33.魔術師の戦い
ここでちゃんとした、魔術師同士のバトル。
魔術師の戦い方にはいくつかある。
その中でも特に多いのは、この二パターンに言及される。
・魔術を多用しての魔術勝負
・魔術を使いつつ、体術や武器を利用した勝負
大きく分けてこの二つがあった。
前者は昔ながらの魔術師や魔法使いの戦い方で、単純に魔術同士のぶつかり合い。これは古い時代から知識勝負や出力対決になりがちで、拮抗し合うこともあるが、主に魔術をどれぐらいの出力に分けて使うかで、勝ち負けが決まる。
要はパワー勝負だ。
この戦い方にはいくつか欠点があって、後者のタイプは圧倒的に不利である。
知識量と自分の落ち味を理解し、それを上手く使えるか、ペース配分の取り方が重要視されていた。
そして後者だが、こちらは経験が勝敗を分ける。
今の生ぬるい魔術師には分からないかもしれないが、古くからこちらの方が主流だった。
主に近接格闘戦。もしくは武器を多用した戦闘にはこのやり方がお決まりで、流石のルカでさえこちらの方が得意だった。
それ故、テクニックをものにし、相手の先を行く。そんな難易度の高い思考回路を要求されるため、考えるより感じた方が極めていい。
どのみちこんな乱暴な戦い方になるからこそ、魔法使いは生き残れるのだ。
「だけどあの戦い方は……」
「何だか一方的ね」
完全にノーブルがロッセルの上を行っていた。
完全に手玉に取られていて、さっきから攻撃がまるで当たっていない。
それだけでなく、魔術も使っていないただの柔拳でいなされてしまっていた。
「可愛そう……」
「ライラック。可哀そうは駄目だよ」
「如何して?」
「命懸けなんだ。そんな生半可なものじゃない。感情の一つは小さくても、状況が重なれば、想いは何倍にも膨れ上がって、相手に返される。そうしたら命はないよ」
ライラックは黙ってしまった。
かなり重たく聞こえたのかもしれない。だけどそれだけ気にしていて、その目はまるで動かない。
ルカはライラックにそう言った自分を恥じた。
それは本人が一番よく理解している。
だって、ルカは昔から手を緩めてしまうんだから。
それでもルカは負けなかった。
何故かって? 負けられないからだ。
「それにしても一方的だ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ロッセルの体が宙を舞った。
無防備な体勢で、空中に吹き飛ばされ、そのまま床に落ちて叩きつけられるかと思いきや、ノーブルはロッセルの落下地点を予測して、下から腰目掛けて叩き込む。
「ぐはぁっ!」
ロッセルの目が剥き出しになりかけた。
口からは痰を吐き、四つん這いになって咳き込む。
「はぁっはぁっ。やめてくれ。俺の負けでいい」
「いいえ」
「な、なんでだ!」
「貴方は既に死刑判決を食らっているんです。私は殺す気で行きます」
「そんな。たった一人しか殺してないんだぞ!」
ロッセルは口走った。
ピキッと氷にヒビが入るような音がした。
ノーブルは奥歯を噛み、
「確かに魔術師は一重に人を殺しますが、その命を軽んじるようなら貴方は魔術師として失格です」
「失格? 如何してだ。魔術師は人を殺すことで強くなる。この手で、この指先で、血肉を舐めることで、真に進化を遂げる」
「だからと言って意味もなく殺すことに躊躇いもないなら、私はそれは単なる悪意です。ですから排除する」
「勝手なことを言いやがって……」
ノーブルは血を吐きながらロッセルを睨んだ。
しかしノーブルの眼は冷徹でしかない。
何せこの男は既に、
「貴方は毎年のように人を殺している。そんな人間に私は負けられない。秩序の名の下に」
「そうかよ!」
ロッセルは何かを投げつけた。
赤い液体の入った瓶だ。しかしノーブルは投げつけられた液体を腕で弾くと、そのまま割れてしまう。
パリィーン!——
赤い液体が頬に付着した。
気持ち悪い。しかもこの臭いは人の血だ。
「貴方はどれほど下劣な……」
「くくくっ。かかったなぁ!」
ノ—ブルは一気に冷静さを取り戻し、一旦退いた。
しかしすでに遅かった。
ロッセルはここまでただでやられてきたわけじゃない。この間に仕込みを入れていた。本来のノーブルなら気づかないはずがない。だがもう遅いのだ。
「自分の愚かさを後悔するんだなぁ! 固有魔術・《血隗》!」
するとノーブルの頬に付着した血が動き出した。
何とか払い落とすも、床に零れた血はそのまま祭壇を滑っていた。
まるで生き物のような挙動を示し、ノーブル自身の魔力を吸って、その姿を現した。
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