91.ライラックの糸②
爪vs糸って地味じゃねぇ?
爪が爆発的の伸びた。
普通に、何の気もなしに言おう。
ライラックは、その光景を見てこう思った。
「爪を伸ばして武器にする魔術って、普通にキモいよね」
「偏見だな」
「爪を伸ばすのはいいと思うけど、それを武器にしてしかも自由自在にうねうねするのは、誰が見ても気持ち悪いでしょー」
爪が伸びることではない。
爪が鞭のようにうねうねしていることが、怖かった。
しかもそのたびに、血管がぴくぴくと見え隠れしているのが、何とも不気味だった。
「へぇー。そんな感じで来られると、私もやらないとねー」
そう言いながら、ライラックは糸を張り出した。
今度の糸は硬めだ。
しかも、長くて丈夫。保ちもいい。
「今度は見える糸か」
「うん。この糸、《鋼鉄の糸》は丈夫で硬い。その上、痛い。だから見えるようにしているんだよね」
ライラックはほくそ笑んだ。
まるで裏があるみたいで、警戒心の強い男は、苦笑いをしながら、周囲を確認する。
今度はなにを考えているのか、怪しくて仕方ない。
「悩んでも仕方ないか。叩き潰す!」
「やってみてよー」
ライラックはおちょくっていた。
しかしその指先は真剣で、分厚くて丈夫な硬い糸が、薄くて硬い滑らかな鞭のような爪に対抗する。
その時の音は軋みように、下手に甲高い。
キュイーン! ——
カキーン! カキン、カキン! ——
音だけではない。
甲高い音はマッハを越え、周囲を痛めつける。
ここはただの路地。普通に人が行き交うので、建物が欠けていくと、皆んな頭を守りつつ逃げだす。
「もうー、こんな危ないことしてたら、町の人たちから苦情が来ちゃうかもよー」
「知るか。どのみち、この事実を知った相手は全員殺す」
「それは物騒だよー。もうちょっと、相手は選んで確実にやらないと、関係ない人まで巻き込むような人ってー、私あんまり好きじゃないんだよねぇ!」
ライラックは糸を掴んだ。
グイッと引き寄せたかと思うと、男の爪を糸で束縛する。
鋭くなってはいないので、爪が抜けない。
「なにっ!」
「あれれ? 特徴は、一つしか与えられないのかなー?」
「くそっ!」
「かなーかなー?」
完全に舐め腐っていた。
男は苛立ちを見せたが、ライラックは糸の先に掛けた建物の破片をくっつける。粘着性の高い、《粘着の糸》だ。別名、絡めの糸ともいう。
「これが何かわかるかなー?」
「建物の破損した一部か」
「そうだよー。でさー、これを糸の先にくっつけて、こうやってぶんぶん振り回して遠心力を加えたらどうなるのかなー? かなー?」
男は嫌な顔をした。
何故か、それは単純明快。男はこの先の展開を読んでいた。
完全にライラックのペースになっていることを、踏んでいたのだ。
「やってみろ。お前の考えは読めている」
「そっかー。じゃあさ、せーのでいくよー!」
「はぁっ!」
と言いつつ、「せー」ですでに投げつけていた。
高速で飛んでくる糸付きの建物の瓦礫。男は回避しようとした。しかし爪が邪魔で逃げられない。
それを悟ると、受けることにした。顔でなければ筋肉に力を入れて、硬くすれば大抵は防げる。しかし男の予想は違った。
「ぐはぁ!」
男の顔に瓦礫片が直撃した。
痛いではない。頭からは血を流している。流血したまま、重症だった。
しかし何が起きたのか、男は糸が離れたと解釈した。
「わかっていると思うけど、途中で切り離してたんだよ」
「あっ、あっあっ……」
男は鼻を抑えている。
しかし、ここまでの攻防は完全に互角とは言えない。そこで男は周囲に目を配ると、この地形を使うことを思いついた。
ニヤついた笑みが零れると、ライラックは指先を震わせながら、最終工程までの道筋を辿っていた。そう、既にライラックはやりたいことを済ませつつあった。でも男は気づけない。
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