19.ノーブル・V・シュルベル
ミドルネームのVってなんだっけ?
マジで思い出せない。困った。
ルカは話を戻した。
さっきまで話していたノーブル先生について何も知らないからだ。
「ノーブル先生は不思議だけど、如何不思議って言ったらいいのか」
「確かに不思議よね」
「魔力の質はこの学校でも随一な気がするけど、如何して教師になんか……」
ルカは疑問に思っていた。
ルカの目線から見てもあの魔力は逸材だ。上手く隠しているように見えるが、内包している分。つまり隠しているはずの潜在的な魔力量と質は絶大だった。
「それってつまり魔力圧も凄まじいってことよね?」
「そうだね。確かにシルヴィの言う通り、感覚的にはそれも鋭い」
「感覚的って、何でそんなことが判るのさー」
「だってずっと魔力隠してるから」
ルカにはそんなこともお見通し。
ノーブルはあまりに長けた魔力を抑え込むため、無理をしているように思った。しかしそれはルカの目線から見ればもっと感受性的なものによる何か。つまるところの感情論に当たるが、あまり深く捉えると飲み込まれる恐れもある。特にルカには危険だった。
だけど今ルカが思ったことは千年前の魔法使いなら皆んなできる。というか、むしろかなしポピュラーだった。
「ほんと何なんだろうね。あむっ」
ルカはお弁当に箸を突っ込む。
口の中にご飯をかきこみ、頬張った。
しかし隣に座る面々は、
「ルカもよっぽど不思議だけどね」
「確かにー」
二人は同意見で、ルカのことを見ていた。
※※ ※ ※ ※ ※ ※
ノーブルは校長室に呼び出されていた。
むしろ自分から来たといってもいい。コンコンと軽くノックした。
「どうぞ」
「失礼します」
ノーブルは校長室ドアを開け、中に入った。
大量の資料がさらの状態で積まれ、今にも崩れそう。しかしそのどれもに一度は目を通した後と、ナタリーが押した判子の跡があった。赤い朱肉が滲んでいることから、今終わったんだろう。
「お忙しいところ失礼いたします、ナタリー校長」
「いいえ、今終わったところですから」
「真新しい紙ですね。今朝のものですか?」
「えぇ。つい一時間前に届いたものです」
ノーブルは言葉を失った。
明らかに次元が違う存在。流石は千年の時を生きる魔法使いだ。
「それで一体何の用でしょうか、ノーブルさん」
「はい校長。仰せつかっていた調査の進展ですが……」
「なにか分かったんですか?」
「いえ、まだ核心には……」
「まぁそうでしょうね」
ナタリーは紅茶をティーカップに移すと、優しく啜った。
それからティーポットを持ち、別のティーカップに紅茶を注ぐと、手持無沙汰なノーブルに差し出す。
「これをどうぞ」
「いただきます」
ノーブルはおとなしく受け取った。
目上の相手だ。尊敬の念に駆られる。
「少しは落ち着きましたか?」
「えっ?」
「最近気が張っていますよ。魔力圧が漏れています」
「魔力圧が……善処します」
ノーブルは気が立っていたことを反省した。
するとナタリーは追加する。
「それに何を気にしているんでしょうか」
「クラスの成績がですね……」
「それなら問題ないはずですよ」
「い、いえ……ですが、一人異質な」
「トキワ・ルカさんの事ですか?」
「やはり何か知っているんですね、校長」
ノーブルは睨みつけた。
しかしその威圧はまるで通じず、無駄に終わる。
「彼女のことについては何も詮索しない方が得策ですよ、ノーブル先生」
「ですが彼女の知識量は群を抜いています。あれには何か秘密が……」
「ノーブル・V・シュルベル! 深読みはしない方が身のためです」
ノーブルは全身から血の気が引いた。
動けなくなる。一体何がナタリーをそう掻き立てるのか。深読みしてはいけないという言葉がぐさりと突き刺さる。
「いいですか、ノーブル先生。トキワ・ルカは天才です。そして誰よりも努力家で優しい魔術師です」
「優しい……魔術師に不必要な要素ではありませんか」
「だからですよ」
「えっ!?」
ノーブルは置いてけぼりを食らった。
しかしナタリーはそれ以上言わない。
「ですから彼女は強い。ですので貴女は自分のやるべきことをしなさい。いいですね」
「……分かりました」
しぶしぶ受け取る。
ノーブルは気が気でないままだったが、仕方なく校長室を出た。
「本当に優しいんです。ルカさんは」
遠い空を見上げて微笑むナタリー。
紅茶がティーカップ越しからなくなるのは時間の問題だった。
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