288.雪で文字を書く魔術
夢のある魔術。後に活かしたいです。
教室ではルカ達が授業を受けていた。
教壇にはノーブルが立っていた。
教科書を片手に黒板にチョークをなぞった。
今日はどんな魔術を勉強するのか、ルカは楽しみにしていた。
「それでは今日は少し高度な魔術、氷属性魔術を使った魔術を実践してみましょう」
ノーブルは生徒達へと視線を配った。
チョークを片手に持ち、魔術の説明を始めた。
「ノーブル先生、氷属性の魔術ですか?」
「そうですよ、ツェンファさん。氷属性の魔術です」
「……難しく無いですか?」
ツェンファが手を挙げた。
ノーブルに質問するものの、氷属性魔術を使うそうだ。
「氷属性の魔術は確かに高度な魔術属性です。ですが初歩的なことであれば適正によるものもありますが、多少はできるはずですよ。現に私の固有魔術、並びに適正魔術の属性とは異なりますが……こんな風に」
ノーブルは教師らしく実戦で示しを付けた。
掌をかざすと、白くて柔らかいものが教室内に飛び交った。
少しだけ肌寒く感じた。
如何やら雪を出したようで、クラスメイトは驚いていた。
(流石にノーブル先生はできるよね。とは言えこんなに湧くなんて……魔術も魔法も大概凄いよ)
ルカは達観していた。
けれど感想は子供のようなもので、純粋な解答とは裏腹に何処か重きが置かれていた。
「今回は氷属性の魔術を使って雪を生み出し、その雪で空中に文字を書いてみましょうか」
「「「いきなり難しい!」」」
確かに急に難易度が上がった気がした。
冬らしくはあったものの、クラスメイト達はみんな引き攣った表情を浮かべていた。
ただでさえ高度な魔術属性であるにもかかわらず、文字を書くなど初心者には難易度が高すぎた。
しかしノーブルはこうも続けた。
「確かに難しい技術ですが、これができるようになれば四年生以降も困ることはないはずですよ」
ノーブルは試していた。
このクラスがこの一年間でどれだけ成長しているのか見たかった。
この季節、そして氷属性の魔術を使って文字を書くという難関差はいわゆるボーダーでもあった。
もちろんできなければ仕方のないことだが、長期休暇前の試練としては十分のはずだ。
「それではやってみましょうか。まずは……ライボルト君」
「お、俺ですか!?」
突然の指名制にライボルトは驚いた。
名前が指す通り、ライボルトの得意な魔術は雷属性だった。
未だに固有魔術を持っていなかったが、それでも氷系統は相性が悪かった。
「こ、来い!」
掌に魔力を集めていた。
しかし上手くできない。
バチバチと静電気が火花を立てる勢いでぶつかり合った。
そのせいで、折角集めた魔力が飽和してしまう始末だ。
「あー、上手くできないです」
「そうですか。でも筋は良いですよ。静電気を意図的に起こせるだけの魔力出力があれば十分です。今後が楽しみですね」
「は、はい。ありがとうございます!」
ノーブルは素直に褒めた。
ノーブルは危険な真似をする時は叱るが、それ以外では尊重するタイプだった。
とは言え怒らせたら怖いことをルカ達は知っていた。
「ルカさん凄いですね。雪で空中に文字を書くなんて」
「そうだね。でもダリアにもできるはずだよ」
「私もできますか?」
「もちろん。あれだけ炎が扱えれば、炎で文字を書くことだってできるよ」
ダリアにも似たようなことができると確信していた。
それもそのはず、雪で作るのもそうだが炎をあれだけ巧みに操れるのも努力をしている証だった。
「でもどうやって文字を書くのかなー?」
「単純だよ。魔力で干渉して、空中で留めるの。こうやって」
ルカは実際にやってみせた。
教室内に雪が降り始めた。
教科書の上に白い雪の粒が降ってきて、クラスメイトは驚いた。
「な、何々!?」
「急に雪が降って来たぞ!」
「綺麗……それに水にならないよ」
クラスメイトが驚く中、ルカは平然と続けた。
本当なら小規模の範囲でも良かったが、分かりやすいようにあえて教室一杯に雪を降らせたのだ。
「と言う訳でこうやって雪を降らせておく。後は空中に魔力を流し込む。すると……はい、できた」
ルカは振り続ける雪に魔力を送った。
突然魔力が流し込まれたことで雪が降らなくなってしまった。
空中で停滞し、指先でクルクル回してみた。
すると文字が空中に書かれた。
“こんな感じ“と感想を書いてみた。
「的な感じで、雪を最初から文字の形で作るのは難しいんだよ。一旦そこにあるもの、例えば炎でも水でも土でも何でもいいんだけど、魔術は魔力を介して大気中の魔素に干渉しているんだよ。つまり、一旦魔力の供給を止めることで、別に魔力を再干渉させる。なかなか難しいよね」
ルカは笑って答えた。
しかしシルヴィア達を始め、ノーブルも笑っていられなかった。
もはやルカならできてしまうが当たり前になりつつあった。
だからこそノーブルは何も口出ししなかった。
けれど教室一杯に雪を降らせたのは驚きだ。
何故ならノーブルが《秩序》を発動していたにもかかわらずすり抜けてきたのだ。
あまりのスペックの高さにドン引きだった。
故に何も言えなかった。
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