82.少女の告白
多分ここはギリギリ残っていた部分です。奇跡。
ルカは最後まで話を聞いていた。
目の前には、話終えた少女が一人、抜け殻のようだった。
しかしルカは今のことを尋ねる。
今とは今。ダリアのことだった。
「それから私は部屋に閉じこもりました。初めのうちは、多くの人を殺めてしまったことに、心が砕けてしまい、ろくに話すこともできませんでしたが、少しずつですが回復していて、今は少しだけお話ができるんです」
「そんなことがあったんだ。私は知らなかったよ」
「当然ですよ。私が殺したのは、凶悪な犯罪集団で、この国を転覆させようとした組織です。秘匿にされるのも無理はなく、私のことも世間のほんの片隅、この国の危機を救った麗しき少女などと、事実とは異なる記述でしか残っていません。本当は、暴走した私が、恐怖と本能のままに、人を殺しただけなのに……」
「うーん。そっか」
「はい」
表情を曇らせるダリア。
それに対して、過去の過ちが脳裏に焼き付いた。
「私も人を殺したことがある」
「えっ!?」
「あれは私の両親が殺された時だった。結局事故死として処理されたけど私はあの時のことを忘れていない。だから私は自分に決めた。誰も殺さないって。殺すのは、命以外だって」
「ルカさん……」
「だからね、ダリア。その事実を受け入れられてる、君はとっても偉いよ」
ルカは話を変えた。
ダリアの表情がコロコロ変化して、自分を自分で見失いかける。
しかし、すぐさまダリアは真顔に戻っていた。
「でも私は人を殺して。そのせいで、皆んな私のことが嫌いになって……」
「嫌いになった? 私はそんなことで嫌いにはならないよ」
「えっ!?」
ダリアは顔を上げた。
ルカの顔はいつも通りだったが、何処となく目の奥の瞳が、柔らかい。
優しい目でダリアを見ていて、少し頬が赤らめる。
「君が人を殺して、君の家族は君のことを嫌いになったの?」
「えっ?」
「驚いてばっかりじゃなくて、如何なのかって話」
確かにそうだ。
ダリアは今まで、他人の目を気にしすぎていた。自分が外に出れば、また人を殺してしまうかもしれない。そんな自分を籠の中に閉じ込めることで、この国はよくなる。私を嫌ったりしない。そう思っていた。
でも現実は違った。
ダリアの見ていた世界は、虚構だらけだった。
今思えば、剣の稽古をつけてもらう時だけ、部屋の外に出ていた。
その時、誰もダリアの陰口を吐いたりしなかったのだ。むしろその逆で、早く良くなってほしいと思っていた。
「笑顔を忘れるな。自分を見失う前に、世界を見ろ。真に信頼するもののために、自分のために剣を振るえ」
口にしたのは剣の稽古をつけてくれる先生の言葉だった。
そっか。ようやくわかった。私に足りなかったのは、世界を見ることなんだ。
他人の目ではなく、自分の目を。自分のまやかしの声ではなく、世界の声を。それを聞いたとき、初めて自分は自分で心の剣を振るうことができる。
それが見えていなかったんだ。
「ううっ。ぐすん……私は、私はうぇーん!」
泣き出していた。胸の奥から今まで溜め込んできた涙の滝が突然、その雄たけびを上げた。
あの時の自分は自分。誰も私のことを悪く言ったりしていない。
それがわかったから、私は真に私を好きになれた。
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