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1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について  作者: 水定ゆう
聖夜編

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316/808

316.お前は誰だ?

こんなこと言う主人公は珍しい。

 寝室が静かになった。誰も喋らなくなってので、静かなのは当たり前だ。

 笑い声もなければ怒り声もなかった。

 空気も重く、先程までの軽やかな雰囲気は何処へ消えたのか、一変して重たくなった。

 不安定と言ったらいいのか、寝室の中が一種の修羅場のようだった。


「ふぅ……みんなには出て行って貰ったから、そろそろ普通に喋ったら如何かな?」


 ルカはサンタ・ク・ロースに尋ねた。

 するとサンタ・ク・ロースも「うむ」と首を縦に振った。


「やはり気が付いていたんじゃな」

「まあね。まさか初対面の相手に、あれだけ高圧的な態度が取れるとは思わなかったよ。普通じゃない」

「お主ならやるじゃろう。それと同じじゃ」


 サンタ・ク・ロースはルカのことを評価した。

 しかしながらルカからしてみれば、サンタ・ク・ロースの言動の方が千年前と比べても明らかに違うことに気が付いていた。もちろん、悪い意味で嘘が下手だった。


「それで如何してあんな態度を取ってたのかな? 本来ならもっと寛容で、常に面白いを探求して来たはずだよね?」

「時が経てば、それだけ性格も変わる……とは考えんのか?」

「少なくとも貴方に対してはね。……いつまで化けの皮を被っているつもりか、ずっと気になっていたんだよ」


 ルカの言葉にサンタ・ク・ロースはピクリとした。

 まるで正体を気が付かれた犯人のように、挙動が一瞬慌てふためいていた。


「何のことじゃ?」

「とぼけなくても良いよ。ここに居るのは千年前の魔法使い同士何だから」


 ルカはその間も魔術を使ってサンタ・ク・ロースの治療を施していた。

 集中力を欠くことなく回復を行い、痛みを和らげようと懸命に尽力したのだが、何故か一向に良くならなかった。それどころかまた——


 ポロッ……ポロポロ


 サンタ・ク・ロースの皮膚が崩れた。

 皮が捲れたような生易しいものではなかった。筋肉ごと削ぎ落ちているようで、明らかに異常事態だった。


 何かの病気かとも疑った。

 しかしサンタ・ク・ロースの表情は一向に変化せず、痛みのようなものは無いように感じた。


 ルカは崩れ落ちた皮膚の一部を拾い上げてみた。

 あることに気が付いたルカは、サンタ・ク・ロースに尋ねた。


「この皮膚は腐敗している……細胞が寿命を迎えるんじゃなくて、乾燥した土の様にボロボロと崩れているんだね」


 ルカの見立てでは皮膚ではなく土だと仮定していた。

 その証拠に触ると判るのだが、乾燥した土のような質感と凹凸があちこちにあった。

 人間の皮膚だった乾燥することはあるけれど、それとはまた別の質感だった。


「上手く人間の皮膚に酷似させているけれど、これは土だね。……例えばだけど、良質な泥の海にでも入ってきた?」


 ルカは少しマイルドな方面から攻めてみた。

 美容効果の高い土は世界中に存在していて、たくさんの成分が入っているのだ。

 ルカは興味が無いけれど、栄養価の高い天然の泥のパックはそれだけで高い保湿効果を実現しているらしく、そこから作られた化粧品は貴族の間では人気商品となっていた。


「ふぉっふぉっ、儂がそんなことに興味があるとでも思うのか?」

「いいや、今の冗談だよ」


 あくまでも冗談を交えて真実を探った。

 しかし声色の変化からルカは微弱な音域の変化と魔力の波動を感じ取った。


「それじゃあ少し趣向を変えようかな。土で作られた皮膚……の可能性は如何かな?」


 こっちが本命だった。

 サンタ・ク・ロースの反応もそれとなく核心に迫られたように感じ、肩がピクリと動いていた。もう確定と見ていいが、少し詰めてみた。


「皮膚を土でコーティングするような魔法は今でも魔術として存在しているけど、これだけの隠蔽力を持つ土は並大抵では不可能だよね。しかも定期的に作り替えられたように感じるんだけど? 確かサンタの固有魔法が【聖灰】だったよね? 灰とは名ばかりで、火にも土にも関係の無い固有魔法だ。にもかかわらず、これだけ人間の肌の質感に寄せているとなると……答えは見えて来るよね?」


 ルカの詰め寄り方は完全に尋問だった。

 サンタ・ク・ロースも表情を訝しそうにしているのだが、それでもまだ誤魔化そうと口を動かした。


「だ、だったら何じゃ?」

「とぼけないでもいいよ……」


 ルカはあまり面白いとは思わなかった。

 だから声に魔力を乗せて、はっきりさせることにした。


「単刀直入に聞くよ。お前は誰だ?」


 ルカは威圧するみたいにはっきりと耳元で伝えた。

 するとサンタ・ク・ロースの魔力が一変し、潤った土のようなニオイを放った。


「この土の香り……すっごく良い」


 大森林の中に立ち込める自然由来の香りだった。

 フィトンチッドとも呼ばれる植物の香りも含んでいるのか、ルカは心が安らぐのだった。

 もちろんサンタ・ク・ロースは自分が偽物である証としてこのニオイを伝えたのだった。

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