331.ゴライアスの疑念
最初のダリアがめちゃくちゃ良い!
「がぉー! 食べちゃうぞぉ!」
「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」
「みんな待てぇー!」
ダリアは狼とライオンを間違えていた。
だけどちゃんと子供達は怖がってくれていて、早速鬼ごっこが始まった。
「ダリア、ムキになっちゃダメよぉ!」
「分かってます。待て待てぇ!」
ダリアは少し背中を丸くして、逃げる子供達を追いかけ回す。
ちゃんと子供達が転んだりしないように、絶対に追いつかない速度で走っていた。
とは言え少しだけ走ってみたりして距離を詰めると、何だか本当に獣系モンスターに襲われているみたいに感じる。子供達にも好評のようで、楽しそうに駆けていた。
「ダリアって、今まで人混みに出てなかったわよね?」
「そうだね。ずっと剣の先生と修行してたみたいだけど」
「それにしては社交的よね。やっぱりちょっとずつ変わってきているのかしらね?」
「さあね。だけど私には、ダリアは元々社交的に振舞ってきたみたいだよ。だからかな? 子供相手にもちゃんと遊び相手になってあげられてる」
ダリアは凄いなと思った。
ルカはこの手のことはちょっぴり苦手で、昔だとセレナに助けて貰っていた。
ちょっとだけ思い出すと懐かしい気持ちになるのだが、そんなルカ達も今は子供達に囲まれていた。
「ねえねえお姉ちゃん達は魔術師何だよね!」
「魔術見せてよ! 魔術!」
「ゴライアス先生やジルアお姉ちゃんみたいに魔術が使えるんでしょ!」
「見たい見たい!」
子供達は魔術が見たくて仕方ない様子だ。
とは言え魔術をひけらかすのも何だかなと思い、ルカは渋い表情を浮かべる。
「ごめんなさい。私達の得意な魔術は少しだけ危険なんです」
「そうだよー。魔術って、あんまり人に見せないんだよー」
「確かにね。特に魔術師相手に見せると、敵対された時に厄介だからね。だからごめん」
ルカ達は子供達相手に魔術を見せたくなかった。
もちろん見せてもいいけれど、ゴライアスの目が気になった。
こちらを試しているような、実力を測っているような視線に警戒を強めるしかない。
「えー、つまんないよー!」
「そうだよー。ねえ、やってみせてよ!」
「本当は使えないんじゃないのー!」
凄い非難のされようだった。
ブルースターが「うーん」と唸り声を上げると、ジルアがパンパンと手を叩いた。
「皆さん、ブルースターさん達はあの有名なアルカード魔術学校に通う学生さんなんですよ。無理を言ってはいけません」
「だがアルカード魔術学校に通う程の生徒ならば少しくらいは見せてもいいはずだが」
「ゴライアスさんなら分かるはずですよね?」
「……はい」
ゴライアスは腕を組んだまま何かを納得した。
魔術師として大事な手札の読み合いを知っているようで理解を示してくれた。
「ですが見てみたいものです。アルカード魔術学校の生徒の実力を」
ゴライアスはルカ達の実力を知りたがっていた。
如何して挑発的なのか分からないが、ルカは少しだけ訝しむ。
「むぅー。ゴライアス先生、いつものやって!」
「やってやって!」
子供達はゴライアスにお願いする。
何時ものとは何なのか。ルカ達は互いに顔を見合わせると、ゴライアスは「仕方ありませんね」と口ずさむ。
「何をするのかしら?」
「さあねー。でも魔術を披露してくれるんじゃないのー?」
シルヴィアとライラックは耳打ちし合っていた。
確かに魔力が昂っているのは感じられるが、ルカ達に挑発的な態度を見せる。
おそらく誘っているのだろうが、まずは向こうが手の内を見せてくれるようなのでじっくり見せて貰う。
(どんな魔術を使うのかな……楽しみだよ)
ルカは表情を緩めていた。
ゴライアスも距離を取り、子供達から少し離れる。
すると腕捲りをして分厚い筋肉の鎧を見せつけると、拳に魔力を集中させ手思いっきり地面を叩いた。
「おんどらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
バキバキバキバキ!
けたたましい地響きが聞こえた。
ゴライアスが怒号のような覇気を上げると、地面に魔力が注がれて、強大な魔術陣を描く。
ここまで無詠唱。腹に溜めていた空気に魔力を乗せ、その勢いで魔術を瞬間的に発動させたようだ。
しかも地面には罅が入っていた。かと思えば罅の中から地面が隆起して巨大な岩の塊を生み出す。
圧倒的な出力。シルヴィア達は目を見張ると、「な、何よこれ……」と言葉を失った。
「これで終わりです」
ゴライアスは仕事を終えたような表情を浮かべる。
子供達も「うわぁ! 凄い凄い!」と大はしゃぎだった。
「ゴライアス先生カッコいい!」
「やっぱりゴライアス先生は取っても凄い魔術師だよ!」
子供達に大人気。完全にルカ達の存在を無視する。
子供の注目の的になる中、「はい」と好感の持てる言葉を吐きながらゴライアスの視線がチラッとルカ達を見ていた。「これが俺の力だ」と言わしめたいようにも感じる。
しかしながらルカだけは気が付いていた。今の魔力は半分も満たしていない。
ゴライアスはまだ全力を出し切っていなかった。
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