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1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について  作者: 水定ゆう
ナタリーの喜ばしい日常

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222/808

222.千年前の技術者

ちなみに仮眠室は校長室から直通で行けます。

 ナタリーはぬいぐるみを作り終え、ニッカを仮眠室に運ぶと、また時間を持て余してしまった。

 エルフ族は時間の進みが遅い。そのせいもあり、ナタリーはこの何もしなくていい時間を持て余してしまう。


「済ませておくべきことも全て終わらせてしまいましたね」


 机の上には判が押された大量の書類が置かれている。

 さらにはバルトラをイメージしたぬいぐるみも備えられている。

 窓の外を見ても街の景色が一望できるだけで、特に面白いものはない。

 ナタリーは完全に暇になっていた。


「紅茶でも入れましょうか」


 備え付けられているティーポットとティーカップを用意すると、魔術を使って水を注ぎ、火を魔術で用意した。

 ゆっくりと温めると、徐々にふつふつとお湯ができてくる。

 金属の台座に置き、固定させておくと待っている間に本を読もうと思った。

 確か机の引き出しの中に最近刊行されたミステリー小説の新刊が入っていたはずだ。


「最近は忙しくて読む時間も取れませんでしたからね。確か、まだ序盤も序盤だったはず……おや?」


 ナタリーが机の引き出しを開けると、中に入っていたのはミステリー小説、『蒸気機関の罠』と見覚えのない黒くて四角い魔道具だった。


「この魔道具は……確か、ワイゼンさんが作ったもののはずですね」


 ルカたちの装備品の製作依頼し、受け取りに行った時に貰ったものだ。

 ワイゼンも千年前の魔法使いの1人で、ルカやナタリーが認める天才魔道具職人。いわゆる技術者としての顔を持っていた。


「彼女が作ったものということは何か意味があるはずですね。試しに使ってみましょうか」


 起動用のボタンを押し込んでみると、青ランプが光った。

 その下にはダイヤルが付いている。如何やら魔力を電波として発しながら、受信しているらしい。

 スピーカーのようなものも付いていることから、こちらの声が届くのだろうか。


「《エコー》の魔法と《スピーカー》も魔法を合わせているようですね」

『その通りだ。流石はなたりーだな』


 装置の向こう側からワイゼンの声が聞こえてきた。

 如何やらナタリーの仮説は正しかったらしく、《テレパシー》の魔法を簡単に使えるようにした魔道具らしい。


「なるほど。この魔道具は、《テレパシー》を使うための魔道具何ですね」

『その通りだ。やはり勘が鋭い。いや、洞察力と言うべきか』


 淡々としつつも、高圧的な口調はワイゼンの特徴だ。

 おそらく今日も白衣姿でコーヒーを飲んでいるんだろう。


「毎回思いますが、白衣でコーヒーは汚れた時に落ちにくいですよ」

『よくわかったな。確かに私はコーヒーを飲んでいる』

「毎日コーヒーを10杯近く飲む人ですよ。それぐらいわかります。はぁー、カフェインの取り過ぎで死んでしまっても知りませんよ」

『大丈夫だ。もうやっている』


 もう経験済みだったのですかと、ナタリーは微妙な心境を抱いた。

 しかしそれでも死なないのがワイゼンと言う人間だ。

 ナタリーもルカも、いいや千年前から付き合いのある魔法使いなら彼女がいわゆる技術者であり科学者でもあり、マッドサイエンティストの一種であると承知していた。


「まさか時の棺を使っていたとは思いませんでしたよ」

『別にあんなものを使わなくても、私は不老不死の薬を飲んで死ぬことはない』

「寂しくはないんですか?」

『寂しい? そんなことを気に掛ける私だと思うのか?』

「思いませんね」


 ナタリーも笑みを浮かべた。

 何だか気持ちがリラックスできていい。そう思うのとまったく同じタイミングで、お互いにアクションが起きた。


「おっ、湧きましたね」

『マズい!』


 ナタリーが紅茶をティーカップに注ぐ間、ワイゼンの声が聞こえなくなった。

 次の瞬間、ワイゼンの咳払いが聞こえてきた。


『ゴホン、ゴホンゴホン』

「おや、どうかしましたか?」


 ナタリーが聞き返すと、何となく想像がついた。

 おそらく実験の最中にちょっとしたミスが起きてしまい、また巻き込まれてしまったらしい。


「また実験が失敗したんですか?」

『私の実験は失敗していない。それに今回の発明品は凄いぞ』

「ほう、どのように凄いのですか? 是非、お聞きしたいですね」


 この間合いに行ったときは、砂から水を生み出す液体だった。

 水が貴重な乾燥地域ならかなり重宝されるのだが、ワイゼン本人にその意図はないらしい。

 本当に千年前から変わり者だと、ナタリーは面白いと思いながら笑みを浮かべた。


「それで、今回の発明品は……」

『笑うなよ』

「笑いませんよ。技術者のやることは毎回わからないんですから」

『……毛生え薬だ』

「ぶふっ!」


 ついつい笑ってしまった。

 すると魔道具の向こう側からは、『おい、笑うな』と怒鳴られてしまう。ナタリーは面白いと思い、暇な時間が吹き飛んだ。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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