176.ルカとライラックの合流
今回は閑話休題。
ルカはいち早くブルースターの待つ教会に戻ってきた。
幸いなことに白いお揃いの服を着た教祖たちの姿はない。
キョロキョロと周囲を見回してみたルカは、安堵して気を休めた。
ほっと一息を突いて呼吸を整えると、マシな空気が肺に入る。
「ふぅはぁふぅはぁ……はぁー、生き返った」
ルカは大きく体をのけ反らせた。
その様子を見ていた小さな傍観者は頭にはてなを浮かべる。
「ニャー?」
「あっ、フェリス。教会の連中は来てないよね?」
「ニャーニャー!」
「えーっと、わからないから《アニマル・チャーム》!」
ルカは手早く魔法を使った。
今日は気分が悪いので、本気になって感度欲魔力を高める。
「あっあっ……よしこれでいいかな」
『何馬鹿なことをやっているのニャ?』
「別に馬鹿なことをしているわけじゃないのニャ」
『真似するなニャ。気持ちが悪いのニャ!』
「ごめんごめん。でも大丈夫そうでよかったよ」
『さっき仲間の野良猫が空を飛んでいたことぐらいは変なことはなかったのニャ』
「あはは……それは置いておくとして、よかったよ」
『だから脈絡がなさ過ぎて怖いのニャ!』
フェリスは呆れてしまった。
ルカは先程の心の疲労感に苛まれていたので、頭を抱えた。
「ごめん、ちょっと非常に残忍な現場を見てきちゃったから」
『何かあったんだニャ?』
「そうだね。残念だけど、この町に猫はほとんど残ってないかも」
『どういうことニャ!』
「そのままの意味だよ」
ルカはフェリスに濁しながら説明した。
けれど肝心なことは何も言わないでおくことにする。
「とりあえずブルースターのところに行こうかな」
『ブルースターはいつもの部屋にいるのニャ! まだ作業をしているのニャ!』
「そっか。じゃあコーヒーでも持って行ってあげようかな」
『飯を寄越すニャ!』
ルカは異空間からキャットフードを取り出した。
フェリスの前に適当にばらまくと美味しそうに食べている。こう見ると可愛い。
「さて、ブルースターに報告報告……あれ?」
「やっほー、ルカー。そっち終わったぁー?」
「ライも終わったんだね。どうだった?」
「当たりだったよー。こんなの見つけたぁー」
ライラックは麻袋を持っている。
真っ赤な液体が布越しに滲み出ていて、ルカは顔を歪めた。
そんなものを堂々と持っていられるなんて、流石はライラックだ。肝が据わっていると、ルカは称賛を送った。
「ルカの方はどうだったの?」
「こっちも同じのがあったよ。流石に持ってこなかったけどね」
「ルカはそうだよねー。こんなもの証拠品として押収してきただけなんだけどさー」
「待って。その言い方だともしかして殺して……」
「あはは、なわけないでしょ?」
「だよね。流石にライもそんな危ない真似は……」
ルカは気になってチラリとライラックの指先を見た。
右中指の爪が赤くなっているので殺りあったのは間違いないわけだ。
しかし勝ったのは、ライラックだった。けれど指先に血が付いていることを悟られたくなかったのだろう。何だか挙動が不審だ。
絶対に隠したかったはずである。
「本当にお疲れさま。……《ヒール》!」
「えっ、ありがとう。あははー、気付いてたんだねー」
「当然だよ。友達の怪我ぐらいは見破れないとね」
「流石にそんな注意深くはないよー」
とは言いつつも、ライラックは常に警戒している。
古い教会の中は寒く、隙間も多い。風が入り込んでいて、ライラックは肩を抱いた。
ルカは異空間から毛布を取り出すと、ライラックに投げ渡す。
「寒いでしょ。毛布を貸すよ」
「ありがと……いやぁー、それにしても便利だねー。パタパタ」
子供みたいに毛布を広げてパタパタしている。
窓の向こうが見えなくなると同時に、ルカ達は窓のない廊下に出た。
この先にブルースターがいるのだが、その前にコーヒーを淹れていきたい気分だった。
「ごめん、ちょっとキッチン借りて来るよ」
「キッチンに何か用があるの?」
「うん。コーヒーを淹れようと思って。ライも何か飲む?」
「うーん私コーヒー苦手なんだぁー」
「そうなんだ。じゃあココアでも入れて来るよ」
「ありがとー。お砂糖たくさん入れてねー」
「それはコーヒーでしょ。まあいいや」
ルカはライラックと距離を取った。
それ片キッチンに行こうとするのだが、ルカはその前にやっておくことを見つける。
ライラックからのメッセージを汲み取ったルカはすぐさま教会の窓を全部白くした。
「《ホワイトカーテン》!」
両手をパンと合わせると、ルカは魔術を使った。
白い雪のようなものが放射されると、窓が全面真っ白になる。
これで中からも外からも完全に悟られることはない。裏を返せば、相手の動向を察することができないのはかなり不便だが、その辺りはルカなりに配慮している。ライラックも戦術に長けていた。
「これでよし。後は床下だけど……問題なさそうだね」
敵の足音は聞こえてこない。どうやら侵入はされていないようだ。
ここまで付けられてはいない。けれど万が一に備えて用心を固めるのは悪くはない。
2人の動きは経験者のものだった。
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