36.お掃除しましょう
結局、ルカは何もしていない。
ノーブルは自分の生徒たちに助けられ、情けない気持ちと一緒に、嬉しく思った。
この子たちは強い。
しかしその反面、ノーブルは顔をムッとする。
「皆さん、如何してここに」
「それは、その……」
シルヴィアが目を泳がせる。
しかし嘘が苦手なシルヴィアに変わって、ルカが答えた。
「私達も事件が気になって、調べていたんです。そしたら、ここに辿り着いてしまって」
「そうですか。……入り口は閉じておいたはずなのですが……」
「入り口は簡単に開いたよねー」
「構造が解っていたからね」
ルカはライラックの何気ないことにも、瞬時に返す。
ノーブルは置いてけぼりを食らい、いたたまれない。
「構造が解っていたから解けたと言いたいんですか。はぁー、嘘は大概にしてください。あれは、魔法を組み込まれた、今の時代では見ることのできない特別なものですよ。歴史的な価値があります」
「そうだったんだー」
「ルカ、貴女凄いわね。あんな噴水提の謎を暴いちゃうなんて」
「う。うん」
ルカは反応に困った。
自分で墓穴を掘ってしまった。
冷汗がこめかみから流れる。
けれどノーブルは、深く息を吐いてから、話を切り替えた。
「ライラックさん、そろそろ下ろしてもらっても構いませんよ」
「ごめんなさーい」
ライラックは糸をほどく。
ノーブルは祭壇の上に立ち、体中に付いた古い苔やゴーレムの残骸を払い落とした。
「さてと皆さん。ここにいるということは、私がロッセル先生をぶん殴ったところを見たということですね」
「はい」
「では、私の正体も」
シルヴィアは黙り込む。
ルカとライラックは、シルヴィアほど、現代知識に豊富じゃない。
そこでシルヴィアが語り出すのを待った。
「えーっと、ノーブル先生は魔術省の人で、特殊部隊〈ミスト〉のメンバーだったんですか」
「はい、そうですね。今も一応、席はおいていますが、普段は皆さんの教師ですよ」
ノーブルはにこやかな笑みを浮かべる。
だけど今まで身分を隠していたのは、信頼にヒビを入れてしまうには十分だった。
失望され、この学校にはいられない。
そう悟ってしまう。
なんだかんだ言っても、ノーブルは教師に向いていた。
人に教えるのは昔から好きで、秩序のためとはいえ、その本分を失っても、後悔は後には絶たない。
「皆さん、すみませ……」
「めちゃくちゃかっこいいね、それ!」
「うん。魔術省の中でも、特に秀でたエリートだけしかなれないそうよ」
「つまり、ノーブル先生はこの学校でもかなり優秀な魔術師ってことになるね」
「そうよ。だから寝てるなんて、もったいないわ!」
ノーブルは呆れてしまった。
まさかここまで楽観的とは思わなかった。
今までずっと黙って来た自分が惨めに感じるほどで、ノーブルは涙袋に涙の雨を溜め込む。
でも、泣いたりはしない。
だってノーブルは、先生だから。
「皆さん」
「ほら先生。あのゴーレムの処理するんでしょ?」
「私達も手伝いますよ」
「いいんですか、皆さんまで?」
「片付けは得意なんだー。それに、成績とか上げてくれるでしょー?」
「それは要相談案件ですね」
ライラックは糸を使って袋を作る。
一体どんな精密性なのか、ルカでさえ怪しんだ。
けれどその心意気はよしと、今回は見なかったことにする。
「それにー」
ライラックは糸を伸ばして、倒れているロッセル先生の体をぐるぐる巻きにして縛った。
意識を失っているとはいえ、きつく縛られ食い込んでおり、痛そうだ。
顔もどこか苦しそう。
「こうしておけばさ、逃げられないでしょ?」
「ライ、それは流石に用意周到が過ぎない?」
「手慣れすぎて怖いわよ」
ルカとシルヴィアは少し顔を引いていた。
しかしライラックは、
「そうかなー? これぐらい普通でしょ」
歯車があっていない。
噛み合っていないんだ。
だけど、ライラックのしたことは決して悪いことではないから、皆んな口を出せずに黙ってゴーレムの掃除をした。
赤く断片的に残った、ゴーレムの肉片。
それを見ていると、いたたまれない気持ちと後悔が残るのだった。
「ご冥福をお祈り申し上げます」
「ノーブル先生……」
限りある命。凄まじい後悔が残る。きっとこのゴーレムに使われた人たちもだ。
こうはなりたくないと、誰もが思うとともに、私達の胸には途切れることのない感情がただ、溢れていた。
少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。
下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)
ブックマークやいいねなども気軽にしていただけると励みになります。
また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。




