34.血肉の傀儡
せっかくの見せ場。しかし・・・。主人公は、今日もお休み。
ロッセルが使った奥の手はノーブルの魔力を奪うことだった。
だけどあくまでそれはきっかけに過ぎず、ノーブルは顔を顰める。
真下の床に刻まれた魔術陣が発動した。
赤い血液の跡が導火線のようで、引火したみたいに赤く発光する。
「なにが起きているんですか!」
「貴女を倒すために急遽仕上げた欠陥品ですが、これで十分でしょう。さぁ行きなさい! そして俺を魔術の高みへ!」
地面が揺れ出した。
それだけじゃない。この祭壇を含めたこの場所自体が激しく揺れ出す。
何が起きているのか。
ノーブルは目を凝らした。するとさっき自分の頬に付着した血がまるで生き物のように動き出す。気色悪いこの上ない。
それは一体何と結合したのか、巨大な肉塊に変わっていて、人の姿を取るものの、腐敗臭と一緒にぽたぽたと滲んだ赤い液体が滴っていた。
「これはまた奇怪なものを……」
「どうです、美しいでしょう。これが俺の最高傑作。あぁ、とても可愛らしい」
はっきり言おう。全然可愛くない。
大体五メートルぐらいの大きさで、どろどろの赤黒い液体を混ぜた粘土の人形のようだった。
結論から言おう。これはゴーレムだ。
命の無い巨兵で、古くから魔術師たちが好んで使っていたそうだ。
今の時代も便利なもので、それを得意とする魔術師も少なくない。
しかし魔法使いの間で主流となっていたかはわかっていない。
ノーブルは体をできるだけ小さく動きやすい形にして、硬く拳を握った。
ゴーレムの太い腕が飛んできた。あまりの速さに加えて、威圧感が鋭く刺さる。ノーブルは動けずに、その場で立ち尽くしてしまった。
「死ねっ! ノーブル・V・シュルベル!」
ロッセルの憎たらしい笑いを浮かべながら、ゴーレムに指示を出した。
ゴーレムの腕は無防備なノーブルを押し出した。
何かが朽ちて砕けて、ボロボロになる音がする。
「ふっ、はぁっはぁっはぁっ!」
ロッセルの高笑いが広い部屋の中に響いた。汚い笑いで、頭の隅々から絶え間なく流れる幸福感に支配されていた。
一方的に相手をのすのは面白い。ここまで無力な相手を羽交い絞めにするのは楽しいのかと、訴えかける。しかし本人にとってそんなものはただの通過点でしかなかった。何故なら、ここまでやって来たことの全てはこのためにある。
あまりに醜い復讐の道具。そのために殺してきたんだ。
「これでようやくあいつらに、俺を追放した魔術省に復讐ができる!」
ロッセルの言葉は鈍く広がる。
それはまるで水面に浮かぶ波紋が、下手な不協和音を描くみたいなものだった。
「さて、手始めにこの学校を潰すとするか」
笑いながら振り返る。
そんな中、
ガタッ、ガタッガタッ、ガタッ!——
瓦礫が動き出した。
さっきノーブルを壁に叩きつけた際に砕け散ったものだったが、まさか生きているわけがない。
誰もがそう思ったことだろう。ルカ以外は。
「そんなことさせませんから」
「なにっ!」
ゴーレムの腕が弾け飛んだ。
いつの間に近づいていたのか、ノーブルは怪我の一つもしておらず、破けたコートを翻し、そのまま追撃の拳を叩き込んだ。
「な、何だこのスピードは!」
「驚いてもらっても困りますよ。注意が散漫で、操作がおぼついていないんですよ」
「そんなぁ! この俺の人形が! マリオネットが。あ、ああ」
ロッセルの顔色はさっきまでとは一変。冷静さを失い、固有魔術が精神の乱れで解けそうになる。
けれどノーブルはまるで手を緩めない。
柔拳の柔軟な手首の動きで軽く攻撃を躱していなしてを繰り返しながら、ゴーレムを叩き壊しにかかる。その動きはまるで……
「あ、悪魔だ……」
「いいえ、これは秩序です」
「秩序だと。さっきから思っていたが、まさかお前は!」
ロッセルは気が付いていた。
この女が。ノーブルが何者であるのかと。
少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。
下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)
ブックマークやいいねなども気軽にしていただけると励みになります。
また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。




