
その上で、もはや、言葉で言ってもわからない馬鹿だと判断し、実力行使に出た。重ねて言う。自分が間違っているとは、微塵も思っていない。思えない。
私は、職場では誰に対しても敬語である。職場で怒ったことはない。何があっても手を止めず、仕事をしている。まさしく、
(普段、あんなに穏やかな人がこんなにキレるとは…。)
という状況だったと思う。
その場は、嫌な雰囲気で解散にはなっていない。そこはその場にいた賢い人たちの協力と助け、すり替えのトーク力でどうにかなった。
ただ、私は和やかさを取り戻したのを見届けてから、先に帰った。自分の飲食代は別会計で、きっちり払って、早く帰った。
人は、「自分は簡単に相手を傷つけられるのだ」と、もっと自覚するべきだ。相手のテリトリーに、ずかずか踏み込む行為はしてはいけない。
パワハラ、セクハラ、アルハラなど、言葉は知られているが、何が該当するか理解していない人もいる。それでも、基本的にはシンプルだ。相手が嫌がるような行為や言動は、絶対にしてはいけないということだ。
現在、私に頭を掴まれた上司は、大変反省している。よって、逆ギレされるとか、私が訴えられるとか、そんな面倒ごとには発展していない。
ただ、真実を知った夫は、
「秋葉原で、スタンガンが買えるから。」
と言っている。
(買える「から」…何!?)
とは聞けないまま、土日が来てしまった。え、なに、これ…。本当に買いに行くのか…?
ドキドキの週末のスタートである。
スタンガンは犯罪だから、別のものになりそう!
ドキドキ!!




