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1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について  作者: 水定ゆう
悪魔教会編

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208/811

208.ウルフストン①

あのキャラが再び。

 人間の腕を咥えていた。ポタポタと赤い液体が垂れている。

 しかも腕の反対側は見えない。

 まるで“その先がないみたい”だった。


「ルカさん、アレは……」

「ウルフストン」

「えっ?」


 ルカは短い言葉を口にした。

 ブルースターは聞き慣れない言葉を耳にして、首を傾ける。


「ルカさん。ウルフストンと言うのは……」

「モンスターじゃないよ。魔獣に近い種類かな。古より生きている魔獣で、当然魔法を使って来るよ」

「魔法ですか……では」

「こっちも全力で排除するよ。あんなものを放置してたら後が面倒だからね」


 ルカの狙いはそれだけだった。

 あの魔獣を放置していたら、きっと面倒なことになる。特に町中で暴れられたり、乱入されでもしたら敵わない。

 そこでルカはここで倒すことにした。

 幸いウルフストンは聞いたことがある。もちろん戦ったことも。

 しかし不安なのはブルースターだった。


「ブルースター。行ける?」

「どうでしょうか?」

「そうだよね。不安だよね」


 ブルースターの口がモゴモゴしていて濁していた。

 ルカはその姿を見逃さず聞き返した。

 けれどブルースターに魔力の昂りを感じる。


「いえ、そうではありません」

「ブルースター? どうしたの。急に魔力が……」

「この相手ならば私も全力で戦えます。それに……」

「コイツに殺された人きっと報われないだろうね」


 ルカだって怒っていた。

 しかし終わったことでどうにもできない。だから少しでも冥府に誘ってあげられるように、尽力するのが関の山だ。


「私は本気を出せないから、ブルースター行くよ」

「はい!」


 2人で駆けだそうとした。

 しかしその足を止めたのは、聞き覚えのある声? だった。


「ちょっと待って」


 声が聞こえてきた。

 背後を振り返ろうとしたが、凄まじい熱量を感じた。


「振り向く暇があったら、早く教祖を倒してきてよ、お姉さん」

「その喋り方。フィラ?」

「さあね。とりあえず、そんなとこにいられると迷惑だから」


 ブルースターは首を傾げた。

 しかしルカとブルースターの間に強烈な熱が発生し、この場にいられなくなる。


「お姉さんたち、ちょっと邪魔かな」


 熱が空気を震わして、湯気を断たせた。

 空気中の水分子を蒸発させて発生したのだが、前よりも腕が上がっている。


「この子は一体……」

「この子? お姉さんたち、多分15歳くらいでしょ?」

「その言い方だと、まるで私たちよりも年上ですね」

「もちろん。名前をいくつも持っていてその度に色んな人のふりをしてきた僕に年齢なんて不必要だからね。とにかく、無駄話はこれくらいにして、とっとと行った行った」


 白い湯気の中で声が聞こえた。

 ルカとブルースターは少年に感化されてしまい、仕方なくこの場を任せる。


「それじゃあ頼むよ。ちなみにウルフストンは落石の魔法が使えるから気を付けてね」

「落石? 情報提供ありがとう、お姉さん」


 ルカはブルースターを連れて先に行くことにした。

 しかしブルースターは言葉に甘えるのは危険だと思っている。

 動かないで少年のことを気にしていた。


「行くよ、ブルースター」

「ですが、一般人を巻き込むのは……」

「彼は一般人じゃないから。とにかく行くよ」


 ルカはブルースターの腕を強引に引っ張ると、教会の外に向かった。

 マンホールが塞がれる前に入り込まなければ終わりだ。


「さてと、それじゃあ僕も本気を出そうかな」


 少年は腕まくりをした。

 来ていた上着を捨てると、あどけない表情が睨むような顔つきに様変わりする。


「魔獣相手とは、僕も運が悪いね。でも任された以上僕に選択肢もないし、ナタリー校長には刑期を短くして貰った恩もある。その分の働きはしないとね」


 屈伸などをして体の調子を上げると、早速得意魔術を使うことにした。

 《蒸発》こそがフィラの武器だ。やっとのことで魔術の形になってくれた。


「それじゃあ行こっか。《蒸発する血飛沫(ブラッディ・エヴァー)》」


 フィラは自分で指を傷つけた。

 滲んだ赤い血が出ているが、目の前のウルフストン目掛けて弾くみたいな仕草で飛沫を飛ばした。


「触れるまでもないよね」


 フィラが合図を出すと急に血液が膨張して、爆裂した。

 水分子に干渉して教会内で派手な爆発が起こる。


「流石にこれじゃあ倒せないだろうけど、どう来るかな」


 フィラは楽しんでいた。

 けれどウルフストンは全く動いていない。

 今の爆発で変わったのは天井が少しひびが入り、ボロボロと石の破片が降って来るだけだが、ウルフストンは口に咥えていた人の腕を捨てた。


「やっと気づいてくれた。流石は魔獣、図太いね」


 ウルフストンはフィラを睨みつける。

 カッと見開いた目には黒い部分はなく、白目のままフィラを窺った。

 それから反転してフィラを目の前にすると、「ウォーン!」と吠える。


「臨戦態勢ってことだね。面白い、来てよ」


 フィラは待っていた。しかしウルフストンが吠えると急にフィラに影が落ちる。

 全身を覆うような影が床に現れ首を傾げると、天井を見てみるとそこには巨大な岩が出現していた。ルカの言っていた落石が来るらしい。

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