35.秩序の魔術師
秩序といいながらの、鉄拳制裁。
ロッセルは気づいてしまった。
ノーブルの口にする、秩序の意味。
これは、二つ名だ。
「お前は、まさか【秩序】!」
この二つ名を持つ人物はこの世界に一人しかいない。
それを知っているのはほんの一握りで、魔術省の中でもごく限られた人間だった。
彼女自身を表す、たった一つの異名。
「まさか、秩序の魔術師! そうか。スクワーロ……顎鮫の魔術師か!」
「そうですね。勝手に震えていてください」
かなり冷酷で冷たかった。
ノーブルは本性をさらした。
しかし、勝手に震えだし、怖気づくロッセルは腰を抜かしてしまっていた。
完全に戦意喪失だ。
「肯定でも否定でも構いません。ですが貴方のやって来たことは、流石に見過ごせません。もう一度言います。貴方を殺します。秩序の名の下に、私の正義を執行します」
ノーブルの手から白い手袋がほどけ落ちた。
すると拳が光り始める。
眩い白い発光が、さらに煽るみたいに陥れた。
「《秩序の鉄拳》!」
ノーブルの右拳が下からアッパーの要領で、放たれる。
しかし、ロッセルは上手く身を躱し、背後の壁が粉々に崩れた。
「外しましたか」
「ひぃぃ! そんなの食らったら死んじまう」
「だから言っているでしょ。もう逃げないでください。間延びすると、誰も喜びませんよ」
ロッセルは怯えながらも、拳を作った。
それから苦手な接近戦を繰り広げた。
だけど、ロッセルの拳はノーブルには当たるわけもなく、その拳は腹に食い込んだ。
「ぐっはぁっ!」
「これが皆さんの痛みです。そして、沈め!」
ノーブルは続けざまにこめかみに蹴りを入れた。
つま先の回し蹴りは、そのまま脳震盪を起こして、ロッセルを倒した。
横たわって動かないが、死んでいるわけではない。
意識を失って気絶しただけだ。
「本当に殺すわけないじゃないですか。貴方の罪を裁くのは、今の私じゃありませんからね」
自分のやるべきことを解っていた。
ここまではナタリーに頼まれていたこと。
残りは、ただのお片付けだ。
「さてと、後はこのゴーレムの残骸を如何するかですが……」
ノーブルは腕組をして考え込む。
この大きさのゴーレムは流石のノーブルでも想定外。
それに、死体で作ったものだから、さっきから死臭が漏れ出している。
ロッセルが意識を失ったせいで、勝手に魔術が解けたんだろう。
かなり弱った。
ノーブルの《秩序》は魔力の含まれるものに影響を及ぼし、主に近接戦で活躍してくれる能力だった。
「困りましたね。《秩序》は魔力の流れを均一化して、不条理なものが含まれれば魔力ごと崩壊させる能力ですが、これは流石に……」
ノーブルは困っていました。
勝利の余韻に浸り、無防備な状態です。
そんな中、突然ゴーレムの体が崩れました。
ドサドサドサドササァ! ——
まるで雪崩のようだった。
如何やら完全に魔術が切れたらしく、ノーブルの《秩序》が合わさって、その余波を受けてしまったらしい。
そのせいで通常よりも早くに崩れてしまい、疲労もあってノーブルは逃げられなかった。
「仕方ありませんね」
ノーブルは腕を前に出して、ガードする。
さっき瓦礫を食らった時と全く同じことをした。
しかし今度のは死体だ。
無事に生きて出られる保証はどこにもない。
覚悟を決めた。
そんな中、体に糸が巻き付いた。
「これは!」
「せーのっ!」
ノーブルは一気に引き寄せられる。
糸が絡まって身動きが取れない。
まさかもう一人いたなんて。油断していた。
そう悟ったのも束の間、聞き慣れた声が聞こえた。
「今だよ、二人とも!」
「主を迎えるは風の窓。忘却の壁築け! 《ウィンドシールド》」
「これも追加しておこうか。《ウォール》」
そこにいたのは生徒たちだった。
しかもどんな偶然か。
ノーブルは自分のクラスの生徒たちによって助け出されてしまった。
如何してこんなところにと思考する中で、ノーブルは情けない気持ちと、この子たちは強いと嬉しく確信した。
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