83.暴風の弾丸
《テレパシー》が便利すぎる件。
泣き止んだダリアは、服の袖で涙をぬぐった。
しわくちゃになった顔を、見せないようにフードを深く被るが、頬が赤らんでいて、まだ涙が収まっていない。
ルカはそんなダリアの顔色を見てはいけないと思い、空を見上げた。
その間考えるのは、本当にダリアが王族だった事実だった。
(まさか本当にダリアが王族だったなんて。あはは、私の感覚もより鋭くなったのかな?)
表情は変えることはなかったが、ルカは遠くの方を見ていた。
その目の奥はじっとしていた。
それから、感覚を研ぎ澄ませると、ふと不穏な風が吹いた。
「あ、あの、ルカさん」
「如何したの、ダリア」
「私が王族だって知ってしまって、ルカさんは、如何しますか?」
「如何って嫌いになるかどうか?」
「はい。私、今なら変われる気がするんです」
「うーん。別にどうも思わないかな。でも、せっかくそれだけ魔術が使えるのに、極めないのはもったいない気がするけどね」
ルカはふと、ダリアを誘ってみた。
これだけの実力があって、精神が据わっているのに、その力を棒に振るのは、もったいないと思ったんだ。
しかし、ダリアの反応は少し違っていた。
少し前なら、拒絶されていただろうが、今のダリアの瞳は澄んでいる。
「なれますか、私は魔術師に」
「なれるかどうかは自分で決めることだよ」
「だったら!」
その時だった。
ルカは何かを捉えた。
ビューン! ——
ルカはダリアを抱え込んだ。
するとその場から、一気に飛び、時計塔を離れる。
砂埃が舞った。何かと思えば、時計塔の一部が破壊され、幕が張られていた。
「えっ!?」
「やっぱり仕掛けてきた」
ルカは襲ってくることを知っていた。
やっぱりこのためにここまで動いていたんだ。それを悟るには、あまりに多すぎる情報の量に、自分の勘を嫌になった。
「あれれー、まさか俺の弾丸避けたちゃったぁー?」
「お前はいつもそうだな。肝心な時に外す」
「そういうこと言うなよ、相棒。俺だって傷つくんだぜー」
「そういうなら次は外すなよ」
「はいはい。それじゃあ行くぜ、《ソニック・ショット》!」
風邪の弾丸が砂埃の幕を突き破り襲ってきた。
しかしそこにルカもダリアもおらず、空に掻き消える。
砂埃が完全に開け、中にいた男達は目を疑う。
「うわぁ! もういないんだけど」
「おかしいな。気配はあったはずだ。なのに、姿を消しやがった。誰かいるのか、優秀な護衛でも」
「護衛? それって、やられた王国の騎士の言ってたやつか? 素性もわからない、学生風情だろ」
「俺は暴れられたら、それでいいぜー」
「そんなことは如何でもいい。俺は地上から行く。お前は空中を攻めろ。しくじるなよ」
「りょうかーい」
男達は話し込んでいた。しかし、その間にルカは走っていた。
特に急いでいない。
今やることは、ダリアを安全なところまで誘導すること。
場所は会場がいいだろう。
ルカは《テレパシー》を介して、ナタリーに連絡した。
『ルカ……ん?』
「ナタリー聞こえてるよね。ちょっと困ったことがあったから、至急頼みがあるんだけど」
『頼みですか? すみま……ん。よく聞こえな……』
「いいから良く聞いて。神経を研ぎ澄まして」
『は、はい!』
ルカは声を荒げた。
すると《テレパシー》を介して、ナタリーは覇気を込めた。
完全に意識が覚醒する。
「敵の狙いは、女王陛下だ。そのためにここまでいろいろな工作を仕掛けて、意識を逸らさせてきた。相手は、おそらくかつてこの国の転覆を期待して実力行使に出ていた犯罪集団。敵はすぐ近くにいるはずだ。そっちは頼んだよ」
『は、はい。なるほどそう言うことでしたか。わかりました、こちらは何とか対処してみます。それでルカさんは?』
「こっちは追われてる。敵はダリアを狙ってるみたいなんだ。だからナタリー、今から言うことをお願いするよ。ダリアを……」
ルカは早口だった。
しかしナタリーは真剣にその話を聞き取り、汲み取る。
すると、ナタリーは快く了承した。
それもそのはず、例の取引があったからだ。
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