42.シルヴィアの休日⑤
二人のまともな戦闘描写です。
シルヴィアたちは紙袋を手に、ふらふら歩きまわっていた。
これから馬車に乗って、家まで帰る。
その帰り道だった。
シルヴィアは、ライラックの隣で、笑顔になりながら、
「まさかこんな掘り出し物が見つかるなんて」
「よかったよねー。私、普段本なんて、読まないのにね」
「それはそれで如何なのよ。教科書ぐらい、読みなさいよね」
「はいはーい」
「もう!」
かなり適当だった。
ライラックは、顔を崩して、シルヴィアは「何よ」と言いたげだった。
「なんなのよ。私、変なこと言ったかしら?」
「いや、別にー」
「もう!」
ライラックはマウントを取ろうとした。
だけど可哀そうに思い、控えることにしたんだ。
でも、ライラックはそこまで意地悪ではない。
ルカやシルヴィアに優しく、基本的には適当に済ませられるんだ。
でもさ、
「まぁ、私って、本気で怒る時は怒るんだけどねー」
「ちょっと、ライ。貴女、本気で怖いこと言わないでよね!」
「はいはい。でも私、沸点高いから、大丈夫だよー」
「ほんとかしら?」
「むっ! 私、本気なんだよ」
「はいはい」
シルヴィアは軽く流しにかかる。
しかし、ライラックの実力は本物。
だからこそ、これ以上は言えない。
ライラックの実力は、シルヴィアが一番理解しているんだ。
「あーあ、何か面白いものでもないかなー」
「もう、そんな不穏なこと」
「キャァァァァァ、泥棒!」
「「はい?」」
まさかの事態。
二人は困惑すると同時に、視線を移動させた。
見れば二人組の男達が、女性からバッグを盗んで逃げようとしていた。
「なによ、この町!」
「もしかしてだけどさー、仕込み?」
「そんなわけないでしょ。そんなことより、早く捕まえるわよ」
「はいはい」
「もう、しゃきっとしなさい!」
シルヴィアは、ライラックに言い張った。
見たところ、男達は魔術が少し使えるみたいだ。
これはかなりめんどくさい。
そう思ったのも束の間、シルヴィアはもっぱらの強い正義感で、加速していた。
「風の魔術!」
「ほら、早く!」
「行け、《偽架の糸》」
「その魔術って!」
シルヴィアも驚きだった。
ライラックが、シルヴィアの風の魔術で加速した姿と同じで、透明かつ強靭な糸を指先から、飛ばして、張り出した糸が風の影響で、進んだ。
「ライ、貴女私の魔術を読んでいたわね」
「そんなことないって。利用しただけ」
ライラックは短絡的だった。
しかしシルヴィアは納得がいかない。
何せ、十八番を取られたみたいで、ムカッとした。
だけど、
「そりゃ!」
ライラックは巧みな指先加減で、糸を街灯に引っかけた。
すると、風の余波を受け、そのまま左右に逃げた男の一人を追走する。
「やるわね。流石は、ライ」
「そんなこといいから、早くやっちゃって」
「分かってるわよ。少し待ってなさい」
「うん。でも、思いっきりぶっ飛ばしてね」
シルヴィアは、逃げた男の前に乗り出すと、そのまま風の魔術を使った。
もの凄い突風。
だけどただの突風じゃない。
シルヴィアは的確に盗まれたバッグだけを奪い取ると、そのまま勢い任せに吹き飛ばした。
それを皮切りに、
「せーの!」
ライラックが合わせる。張った糸を手繰り寄せて、街灯を糸で擦りつけた。
すると、焼けだす。
しかしピンと張った糸が、引き戻された影響で、吹き飛ばされた男と、操り人形の男は、
バチーン! グシャ!
かなり鈍い音がした。
嫌な音だ。
響きが鈍く、耳をつんざくと、男たち二人はグシャッとなった。
そんな彼らに近づくと、ライラックは糸を引っ張り、皮膚に食い込ませた。
肉が引き裂かれるほどで、赤く腫れあがる。
うっ血が酷くて、痛そうだ。
けれど、ライラックはまるで気にしていない様子だ。
「シルヴィ、こっちは終わったよ」
「相変わらず、やり過ぎよライ」
「そうかなー?」
「そうよ。やっぱり貴女って、ちょっと怖いわ」
「・・・」
ライラックは黙り込む。
手だけはちゃんと動いていて、縛り付けると、シルヴィアは表情を曇らせドン引きした。
「はい、これ。怪我とかしてませんか?」
「は、はい」
シルヴィアは取り返した、青色の肩掛け鞄を盗まれた女性に返した。
しかし、表情がやはり曇る。
何故か引かれた顔をされたが、気にしないことにした。
しかし、
パチパチパチパチ!——
町の人たちから、拍手が送られる。
突然のことで、二人は驚いた。
だけど、包み込んだのは、盛大な拍手喝さいの中に巻かれた。
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