64.二日目の方がしんどそうな件
はい、ここに来て時空魔術が来ました。
ルカとライラックは分厚い警備生の服に身を包み、会場の外にいた。
そこには昨日までとは打って変わって、たくさんの出店と人で溢れていた。
何が言って変わっているのか、それは単純な話で、人の量が多かった。
「これは、昨日よりも別格で大変そうだね」
「そうだねー。ほんと、水筒を持ってきておいてよかったよ」
「そうだね。それでライは、何処に水筒があるの?」
「ここだよ」
そう言って水筒を取り出した。
ルカもライラックも水筒を持ってきてはいるが、手元にない。
かと思えば、右の人差し指を動かした途端、ライラックの手元に水筒がやって来る。
「こんな感じかなー」
「なるほど糸を極端に伸ばして、遠くから巻き取るんだ。それにしても、ライラックの糸は普通じゃないぐらい、洗練されているね」
「そりゃぁねー。私の得意技だもんさー」
「得意技」
「そういうルカは何処に水筒を隠してるのさー。どうせ、異次元チックなんでしょー」
「惜しい」
ルカは指を鳴らした。
すると、ライラックは首を傾げるが、ルカは空間から水筒を取り出した。
それを見たライラックは瞬きを繰り返す。
「ど、如何やったの!」
「これは時空魔術の応用だよ。空間に穴をあけて、そこに水筒を放り込んでいただけ」
「凄ねー。容量とかないのー?」
「そうだなー。使った魔力にもよるけど、私は無効系と時空系が得意だから、よくわからないね」
「それは、異次元過ぎるよー」
などとライラックは口にした。
しかしその手際は見事なもので、観察眼が鋭いのか、不審な動きをする姿を見つけたら、指先から糸を出して、服の襟に絡ませて、捕縛する。
千年前でも脅威なほどに強かった。何よりも不気味だった。
(如何したライは、こんなに強いんだ。確かに才能はあるけれど、それ以上に固い、何か怨念がましい悪意を感じるのは、私だけなのかな)
ルカはライの闇を見た気がした。
それは生徒会長のものとは一味違う何か。
より濃密な、もっと殺伐とした殺意に似ていた。
「ライは強いね」
「そっかなー? 私には、ルカの方が何百倍も強そうに感じるけどー?」
「そうかな? あんまり考えたことなかったけど」
「悪意がないから怖いんだよ。それだけの力を悪意じゃなくて、もっと根底から違うって言うのかな? 私にはよくわからないけど、勝てるビジョンが湧いてこないよー」
「ビジョン? ライがそんなこと言うんだ」
「うわぁ! それは失礼だなー。とんでもない偏見だよ」
「ご、ごめんって」
ライラックは怒ってはいなかった。
しかしその目の奥は笑っていない。
黒く芯から冷えていく。
「ちょっと、ライ」
「な、なにっ!?」
ルカはライラックの後ろにいた男を倒した。
あろうことか痴漢だった。
ルカはそれを見破り、未然に防いだんだ。
「ちゃんと周りを見てよね。じゃないと危ないよ」
「そ、そうだねー。ちゃんと気を付けるよ」
「それとだけど、ライ」
「ん?」
「自分の大切なものを信じられるぐらいには、信用してもいいと思うよ。信頼は脆くて、簡単に壊れてしまうから、それを失いたくなかったら、それを失わないように努めること。それができない魔術師を何度も見てきたけど、その全てとは言わない、でもね悲しい結末を迎えることだってあるんだから。もちろん、私の話じゃないけどね」
「な、ななにその話ー。あんまり面白くないよー」
「でもそういうことはあるでしょ」
「かもねー。でも、私はシルヴィたちを裏切る気はないけどねー」
などと軽口を叩いた。
そんなライラックの姿をどこかおぼろげに見ていたルカは、かつての魔法使いたちの姿を重ねた。
そうなってほしくないと、心から願うのみだった。
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